8輪: 忘却の語尾XXX

「はぁ〜?なにいってんの、ハムタロス?わたし、そんなどっかの破滅型主人公みたいに“神”になりたい、とかまぁ〜ったく思ってないんですけど??」

「…あ、いや…新千年王国ネオミレニアムの神と言うのは言葉のあやで…」

「わたしは、魔法少女アイドルになるのっ!」

「えっ?…偶像アイドル?」

「そう、アイドル!魔法少女アイドル!マホドル!あっ、マジドルのがいいかな?」

「…うん、それでいいんだよ。神や英雄は、常に偶像の対象さ」

「歌って踊れて強くて可愛い魔法少女アイドルになるんだぁ」

「なるほど、ね。確かに、世界各地の古代の巫女達は、歌唱や舞踊を常とし、強力な霊力と魔力を保持していたしね。もっとも、偶像足り得る者は数少ないから、魔斗華まどか、君もかなり頑張らないといけないね。さあ、パソコンを開けてみてよ、魔斗華」

「うん」


 ノートPCを開けて、電源を入れる。


「ネットには繋がっているかい?」

「うん、無線で繋がってるよ」

「うんうん、いいね。それじゃあ、聖なるザ・ディヴァイン・侵入インヴェイジョンを始めるから、魔斗華、君はなんでもいいからブラウザを開いてごらん」

「ちょっと、待って!その“ザ・デブいイングヴェイ・マルムスティーン”ってナニ?」

「…“聖なる侵入”は、ボクの魔力でボク自身がインターネットの中に潜り込むんだよ。インターネットは人間が作ったシステムネットワークにしか過ぎないんだ。だからボクが潜り込んで全ての情報を書き換えるんだ。聖書のような紙媒体と違って、ネットなら一瞬で書き換えられるよ。

 魔斗華、君がネオミレニアムの神である事を、君が全ての頂点である事を、君が最高の魔法少女である事を、全国に、世界中に、あらゆる言語とあらゆるシグナルで、あらゆる社会にコミュニティに世代に、知らしめるんだ」

「え?そんなことしなくていいよ」

「ん?…えっ?えっ?」

「だってハムタロス、自主活動しなきゃダメだっていったじゃない?」

「…ああ、そうだよ。まず、情報拡散と発信性、その認知と周知を図り担保し、それに見合った力を現実に、断続的に発揮、邁進して行く、それが自主活動だよ?」

「いいよ。わたし、自分でやるから」

「えっ?」

「Twitterとかブログとかやればいいんでしょ?」

「…あぁ〜、うん。やっても構わないけど…」

「うん!自分でやるからいいよ」

「……いや、えーと…ボクの力を使えば、一瞬でネットを支配できるんだけど…」

「うーん、なんかそういうズルっぽい感じ、チート臭いことって魔法少女での垢BANアカバンくらいそうでイヤだから、自分でやるよ」

「…あ、ああ、うん。そっかそっか、魔斗華、君は“イイ子”なんだね」

「じゃあ、早速アカウント作ってやってみるね!」


 ブラウザを開いてググる。

 取り敢えず、TwitterとInstagramに登録する。

 Facebookは、おじさん・おばさん達しかやってないので、わたしはやらない。

 ブログは、魔法少女専用ブログ「マホブロ」に登録しておけばいいや。

 後は、絵を投稿する可能性もあるのでpixiv、ニコ動は普段使いのヤツのプロフィールを変えておけばいい。ニコ生をやる可能性もあるのでプレ垢にしておいたほうがいいかな?

 YouTubeとShowroomにも登録。koebuにも登録を…って、今年でサービス終了なんだ?じゃあ、登録しない。

 自作ポエム投稿用に、小説家になろうとカクヨムも登録。

 ついでに、“ボケて”にも登録しておこうかな?

 あ、そうだ!ラグナストライクエンジェルズのPV見て興味あったからDMMにも登録しておこう。


「………うーーん…」

「どうしたんだい、魔斗華?」

「…ホームページ、どうしよう…」

「ホームページ?」

「うん。わたし、作れない」

「ホームページを作ってどうするんだい?」

「わたしのオフィシャルHPだよ。ファンクラブ登録とかグッズ販売とか新着記事とかに必須でしょ、公式HPはっ!」

「おっ、そうだな……」

「ハムタロスはネットに詳しいんでしょ?ネットに強い胤獣いんじゅうなんでしょ?尊師系でしょ?ホームページ作ってくれない?」

「いや、詳しいとかじゃなくて、ネットそのものを支配出来る、と言うか…」

「じゃ〜、ホームページ作っておいてね〜。わたし、ドメイン取得しとくから」

「え、あ、はい…」


 ホームページのことはハムタロスに任せて、わたしはドメインを取る。

 なんかよく分からない。

 英語のページにきちゃった。

 なんとなくニュアンス的に入力操作して、ネットバンクから入金。

 細かい設定とかは、ハムタロスに全部任せよう。


「ドメイン取ったよ、ハムタロス」

「随分と早いね。よく一人でできたね。で、どんなドメインにしたんだい?」

「え〜と、わたしの魔法名の元ネタからとったんだけど『madoka-magica.xxx』にしたよ。最後の部分、これしか空いてなかったし、なんかシークレット感あって魔法的というかオカルトチックというかカバラ的というか、なんかかっこいいな〜って思ったから」

「!?それダメッ!アダルトサイト向けのsTLDだし、なんかもう色々とアウトだよ…しょうがないなぁ、ボクが全部やっておくよ」

「あぁ、うん。じゃ〜、お願い、ね!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

謙虚な魔法少女は電脳アイドルの夢を見るか? 武論斗 @marianoel

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