終末

——どこだ?

なぜ私はここにいるんだ。

自分の意思で来たわけでは………ない様な気がする。

気付いたらここに立っていた。

しかし、私は驚きも慌てもしない。

そう。ここに来るのは必然であり、義務であるからだ。

落ち着いて辺りを見渡す。

黒い空に地面にはきめ細かい白砂が永遠と続く平野を埋め尽くす。

………突っ立ていても仕方ない。歩いてみよう。


歩く。歩く。歩く。

そして、私は人間の川を見つけた。

人間が絶えずゆっくりゆっくりと何処かへ歩いて行く。

丁度いい。一人でいるよりも誰かと何かに向かって歩いた方が良い。

そう思い、その川に私は合流した。


歩く。歩く。歩く。

隣の男が倒れた。

何か叫んで、私の腕を掴んでくる。

助ける余裕も元気も無い。

私は彼の腕を強引に振り解く。

そして、男は人の波へと消えていった。


歩く。歩く。歩く。

一体この集団は何処へと向かっているのだろうか。

いくら歩けども、着けない。終わらない。死なない。


歩く。歩く。歩く。

隣にも同じ様に人間の川がある。

あちらに移ろうか。

いや、移ったとしても私は何も変わらないだろう。誰も助けてはくれないだろう。

私が見捨てた彼の様に。


歩く。歩く。歩く。

もう疲れた。早く……早く終わってくれ。


歩け。歩け。歩け。

頼む。見捨てないでくれ。

まだやれる。歩ける。

なぜ皆はそんなに力があるんだ。


歩け。歩け。ああああああああああああああああ

もう歩けない。

永遠と動かしていた足の肉は削がれ、白い骨が剥き出しになっている。

たまらず私は倒れた。


歩け……。歩け……。歩け……。

足が無いからなんだと言うのだ。

這い蹲りながら、少しづつ私は進む。

周りは私に哀れみの一瞥を送りながら、速くに進んでいく。

見ていろ。いつかお前らを追い越してやるからな。


誰だ。誰だ。誰だ。

一体誰なんだ。いつまで私に歩けと命令するのは。

もう疲れた。休みたい。

しかし、誰かは許さない。尻を叩いて私を急かす。


誰だ。誰だ。誰だ。

もう足も腕も無い。

既に周りに人はいない。

それでも歩けと言う誰か。

おそらく、私はこのまま死んでしまうのだろう。

ならば、私の人生を壊した誰かを見てやろう。

恐ろしい。怖い。

だが、私は勇気を振り絞り振り向いた。

そこには——





「やあ、初めまして」





私が立っていた。

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松竹梅の短編集 松竹梅 @sidarezakura

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