あなたのために出来ること
@ikikata
第1話、あなたの瞳に映るもの
柊 「ねえねえ見て、何も見えない」
突然そう言った柊は自分の目を両手で塞いでいる
……何と返せばいいか解らない
草野「…だろうな、それがどうした」
柊 「なんか淡泊な返事だな~、だって不思議じゃない?」
手を両手で隠しながら彼女は言った…
柊 「私は今、目を開いているの…なのに何も見えない…不思議じゃない?」
草野「正確には指と指の隙間から少しは光が入っているだろうが」
柊 「そういう事を言って欲しい訳じゃなくてさ、目を開いてるのになぜ私は
景色が見えていないんだろうって事なんだけど…」
草野「…まあ、目を塞いでいるからだろうな」
柊 「…もういいや、草野くんには難しい話だったかな…」
そう言いながら柊は残念がるようにため息をついた
何なんだ…突然そんなこと聞かれたこっちの身にもなって欲しい
哲学っぽいことは中二の頃にもう済ませたのだから、うう思い出したら胃が…
草野「まぁ人の考え方も十人十色、いきなりそんな事を言ったお前さんの頭の中の
ことが読めない限り俺にはその答えは出せないさ」
柊 「む~…うん、確かにそうだね。私もいきなり過ぎたし」
草野「そうそう、それにそんな事を考えてる暇があったら早く勉強しろ」
柊 「う~、気晴らしに他のこと考えさせてくれたっていいじゃない」
そう言いながら手を自分の目から離し、机にかぶさる形でうなだれる柊
何と言っても明日は期末テスト、柊と俺は目下勉強中なのだ
草野「そんなこと言って当日になって駄目でしたとかなしだからな?せっかく俺が
教えてるんだから、少しでもいい点取ってくれよな」
柊 「う~、解ったよ…君に教えてもらってるんだもん、いい点とらなくちゃ!」
そういって自分のほっぺに気合を入れる柊、俺はそんな柊の姿が…
草野「…………素敵だ」
柊 「ん?何が?」
草野「……なんでもない、頑張って教えるから爆発しない程度に頑張ってくれ」
いかん!見とれてしまった!!集中しなければ!
柊 「でもさ…これ効率悪いよね?テストの答えがあれば簡単に勉強できるのに」
草野「柊よ…それは勉強とは言わない…不正行為だ」
柊 「別にいいじゃないの!勉強になるなら答えくらい見せてくれても!」
草野「良くない!勉強とは正しく生きるためにするものだ!その勉強をおろそかに
したり不正をしたりしたらよくない方向に走って行く事になるぞ!」
柊 「うー、でも……そうだよねきちんと勉強しなきゃ正しい事が解らなくなっち
ゃうよね…」
そう言って少し落ち込む柊
やっぱ柊はいいなぁ、こちらの意見をきちんと汲んでくれる…
…そう考えるとさっきの問いについて答えなかった自分が少し嫌な感じがするな
…少し考えておくか…
草野「さぁ、勉強勉強、終わったら遊んでいいからな」
柊 「3,14!!」
草野「……それは何だ?円周率だから○(わかった)と言いたいのか?解りずらい
わ」
柊 「えへへ」
草野「ほめてないから喜ぶな」
柊 「は~い」
そう言って勉強を再開する柊、俺もきちんと復習しておこう
………
…
柊 「おわったー!」
体を自分のベッドに投げ出す柊
草野「ああ、よく頑張ったな、偉いぞ」
柊 「えへへ、ありがと」
草野「ああ、ありがとうをありがとよ、だがきちんとテストに集中できるように今
日は早めに寝ろよ?」
柊 「え~遊ぶって言ったじゃん!」
草野「早々に切り上げるって事だ、遊びはするさ」
柊 「やった!」
………かわいい
草野「で、何して遊ぶんだ?」
柊 「えとー、テレビゲームにボードゲームにカードゲーム、部屋で遊ぶならここ
らへんかな?」
草野「勉強した後はなるべく頭をリセットしたほうがいいからな~、カードゲーム
でどうだ?」
柊 「OK!」
そう言いながら立ち上がり、引き出しからU○Oやトランプを取り出す柊
柊 「どっちがいい?」
草野「あ~UN○は3人以上がいいしな、手堅くトランプで神経衰弱でもするか」
柊 「了解!」
トランプが柊の手によってシャッフルされ床に置かれる…
柊 「じゃあ先行どうぞ?」
草野「おう、それじゃまずは適当にっと」
神経衰弱が進むにつれて無言になったため俺は先ほどの話をする事にした
草野「さっきの目を開いてるのに目を塞いでるとなんで何も見えないんだろうって
話だけどさ」
柊 「あ……うんありがとずっと考えててくれてたんだ」
草野「ま、まぁな…でさ、俺なりに考えてみた」
柊 「うん」
黙々と神経衰弱が進んでいく中、自分なりの答えを言ってみた
草野「例えばさっきから見ているトランプ、このトランプが見えているのはなんで
なんだろう」
柊 「うーん、ここにあるから見えるんじゃない?」
草野「そうここに在るから見えるんだ、でもこうしてトランプを手で隠したら見え
るか?」
柊 「見えない」
草野「そう、見えないんだ、確かにここにあるはずなのに。これは勉強の話しとか
じゃないんだが人間に限らず動物の目は光の情報を目にとらえ色や形を認識
する構造になっている、だからものに光が当たらなければそれは目で捉えら
れないんだ。つまり目は物を見ているんじゃなく物に反射した光を見ている
んだ、つまり目を手で覆ったりつぶったり目の前から光をなくすとたとえ意
識していても周りの景色は見えなくなるんだよ」
柊 「う、うん何となくわかった」
草野「すまないな勉強のあとにこんな難しい話して」
柊 「ううん、君が私のために答えてくれたんだから私はそれにきちんと答えない
と、ありがとうね草野」
草野「………ああ」
嬉しい、なんかすっごい嬉しい
柊は裏表がない分すごい感謝が伝わってくる。
頑張って考えたかいがあった
柊 「ラスト取ったーーー!!」
ボロボロに負けていた
………
…
帰り道
柊との会話を思い出していた。
そもそも彼女はなぜあんなことを唐突に思ったのだろうか
何かきっかけでもあっただろうか
草野「……まあ、あいつが少しでも喜んでくれればそれでいいか」
そう言って月の光と街灯、家の中からこぼれる温かい光に照らされた道を鼻歌交じりに歩いて帰った
ちなみに彼女のテストの出来はまぁまぁだった。
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