カクヨムーン戦記【Fラン14位♡】

月色六華

~ 流浪の騎士と偽りの花嫁 。50日間の物語~

そうして君も、花嫁となった♡

   Ⅰ 異世界転生




 僕の名前は”小説 書” 。みんな”しょうせつ かく”と読むが、正しくは”ことく しょう”だ。流行りのキラキラ・ネームだと思ってくれればいい。どこにでもいる普通の中学二年生だ。


 いつもの如く、僕は学校の部活を終えて帰宅し、夕飯を済ませ、ネットサーフィンで暇をつぶしていた。

 そして、何気に開いたサイトのリンクをクリックした時。僕は異世界に飛ばされた。今にして思えば、利用規約とか書かれていたアレは、きっと異世界転生の魔法印が組み込まれたグリモワールか何かだったのだろう。


 まばらに点在する草木以外、荒涼として広がる砂の世界。


「ここは? いったい何処なんだ……?」


 孤独と不安とにさいなまれるしかない僕。


 ただ、この世界には僕以外にも人間が存在した。それはノベールと呼ばれる魔法騎士達だった。

 彼らの多くは、ナロ・ヨモーン帝国と呼ばれる国の民だったらしい。ただ、その圧制を強いる政治体制に嫌気がさし、はるばる海を渡って来たと聞いた。中には、祖国に夫や妻、子供たちを残してきた者も少なくないという。


 「そうまでして、なぜ彼らは……?」


 それは、東証一部上場地上の楽園という噂が流れたせいもあった。喧伝され彷彿させる潤沢な黄金と豊かさ。そのイメージに多くの者が魅かれたのだろう。(単純に百万円報奨金目当ての賞金稼ぎもいたらしい)


 しかし、夢と希望をもって訪れた新世界は悲惨なものだった。


 この国を訪れた者には、もれなくマーイ・ペジ(この国の発音は難しい)と呼ばれる質素な家屋が与えられた。

 他にはフォロと呼ばれる魔法アイテムがあるだけだった。


「途方に暮れていてもしょうがない……」


 そう思った僕は、名刺代わりにフォロというものを連発してみた。すると、何の前触れもなくウン・エーイと呼ばれる憲兵隊が現れ、


「な、なんだ? や、やめろ! ぼ、僕が何をしたっていうんだ!!」


拘束監禁の後に一週間の牢獄暮らしを余儀なくされた。


 その後。釈放された僕は騎士ノベールの身分を隠し、吟遊詩人として放浪の旅をしている。


「それもこれも、あの懐かしい現実世界へと帰還するためだ」


 怒声が飛び交う狂乱の戦場。ノベールと呼ばれる魔法騎士たちが、血で血を洗う修羅の国。そう、ここは異世界王国カクヨムーン。


 


   Ⅱ 修羅たちの王国




 ウェブ・ノベールと呼ばれる異世界に、突如として誕生したカクヨムーン王国。


 この国を治めるカクヨムーン1世。彼は父カドカーワと母ハテーナの間に生まれた。その彼を頂点とし貴族騎士階級が存在する。


 上からワナービ、ヨマレータイ、カクダーケ。そして、その中からドクーシャと呼ばれる花嫁たちの栄誉を勝ち取った者だけが、国王直属のラン・キング騎士団への入団を許される。(中には花嫁ドクーシャ目当てで海を渡った者もいた)


 ただ、そこで一つの問題が起こった。これはカクヨムーン王国だけではないらしいのだが、その花嫁ドクーシャの絶対数が少ないというのだ。


 本来、騎士団ラン・キングへ入る為には、スターと呼ばれる流通金貨を手に入れなければならなかった。そして、その金貨スターを錬金術で生み出すのが、ドクーシャと呼ばれる花嫁たちだった。


 しかし、魔法騎士ノベールたちは負けなかった。彼らは自らが行使する白レビューンという白魔術を相互に展開することによって、金貨スターが生み出せることに気づいた。(中にはギルドを組んで一大勢力を築き上げる者までいた)


 以来。この国では、スネ毛とスネ毛を絡ませることによって、金貨スターを生み出すことが主流となった。しかも、この方法で生み出された金貨スターは、あの憲兵隊ウン・エーイでも真偽を見分けるのが困難だという。


 僕も幾らかスネ毛を絡ませてもみたが、あまり心地の良いものではなかった。何故なら、この魔法騎士ノベールたちは、一見して男か女か分からない所があったからだ。あの絡ませた時の感触たるや、なんていうか、こう……、いや、止めておこう。


「それもこれも、あの懐かしい現実世界へと帰還するためだ」


 また、花嫁ドクーシャを装って近づく、毒ドクーシャと言う魔女や魔導士たちが存在する。彼らが行使する黒魔術・黒レビューンの威力は脅威でもあった。魔法耐性の低い者なら一発で心が折れ、廃人となること請け合い。


