第2話

 それまでの姉の行動への疑問・怒りは突然の出来事で白紙になり、その後数十秒で真っ黒なインクをぶち撒けられた。


「なんで…」


 そのどうしようもなく吐かれた言葉は姉の死へのものと、消えた死体への言葉だった。

 確かに見た、この目で見た。姉の無表情ながらどこかに救いを求めた悲しげな目を。その次に赤く咲き誇る花を。


「十々、見たよな?…」


 それをみた彼女の心配より唯一の家族の心配が先に出てきたのが奏汰の本音。


「・・・」

「何かの見間違いだよな」


「そうだよね…」

 震える声で帰ってきた。

 冷静に考えよう。まず、姉はとある研究機関で働いていて地元にはいない、地元に帰ってきてるなら真っ先に自分に電話する。それに死体がない、飛び散った血が見えない、人を轢いてるのに忙しなくノイズを吐きながら止まらず走り去る特急列車。


 それは姉の死を否定する為には、パニックに陥っている奏汰を現実逃避させるのには十分過ぎる理屈こたえだった。


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ExpErimenTal animal- Original- れいやスン @25_tyu

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