糸目の彼女を射止めたい

神山こうやまさんのアソコを、くぱぁって、したいんだが」


窪塚くぼづかの突拍子もない珍妙な発言に、関本は思わず、ごほごほっ、とむせてしまった。


「お前、やぶから棒に何を口走ってるんだ」


「いやいや、くぱぁ、って言っても、

 イヤらしいことを言ってるワケじゃないんだ」


だったら何だっていうんだ、と、関本は先ほど咽た拍子に床に零してしまったコーヒー牛乳を勿体なさそうに眺めながら問いただした。


「目だよ」


「目、だぁ……?」


「ほら、神山さんって、糸目じゃん?

 元より物静かなところもあって、

 クールっていうかさ、知的っていうか……元々いいなとは思ってたんだけど、

 あのまぶたの裏に隠された瞳も、きっとキレイなんだろうなぁってふと思ってさ」


そんなことを口にしながら、窪塚は何処か遠くのほうを見つめ、物思いにふける。


「まぁ……確かに、

 神山さんがあの目を見開いてる瞬間って、実は俺も見たことねーしな。

 気になるっちゃ、気になるけどよォ……」


「だろォ?

 だから俺、神山さんに頼み込んで、くぱぁさせてもらうことにするわ!」


「だからその、くぱぁ、って表現やめれ」




放課後、窪塚は、帰宅しようとする神山を引き留めて、教室から自分たち以外の人間が誰もいなくなるまで待ち続けた。


「……私の、瞳が見たいって?」


そして、さも迷惑そうに先ほどから眉を潜めていた神山は、呆れた様子でそう言い放った。


「あぁ。絶対キレイだと思うんだけど」


「からかってるの? 私、もう帰るわよ」


神山は通学カバンを手に取ると、そのまま窪塚の脇を通り過ぎ、出入り口へと向かう。


「俺、神山さんのことが、ずっと、気になってたんだ!」


傍から見れば告白とも取れるその言葉に、神山は足を止める。

そして、振り返った彼女は、苦笑していた。


「……変なこと言うのね、窪塚くん。

 こんな不気味な女の、いったいどこがいいんだか」


「不気味なんかじゃないよ!

 絶対カワイイって! 俺が保証する!」


神山は、頬の辺りを掻いて、暫し考えていた。

窪塚の、まるで根拠のない、それでも、自信たっぷりな強気な発言に、とうとう折れてしまう。


「そう、かしら。

 じゃあ、勇気を出して目を開いてみるわね……」


窪塚は神山の前へと歩み寄る。

窪塚の心の中では、どこか感慨深いものが渦巻き、充足感に満ち溢れていた。


何故なら、クラスの他の誰でもなく、彼女は自分にだけを、捧げてくれるのだから……。




ゆっくりと、その瞼を上げる神山。



次の瞬間、窪塚はその場に尻餅をついてしまう。

と同時に、股間を濡らし、粗相そそうをしてしまった。




「か、神山さん…………その目…………?」


「少女マンガでは、ごく普通のサイズよ」

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