依頼達成。「鴉」と呼ばれる男。

男が自分の事務所に戻ると来訪者はただ静かに男が事務所を出た時と変わらず椅子に座っていた。しかしその目は閉じられていた。

男は来訪者に近寄りその前でしゃがみ込んで閉じられた目を見ながら呟く。

「こっちも行ってたか。よかったじゃねぇか社長さんよ、先に奥さん待っててくれてただろ?」

男は立ち上がりって血に濡れたコートを脱ぎ、着替えながら1人呟く。

「依頼は成し遂げたぞ。後は2人でゆっくり話でもしてな」


この男はおかしな男だった。

時に殺しの相手に情けをかけ、依頼人を殺すこともあった。

しかしそれ以外の時には躊躇いなく人を殺した。部屋中を血の海に染めることなど日常茶飯事であった。

1度も捕まることはなく、どんな事も成功させてきた。

そしてこの男の裏の噂を知っている者はこう呼んだ。「鴉」と。

鴉は未だ表では探偵事務所を開きながら、裏では闇に紛れて殺しから盗みまで行っているだろう。そしてその度にまた男は依頼人に対してこの言葉を投げかける。

「さぁ、理由を聞こうか。お前が俺に依頼する理由を」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

鴉の1日 @azarea

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る