~ 十二月十一日 午後三時四十分 ~
~ 十二月十一日 午後三時四十分 ~
家に帰ると私の祖父がソファでぐったりとしていた。
別に死んだわけではないんだろうけれど。
え? 死んでないよね? 生きてるよね?
私は祖父の身体を優しく揺さぶる。ここで起きてくれないと困る。
「……んぁ、なんだぁ……? あぁ三浦か。そんなに必死になってどうしたぁ?」
「あ、良かったぁ、生きてた……」
今年で60歳になる祖父は18歳の時に私の父を間接的にではあるが産んでくれて、45歳の時に27歳の私の父はまた間接的に私を産んでくれた。
「何を言ってるのか……三浦を残して死ぬなんて、孫のお前が死ぬまでできんよ」
でも私の両親は大人なげなく私を祖父の元に預けて消えて行ってしまったのだ。いや、実質は私が田舎の方へ左遷されたような
ひどい親だと思う。でもそれ以前に、自分を産んでくれたことに対しての前提的な感謝が先行する。だから先祖には感謝しなくてはならないのだ。
「なんでもないよ、お祖父ちゃん」
「そうか。ならいいんだがなぁ」
私は祖父の生存を確認して廊下へ出る。突き当たりにある自室へ引き戸を開けて入る。
「…………よし」
私は鞄の中からパソコンを取り出す。少女には少々重かったけれど、しかしこれがなければ、これからをやっていけないのだ。
その子の死体がなければ、何もかも始まらない。
パソコンの起動音とともに、ため息が出る。毎回思うけれどこの待ち時間は本当に不必要だ。
『パスワード』
私は視界に映った薄い文字列を見て反射的に打鍵する。すると『ようこそ』の文字が直後、あらわれる。
ええと。そう、確か『ごみ箱』の中に……。
デジャブ。
なんだろう、この感覚は。昨日体験したことを、今日体験しているような……否、今日体験したことが、昨日既に体験されていた、ような…………
「気のせい、気のせい……それよりも集中しなくちゃ」
『ごみ箱』の中身を展開していくと、メモ帳に何か書かれている。私はそれを両目で認識してすべてを理解する。
「思い出した……。その子の死体を探さなきゃならないんだ……」
使命感に駆られて私は、パソコンを閉じて、部屋を出た。
デジャブ――。
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