第2話、あなたの腕ができること

テストも終わり部活動が再開された


 草野「うぉりゃ!!」


ドスンと格技場に響く音

ここは俺の所属している柔道部の区画


 三木「ぐうぅい!」


俺は友達の三木とともに投げ技の練習をしていた


ぐぐぐ(上から抑え込む音)


 三木「ま、まてまて!!今は投げ技の練習だろうが!!」


三木よ…そんなことを言っていたらもしもいきなり襲われたときに対処できんぞ


ギチギチ(首を絞める)


 三木「トントントントン(←タップする音)」

 草野「三木よ…もっと我慢を覚えろよ…」


仕方ないルールだ、離してやろう


 三木「コァーーーー!!ヒューーーーー!!(息を吸い込む音)」

 草野「コーヒーくらい自分で買ってこい」

 三木「てめぇマジふざけんな!!絞め技をそんな安易に使うんじゃねぇ!!」

 草野「お前だってさっきカニばさみしてきたじゃないか、お互い様だ」

 三木「あれはどちらかと言えば立ち技だ!だいたい今は寝技の時間じゃないだろう

    が!!」

 草野「だな」

 三木「…おまえなぁ……だったらなぜ今、寝技をしたか答えてみろ」

 草野「背負いがうまくいかなかったからつい…」

 三木「八つ当たりすんなやぁぁぁぁぁぁぁ!!」


三木…彼は中学からの友達で面白い奴だ

成績は中の下で良くノートを借りに来る


 三木「はぁ、とりあえずもうカニばさみはしないから、お前も寝技に持ち込むな

    よ?いいな?」

 草野「わかった、寝技はしない!!」


グッグッ!(グローブをセットする音)


 三木「おい、手にグローブをつけるな!どこから持ってきたそんなもん!!」

 草野「シュ!!シュ!!シェア!!」

 三木「柔道をしろぉぉぉぉぉ!!!」


三木に渾身の右ストレートが決まった時、隣では剣道部が気合の入った声を荒げての

練習が始まっていた


 柊 「えやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


パシンと一つ気持ちのいい音が聞こえた、柊は剣道部で柔道場のすぐ隣で練習している

 

相変わらずいい動きだな


 三木「………」


三木がこちらを睨み付けている気がする


 草野「どうした、俺の型で悪いとこでもあったか?」

 三木「そんな質問するならまず柔道をしろボケぇ!!!」


カニばさみが見事に決まる


 草野「ぐぅえ!!」

 三木「おらおら!!」


マウントを取られた


 三木「おら、柔道しようぜ!!」

 草野「おっけい!!」


足を頭に絡めて三木を引きはがす、どうやら三木は怒っているようだ…なぜだろう



………


 三木「いてー、いてーよー」

 草野「撫でてやる、どこだか言ってみろ」

 三木「お前に殴られた頬がいてえんだよ畜生」

 

帰り道、夕暮れの光を浴びながら青春の1ページのようなセリフを吐く三木


 草野「お前のカニばさみもなかなかだったぜ?」

 三木「何ドヤ顔して指立ててんだ、指折るぞ」

 草野「だって、青春の1ページみたいなこと言うからさ」

 三木「青春の1ページに柔道でのフルボッコは当てはまらないだろうが」

 草野「もっとポジティブに…な?」

 三木「殴られた事ポジティブに考えられるなら戦争は起きないだろうが…ったく」

 草野「ナイスファイト!」

 三木「普通に謝ることもできんのか…たく」


ふざけあいながらも帰っていると


 草野「ん?なんかこっち来るな」

 柊 「おーい、一緒に帰ろ?」

 

柊だ、どうやら剣道部も終わったらしい


 草野「そっちも終わったのか」

 三木「おつかれー」

 柊 「うん、おつかれー」


そう言って混ざってくる柊、しかし少し違和感を感じた。


 草野「……柊……お前右手どうした?」

 柊 「あ~うん、ちょっとマメができちゃった」

 草野「マメか、きちんと消毒したか?」

 柊 「うん、大丈夫」


柊の右手は絆創膏が二つほどつけられている、きちんと清潔にしてあるっぽいし大丈夫だろう


 柊 「でも利き手だからちょっとやだな~、ドアとか開けるとき痛いかも…」

 三木「左手使えばいいじゃん」

 草野「だな」

 柊 「……」


固まった表情もかわいいなぁ


 柊 「だ、だよね?」

 三木「わかってなかったんだね」

 草野「そうだな」

 柊 「わ、解ってるって!それくらい!」


焦る表情もまたいいものだ


 柊 「でもさ、今回はマメで済んでよかったけど、実際に右手も左手も使えなく

    なっちゃたらどうなるんだろう」

 三木「うん?え~と、まぁ不便なんじゃないか?」

 草野「そうだな、生活のほとんどには握るという動作が欠かせないからな」

 柊 「物を持つこともできないし、自分を支えることもできない…ちょっと怖い 

    な」


ちょっと物悲しい顔をした柊を見てふと思ったことがある


 草野「………何より悲しいのは人に触れられなくなってしまう事かな」

 三木「え?なんで?」

 草野「だってそうだろ?友達の手を握ったり、大好きな人と手をつないで歩いたり

    、自分の子供の頭を撫でてやることすらできないんだぞ?…そんなの寂しい

    じゃないか」

 柊 「………だね」

 三木「かもな」


二人とも何か悲しそうにしている、いかんいかん


 草野「大丈夫だ!今は存分に触れるんだ!だったらもしそうなった時後悔しないよ

    う大切な人たちと触れ合えばいい!」

 柊 「だね、そうだね!」

 三木「お前はその手で大切な友達をなくしそうだったけどな」

 草野「それもまた触れ合いさ」

 三木「触れ合いは相手を傷つけることじゃなかろうが!!」

 草野「(爆笑)」

 三木「笑うな!!つ~か声に出して(爆笑)なんて言うやつがあるか!!」

 柊 「なかいいねー二人とも」

 草野「だろ?」

 三木「だから!ドヤ顔をするなやコラァ!!」


俺と柊の笑い声(一部怒号)が聞こえる帰り道、これも青春と思い出を手にする俺達3人


もっといろいろ触れて行こう思いながら俺達は家路につく

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