新たなる魔王
みょんみゅん
第1話
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
わたしの村を襲った魔王が憎い。
わたしの両親を殺した魔族が憎い。
わたしの村を見捨てた王が憎い。
わたしたちを時間稼ぎに捨てたみんなが憎い。
わたし達の村は魔王たちが治めている地に面している国の辺境でした。
ある日一人の魔王がわたし達の住む国へと侵攻してきました。魔王たちの治める地に隣接ため他の国より魔物も多く強いためこの国の軍隊は決して弱くはありません。
ですが魔王の四人の部下は多くの魔族や使役した魔物をと共に様々な方面から真夜中に一気に侵攻してきたため国境付近の砦はことごとく占領されてしまいました。
そして国は魔王軍の侵攻が早く第二防衛線では自軍の準備が間に合わない事と他国の軍や教会の勇者が揃うまでの時間稼ぎとして第二防衛線から第三防衛線までの町や村を完全に見捨て第三防衛線において耐えることを決定しました。
そしてわたし達の村は第二防衛線から第三防衛線の間にありました。
それは一瞬でした何も連絡がないままわたし達の村は火の海へと変貌しました。
大きな音がして目を覚ました時にはすでに村は血の海でした。いつも優しくしてくれるおじさんやおばさん、厳しいけどいろんな事を教えてくれるお兄さん達が村の外で血だらけになって倒れていました。
そしてその人達を無残な姿に変えた魔の手はわたしにも向かってきてました。
「ほう、寂れた村だと思っていたが魔王様好みの子供もいたものだな」
「ひっ……」
紫色の皮膚をし二本の角の生えた魔族がわたしを捕まえようと手を伸ばしてきました。
「ユリアっ!」
その時お父さんとお母さんが魔族に攻撃を仕掛けました。
わたしの前に魔族と対するようにお父さんとお母さん剣を構えてます。
「アラン! ユリアを連れて逃げろ」
「でもお父さん達はどうするの」
「そんな事わかってるだろ俺たちはここで時間稼ぎするんだ。お前も俺の息子ならしっかりしろ!ユリアを守れるのはお前だけなんだ。ほら行け!」
「くそっ、ユリアいくぞ」
わたしは涙を目に貯めているお兄ちゃんに引っ張られてその場を走って逃げました。
逃げる時お父さんとお母さんが魔族と闘い血まみれになりながらも必死に足止めをしていました。その時わたしはやっと理解してきたのか怖くなってきました。
それでも足を止めずにお兄ちゃんに引っ張られながら森へと駆け足で向かいました。あと少しで森へと言う時に背中へ強烈な衝撃がしました。
「ユリア!」
壮絶な痛みのせいでわたしは声をだすことすらできずにうずくまってしまいました。
「大丈夫かユリア」
「よう、逃げようたってそうはいかないぞ。この村の全ては魔王陛下の礎となってもらう、なに抵抗しなければ生かしてやるよ死ぬよりも辛いかもしれないがな」
大きな一本の角に赤黒い鎧を纏った大男はそう言うと大笑いしだした。
「ユリア立てるか? 立てるなら一人で森へと逃げるんだ俺が時間稼ぎをする」
「ほう、ガキが粋がるなよ」
「言ってろ、スラッシュ」
お兄ちゃんは腰の剣を抜き魔族へと剣技を放ちました。
「ほう、ガキにしてはなかなかやりそうだな」
「くそ」
だけどお兄ちゃんの剣技は容易く魔族の拳で止められてしまいました。
いくら元Aランク冒険者の息子で村でも上位の剣技を持ってしても所詮子供魔族には分が悪いようです。
「ユリア早く逃げるんだ! 早く!」
その言葉でわたしは走り出しました。まだ背中に痛みが残っていますが必死に走りました。
「逃がすかよ
「ユリア!」
更に背中に衝撃が来ましたが泣きたいのを必死に我慢して森へと走りました。
「これで奴はそこまで遠くには逃げられないだろうお前を殺して奴にも死んでもらおうか」
「ふざけやがって!」
