由香の場合Ⅱ

 今週末に高校時代の仲間達との集まりがある。

 ハッキリ言って行きたくない。行きたいわけがない。


 「恵美以外は結婚しているし、恵美にしたってやり甲斐があり高収入の仕事をしている。自分だけがいつまでも不倫をし低収入のやりたくもない仕事、先の見えない将来。」

 普段は考えないようにしてやり過ごしているが、かつての級友達と集まる事で嫌が応にも由香の頭に浮かんでくる。

 ── 惨め ── という単語2文字。



 高校時代、由香は6人のうち誰よりもモテたし実際1番はじめに彼氏が出来たのも由香だった。成績だって6人のうちでは良い方だったしちゃんと4年制大学も出た。大学に行った後も交際を申し込んでくる男性はたくさんいたし、プロポーズだってされた事もある。


 気がついたら。もう30歳も過ぎていた。


 22歳の時にあの人に出会った。

 衝撃だった。こんな男性がいるなんて思っていなかった。── 今考えれば、それも22歳という経験の少なさからくる衝撃だったのだけれども ── かゆいところに手が届く、そんな男性だった。とにかく、その頃同じ年の子供っぽい彼氏にも飽きていた由香は、すっかりあの人に恋に落ちた。


 結婚している事を知ったのは、付き合い始めて3ヶ月後の事だった。


 週に1回も会えない事もあるのも、土日に連絡が取りづらいのも、全部仕事が忙しいからだと思っていた。


 事実を知った時、由香は「別れてください」と言った。知らなかったとはいえ、一時でも不倫をしていたなんて、当時の由香には信じがたいほどのショックだった。

 まさか自分が。


 「別れてください」と告げた由香に、あの人は「嫌だ」と言った。

 「由香が大事なんだ、好きなんだ、嫁とは必ず離婚する、約束する」


 まっすぐな目で由香を見つめ、あの人はそう言った。


 当時の由香は何を思ってそうしたのか。今となってはもうよく分からないが、あの人を信じようと決めた。



 不倫の事はみんな知っている。

 はじめの数年はみんなこぞって止めたり叱ったりなだめたり、あらゆる手で由香に不倫をやめさせようと説得してきた。

 

 由香は聞く耳を持たなかった。

 

 今となっては、あの人の話をしても誰も叱ってくれない、なだめてくれない、止めてくれない。

 ただただにっこり微笑んで「由香が幸せならそれでいいと思うよ」と言うだけだった。

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あの時今それぞれ ななしさん @naconyanta_9999

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