大好きなオスカー・ワイルドの「幸福の王子さま」(著作権切れているっぽいから多分書いても大丈夫)のなにかかな?と興味を惹かれたのがきっかけです。ここから、ちょっとネタバレかも。。。本来、分け与えることによって幸福になった王子さまとは、まるで間逆な「とりこむ」無邪気な(聡明な王子さまとはこれも真逆)神さまなら、結末も真逆かと期待してしまうほど、真逆です。なのに、読み終わった後に漂う哀愁は、幸福の王子さまと同じかそれ以上で美しい童話に仕上がってて読んでよかったとことさら思いました。
種子であった少女は成長し神と崇められます。少女にとってすべての生命は、隔てることなく慈しみ愛すべき存在でした。永い、永い時を経て、彼女が出会った一人の少年。これは、自らの孤独すら理解していなかった神の少女と、その孤独を理解して受け入れようとする少年との愛の物語です。胸が温かくなる、そして同時に妄信の危うさを語りかけてくるお話でした。だってこれ、邪神様のお話だからね。
私はあまり語彙力もないので細かく評価を下すは難しいのですが、文章が全体的に童話のような語り方で、そして話とそれがマッチしており、読んでいるととても健やかな気持ちになりました。確かに話は残酷な描写もありますが、文章が美味いことに童話風なおかげで、それが気にならないうまいバランスだったと思います。また、コズミックホラーというよりはSF的な世界観と物語にも味があり、最後に愛で終わるのがとてもいいものだと感じました。
作者から、沙耶の唄っぽいとかファフナーっぽいとか、そう語っていたのを見てて、よーし、んじゃ見てやるけんノォ! というのが、お恥ずかしいながらこれが読むまでの経緯となります結果を言えば、上記の作品の影響はあるでしょうけど、ちゃんと独立した物語でした。むしろ、二つの良いところを理解した上で生まれた作品だと思います短編なのが勿体無く感じるのは私が単純に続編を期待しているからですが、短編だから良い作品なのでしょうね非常に心に響く作品でした。