最後にそんな声が聞こえましたが深く考えてることはできずに走りました。
走り走って転んでそれでも走りました。
だけどもう限界です体力の限界で走ることはできず魔族からの攻撃を受けたはずの背中はいつの間にか痛みがなくなり感覚すらなくなってしましました。
だんだんと意識が遠くなるに連れてわたしはすべてが憎くなっていきました。
わたしは生きたかった。
わたしは強くなりたかった。
わたしはこの憎しみを晴らしたかった。
だけどわたしにはもうそれは叶わない。
わたしはここで死ぬんだ。そう思った時目の前に黒髪の男性が岩の上に座っていました。
天使ではないならこの人はわたしの事を連れて行く死神か、そうわたしは思いました。お父さんとお母さんそしてお兄ちゃんを見捨てたわたしには死神がお似合いでしょう。
「あなたは死神ですか?」
なぜわたしはこんな事を聞いてしまったのでしょうかそれはわかりませんですが死神は答えてくれました。
「俺は死神なんて優しいもんじゃない君次第では死神すら生易しいと思うことをするだろう。では聞こう……復讐したいか?」
死神はそんな事を聞いてきました。
そんな答えなんか決まっています。
「したい!」
「そうか……その道がたとえ地獄でもか?」
「それでもわたしは村を襲った魔王に……村を見捨てた王に……復讐したい!」
その答えに死神は微かに笑みを浮かべました。
「いいだろう君に力を与えよう生かすも殺すも君次第だ。これから三日三晩苦痛に見舞われるだろうだがそれを乗り越えた先には君の求める物があるだろう」
「ぐぁぁぁぁぁぁ」
死神が言い終わった瞬間わたしの体は全身を押しつぶされすり潰されたような痛みが走りました。
今まで味わったことのない壮絶な痛みなのになぜか意識を失う事はありませんでした。
「おまけで君が覚醒してしばらくするまでは時間を止めておいてあげよう」
「ぐっ死神……さんのがぁぁぁ……お名前は?」
「へえ、その苦痛を味わってなお言葉を発せるのか流石だね。俺の名前はミコト、能力神ミコトだ。その苦痛は君の体が改変されているからなんだ苦痛分苦痛が終わった時の伸び幅が大きいよそれに君に幾つかのスキルと知識も与えたそれらは苦痛が終わった時には君も理解できるだろう。じゃあ俺はもういくね楽しみにしてるよ新たな魔王さん」
そう言って死神……能力神ミコトはまるで最初っからいなかったかのようにその場から消えました。
だけどそんなことを考える余裕はわたしにはありませんでした絶え間なく激痛がわたしの全身へと走っていきます。なのに意識は決して無くなることはありませんでした。
そして壮絶な三日間は過ぎて行きました…………
◆◇◆
三日間変わらなかった空は時が止まっているおかげか月が隠れることなく常に当たりを照らしていた。
たったの三日だけど全く変わっていないはずの景色が新鮮に映る。
身長も体重も変わってはいないだけど自身でも分かるほどの濃密なエネルギーがわたしの中にあることが分かる。
今になって思う能力神ミコトの去り際の最後の言葉の新たな魔王という言葉それは比喩でも何でもなく正真正銘の魔王へとわたしがなったということだけど別にわたしはそんなことは気にしない魔王になったからといって人類を滅ぼそうとか魔族をまとめようとかどうでもいいわたしの目的は村に攻めてきた魔王軍と村を見捨てた王国だけだ。それ以外はどうでもいい。
今は村に攻めてきた者を皆殺しにすることだけを考えよう。
わたしはあと少しで解けるであろう時間停止空間の中で自身の能力を把握する作業に入る。
わたしの貰ったスキルは身体強化系の細々したスキルを除けば主だったのは2つ『
『
そして全貌が一切把握できない『闇』だはっきり言ってこの能力は危険だすべての根源にしてすべてを飲み込む厄災のちからだけど関係ない使えるものは使う危険な力でもわたしは使ってやる。
