旅に出掛けようか。
四季 巡
旅に出掛けようか。
旅に出掛けようか。
そう、言ったのは君であった。
桜が散り、青葉が桃色に混じる季節、私たちは旅に出掛けた。
ほんの小さな、ありふれた想い出の一つでしかない。
窓から夜空を見上げるような、涼しげな夜、場違いな小鳥の囀りに違和感を覚えさせられた私は、日常に飽き飽きしたと不意に思い、月へと行きたくなった。
私の小さな拇でも、隠れてしまう程に小さく見える月は遠く、馳せる思いは冷たい雨のように滴り、いつの間にか忘れてしまった。
忘れてしまうことを、いつの日か忘れてしまい、踏み出すことのできない整備された日常を送っていた。
旅に出た私は、考えさせられては苛立ち、言葉に出来ない感情を憤りと云うのを知った。
結局、答えは出ず、問うことも忘れてしまい、逸脱する行為を面倒臭がり、いつの間にか日常を好きになっていた。
きっと、変哲のない同じような日々をこれからも過ごし続けて、好きな人も嫌いな人も忘れてしまう。
旅に出掛けようか。 四季 巡 @sikimeguru
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