ミシロいんたーふぇいす(仮)〜終幕:夢のあと〜


「ふあー……やれやれだぜ」


 俺は道を歩いている。

 ミシロが消えた次の日、肩の痛みが引かないから病院に行ってみたら。……なんというか、骨折してました。右腕がポッキリと。

 それが発覚してからというもの、最近はずっと病院通いだ。今は帰りである。


「くそ、さっさとくっつけよ駄骨!」


 ギブスをぶっ叩く――ぐおおおぉぉ!


「超痛ぇ!」


 そんなこんなで。ミシロが消えてからも、変わらず普通の日々を過ごしている。唯一違うのは、スマホからミシロが消えただけ。画面にあいつがいないだけだ。なんだかんだいって、あいつが消えたのは寂しい。 しかしいまは、あいつに負けないくらいうんと俺に甘えてくる、かわいい恋人がいる。

 そういえば……。今日は、恋人――加奈子の、高校受験の結果発表があるらしく、朝から緊張の面もちで出かけていったな。


「……ほんとは俺もついていきたかったんだけどなぁ」


 そう言ったら、「バカなの? 死ぬの?」と一蹴されてしまった。

 そんな訳で、病院行った後、適当に時間をつぶして帰ってきたわけだが。

 ドアノブをひねってみる。

 がちゃ。

 開いた。どうやら、加奈子が帰ってきているようだ。


「ただいまー」

「ちょっとぉぉ――!!」


 どたどた! とリビングから走ってきた。こいつが俺の恋人、加奈子。あいかわらずやんちゃだ。


「遅いっ!」

「おまえな、廊下走んな」

「うるさいなー! おにーちゃんが帰ってくんのが遅いからいけないのよーっ!」

「これ、加奈子。『おにーちゃん』じゃないだろ」

「えっ……」


 はっと口元を押さえる。


「その……えっと、慣れなくて」

「がんばれ」


 おお、照れてる照れてる。かわええのう、かわええのう。


「えっと……ああもお! “光太郎”! 帰ってくんのが遅いのよー!」


 えいっ! のかけ声で俺に飛びついてくる!


「ちょっ、ま――」


 どすん!

 盛大に尻餅をついてですね、その、腕が、腕がぁぁ!


「私、合格したよ!」


 なんだか重大な発表を耳もとで叫んでるような気がするけどぉ! すごく痛いんですけどぉ!!


「合格合格ー! えへへ……ホメてホメてー!」


 ああ、ちょっ、肩ガクガクしないで――ごちん!

 げた箱の角に頭ぶつけた!!


「あっ、ごめん……」

「てめぇ、このやろう!」

「ふぐっ!?」


 罰として不意打ちキス!


「たくよ、おまえ。俺ケガ人なんだから手加減して……てうわぁ!」


 押し倒された! 玄関の石床に腕を強打!


「ぎゃぁぁぁぁ!!」

「おっ、おにっ……光太郎が悪いんだから!!」


 そう言って、今度は強引に唇を奪われた!

 くそ、誰ににちまったのか……! おぼえてろよ、ミシロ。作り上げたら、まず最初に説教してやるんだ。加奈子をキス魔にしちまった罪は重いぞ、ミシローっ!!



 おわり

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雑記というか小ネタ的なにかというか、あやふやなメモ帳 ばるじMark.6 ふるぱけ @hikarimo_6

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