 魔法騎士ノベールたちは白魔術サクージョで対抗するが、いかんせん対処療法。一度体に入ってしまった黒レビューンの傷を癒すには、それ相応の時間が必要だった。


 中には暗黒面に捉えられ、魔法騎士ノベールから魔女毒ドクーシャへと落ちる者もいるという。


 そう、ここは怒声が飛び交う狂乱の戦場。ノベールと呼ばれる魔法騎士たちが、スネ毛とスネ毛を絡ませる修羅の国。異世界王国カクヨムーン。




   Ⅲ 勇者たちの盛衰




 この異世界王国カクヨムーンを訪れてから、幾人もの勇者たちと出会った。


 魔法奥義カブ・ヌーシの使い手、気高く名誉を重んじる魔法騎士アルグ・ループ。

(ごめんなさいm(_ _)m)


 分身魔法を得意とする妹騎士スーペア。

(ごめんなさいm(_ _)m)


 お前、本当に頭オカシイだろっwと言われながらも、七騎士団ラン・キングの一角レキーシ・ジェダイを纏めるソー・ロウン騎士団長。

(ごめんなさいm(_ _)m)


 女だてらに、その明晰な頭脳を駆使し戦場を駆け巡る美人騎士ペコ・チャーン。

(ごめんなさいm(_ _)m)


 他にも沢山の強者たちと出会ったが、僕の中に強く印象を残して消えていった彼が忘れられない。


 ゴシック調のホワイト&ブラックの甲冑に身を包んだ伝説の騎士。またの名を”驚愕の獅子団長”OH!LEO / オー・レオ。


 彼は寡黙だった。自分の名前以外に何も語ることなく、その剣の切っ先を天に翳し、瞬く間に七騎士団ラン・キングの一角エス・エーフの騎士団長となった。


 皆が彼に驚愕し、憧れた。彼のいで立ちを真似をする者まで現れた。勇気をもらったと言ってもいいかもしれない。しかし、その絶大な人気が災いとなった。国王であるカクヨムーン1世の不興を買ってしまったのだ。


 ある日突然。彼は憲兵隊ウン・エーイに拘束されると、エス・エーフ騎士団長の座を追われた。今は辺境の地で隠居生活を営んでいるという。それでも、未だ彼の元を訪れる者も少なくない。


 そして、時は流れ、新たなエス・エーフ騎士団長の席には




 ∝ ⊆ ・ ⌘ ﹆ー ⊿




 ……




が座っている。

(ごめんなさいm(_ _)m)


 そんな勇者たちとの出会いと別れを繰り返し、時に笑い涙し、未だに僕は異世界を彷徨っている。


「それもこれも、あの懐かしい現実世界へと帰還するためだ」


 散っていった者も数知れず。そう、ここは怒声が飛び交う狂乱の戦場。ノベールと呼ばれる魔法騎士たちが、血で血を洗う修羅の国。異世界王国カクヨムーン。




   Ⅳ 帰還の可能性




 いくつかの街を放浪し、僕は元いた世界へ帰還する可能性を探した。それはそれは過酷な旅となった。


 そして、とうとう見出した。確かに、それは噂にしか過ぎなかったが、僕は藁にも縋る思いで耳を澄ました。


 この異世界王国カクヨムーンでは、先にも述べたが騎士階級が存在する。


 己が道をまい進するカクダーケ。


 人付き合いを大切にするヨマレータイ。


 意欲的なワナービ。


 中でも、花嫁ドクーシャの栄誉を勝ち取った七騎士団ラン・キングたち。


 そして、それを束ねる七人の騎士団長。それで全てかと思われていた。


 ところが、それで終わりでは無かった。


 それは、その七騎士団ラン・キング(騎士団長含め)からコン・テ-ストと呼ばれる聖なる儀式を受け、僅かな人数だがショ・セーキカと呼ばれる聖戦士の遠征隊が組まれるという話だった。


 そして、その聖戦士遠征隊ショ・セーキカの戦場は、僕が元々いた紙媒体現実世界だという。


 僕は胸が躍った。あの父と母や妹、友のいる懐かしい世界。あの故郷に帰る手立てがある。それが険しい道のりだなんてことは、こんな僕にも分かっている。重々承知だ。


「それでも、あの懐かしい現実世界へと帰還するためだ」


 僕は胸に期するものを感じ、心新たに誓った。


「帰ろう、あの世界に……」


 おそらく、不器用な僕は人付き合いも、剣をふるうことも、スネ毛を絡ませることも上手く出来ないかも知れない。それでも、希望だけは捨てずにいようと思う。


 何故なら、そう、ここは怒声が飛び交う狂乱の戦場。ノベールと呼ばれる魔法騎士たちが、血で血を洗う修羅の国。異世界王国カクヨムーンなのだから……。






   追伸:花嫁たちへ




ああ~うるわしの花嫁ドクーシャたちよ~♪


なぜに君は花嫁ドクーシャなのかぁ?


ああ、花嫁ドクーシャよ~、花嫁ドクーシャよ~♪


そうして


この物語を呼んだあなた も


花嫁ドクーシャとなった……


じゅて~む♡



            中学二年生の吟遊詩人






カクヨムーン戦記:序~ 流浪の騎士と偽りの花嫁 ~【完】

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