嘘の花束

群青更紗

第1話 イントロダクション

 嘘を咲かせる花畑で、今日も少女は働いていた。日の出前の薄暗い中、スプリンクラーを作動させる。

「いやだ」

「やめて」

「痛い」

「冷たい」

「嫌い」

「きらい」

「キライ」

 ……花たちの、嘘の言葉が響き出す。少女は静かに目を閉じて、大きくひとつ息を吐く。そしてゆっくり微笑んで、いつものように、こう返す。

「ーーええ、私も、あななたちなんて嫌いよ」

 夜が明ける。太陽が、小さく見えたと思った瞬間、世界に一筋、光が走り、あっという間に包まれていく。

 嘘を咲かせる花畑で、今日も新しい一日が始まる。

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嘘の花束 群青更紗 @gunjyo_sarasa

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