そして時はきた。
すべての時間が動き出す。止まっていた草木は揺れだし小鳥は羽ばたいた。
即座にわたしは村の様子を確認するがお兄ちゃんはまだ生きているようだ。
だけど時間の問題だろう他にも生きている人はいるようだしわたしは即座に準備を始める。
「
わたしは魔王へと変化したため膨大となった魔力を対価に三匹の狼の眷獣を創造した。
『
「先に行って危ない村人を助けて来て」
「グルゥゥゥ」
三匹の狼達はわたしの命令通り村の方へ走っていった。
狼を見送ったわたしは能力神ミコトが座っていた岩へと近づきその岩を触りわたし用の武器を創造する。
「
わたしは武器として剣でも槍でもなく拳銃を創造した。
現在のわたしの頭のなかには能力神ミコトからとてつもない量の知識を与えられている三日三晩の苦痛の中には膨大な知識の処理も含まれていた。
その知識の中は魔法についての禁術や失われた魔術はもちろんこの世界以外の知識すらあるその中で武器になりそうなのは多くあるが個人用では圧倒的な火力であろう拳銃を選んだ。コストを考えなければ他にもあるのだがあまり時間もコスト掛けられないので拳銃を選んだ。なお岩だけでは拳銃のコストに到底足りないので不足分は魔力で補った。
試しに木に向かって引き金を引くと大きなパンッと音とともに弾が発射され貫通はしないまでも深くめり込んだ。
「狙いのズレもないし威力も申し分ない初めての創造にしては完璧ね」
ついでに創造でマガジン内に直接新たな弾を創造し補充した。
「さてわたしの復讐の初陣を始めますかな」
わたしは村へと向けて走りだした魔王へとなったため身体能力も上がったので行きより圧倒的な速さで村へと向かう。
移動途中に薬草を見つけたため採取する。村にはけが人もいるため傷薬を作ろうと思ったのだ。魔力やその辺の石でも作ろうと思えば作れるが薬草から傷薬を作るのはほとんど余計なコストを使う必要が無いためできるだけ余計なコストを使わないほうがわたしにも負担が少ないのだ。
採取した薬草を闇の中へと入れようとする闇の中ははっきり言ってよく分からない空間なため多くのものが入り尚且つ時間も使用者のわたしの思うがままだ。
だが入れようとして初めて気がついたすでに大量のものが入っていることに気がついた。それは様々な鉱物や資源だった。
どうやら能力神ミコトはスキル以外にもくれたようで膨大な量の鉱物を対価にすれば『
わたしは移動しながら闇の中の資源と知識を使い死後直後なら蘇生すらできると言われているエリクサーをいくつも創造した。
そして村の様子が肉眼で確認できる距離まで近づいたところでわたしが逃げた所ではお兄ちゃんと魔族それに村の人ではない人も魔族と戦っていた。
今更になって気づく村の中にいる人達の気配にはわたしの村以外の人の気配が幾つもあった。だけど微かにこの気配の記憶はあった。それはいくつかの村から共同で管理していた自警団だ。
他の村がすでに落ちたのかわからないが自警団のおかげでまだ生きている村の人がいることに感謝しよう。
これで間に合う。
「坊主しっかりしろよ、ここが正念場だ」
「おうっ!」
すでに満身創痍の二人に対しほとんど魔族には傷がなかった。
決して勝てない強大な相手に対しても心が折れずに立ち向かっていたそのおかげで間に合った。
「遊びも飽きたんでなそろそろ死んでもらうぞ」
「ちっ! 坊主そろそろ逃げとけよここはどうにかしておく」
「駄目だ、ユリアが……妹が逃げているんだ少しでも時間を稼ぐんだ!」
「どうせあのガキもすぐ死ぬんだ諦めろよ」
お兄ちゃんの言葉にわたしは嬉しい半面わたしだげじゃなく自分の命も大切にしろと怒りも湧きでた。
お兄ちゃんたちに向かい魔族が攻撃をしようとしたでけどすでに遅いわたしの射程圏内魔族は入っていた。
わたしは魔族に向けて拳銃を構え一切のなめらいなく引き金を何回も引いた。
銃弾はそれることなく魔族へ向かって進み命中した。
「ぐっ、いきなりなんだ」
さすがは魔族急所が外れたとは言え何発もの銃弾を受けても死んでない。
だがダメージは確実にある即座に魔族の目の前までわたしは移動し魔族に向かい回し蹴りを放った。魔族は一瞬の合間の攻撃のせいか防御することなく吹き飛んでいき民家へと突撃した。
呆けているお兄ちゃんや自警団の人はとりあえず置いておいて飛んでいった魔族にとどめを刺すためわたしは近づく。
「うっお前は逃げたがガキかなぜそんな力を……」
「うるさい死ね」
わたしは闇の力を使い魔族の体を飲み込んでいく。
「なんだこれは」
「あの時はすごく強く感じたけど今は雑魚にしか感じないな」
魔族はすでに鼻まで闇に飲み込まれているせいで言葉を発することはできないがその目からは殺気がにじみ出ていた。
「じゃあね魔族さん」
闇の中はわたしの思うがまま広さや時間はもちろん圧力すらも。
目より上のみしか出てない状態でわたしは魔族の入った空間の圧力を数百倍に上げた。
魔族の最後は一瞬だった圧力を上げた瞬間魔族は目から血を吹き出し死んだ。
わたしは闇の中の魔族をその辺に捨てた闇の中に取り込まれていた部分は見るも無残に潰され跡形もなかった。
「ありゃ、苦しませて殺そうとしたんだけど失敗しちゃった。まいっかさっさと他の魔族でも殺しますか」
ああ、お兄ちゃん達の怪我も直さないとな。
わたしは民家からお兄ちゃん達のところまで歩いて行く。今だ何が起きたのか理解してないのか固まっていた。
わたしは闇の中からエリクサーを取り出して固まっていた二人にふりかけた。
エリクサーの効果は凄まじく怪我をしていたとは思えない程の回復をしていた。
「ユリアなのか?」
「そうだよお兄ちゃん、それとこれを渡しておくね」
わたしはエリクサーを何本かと新しく創造した拳銃をお兄ちゃん達に渡した。
「薬はエリクサーだから怪我していた人いたらぶっかけちゃって、それとそっちは引き金がを引くと弾が出るから急所に当てれば多分魔族でも死ぬと思うよ。ああでも拳銃だと弾が補充できないか……
わたしは闇の中から適当な金属今回はオリハルコンを取り出しロングソードを二本創りだした。
「エリクサーだとそれにこれはオリハルコン嬢ちゃんは何者だ?」
「わたしは北に密集している魔族を殺しに行くからこの辺で生きている人がいたらそれでどうにかして」
わたしは北へと向かって歩き出そうとしたけど流石に他にも魔族が多いことが分かったので新たな眷獣を創造した。
「
黒き大鬼が想像された。
お兄ちゃん達はいきなり現れた大鬼に腰を抜かしていた。
「主よ命令を」
「へえ、知能はあるんだ。わたしは北の方の魔族たちを殺すから他の魔族を殺しておいてね、はいこれがあなたの武器ね。それと一人で平気?無理そうなら他の子も呼ぶけど?」
「お戯れをその辺の魔族ごときわたしの相手ではございません」
「そっかなら頑張ってね」
わたしの創造したオリハルコンのクレイモアと呼ばれる剣を大鬼はつかみ走りだした。
「じゃあお兄ちゃん達もがんばってね」
「おいっユリア!」
お兄ちゃんの止める声を無視してわたしは村の北へと向かって走っていく。お兄ちゃんも追いかけようとするが魔王となったわたしの足にはついてこれてなかった。
当たりは無残な姿で横たわる人が大勢いた事切れてから暫く立っているためエリクサーを掛けても無駄だろう。
幾つもの亡骸を超えてわたしは激戦を繰り広げている北の門付近まで来た。
自警団の人や戦える村の人それに最初に呼んだ影狼(シャドーウルフ)の二匹が共に戦っていた。
「なんだか知らんがこの狼は味方みたいだ攻撃するなよ」
「おう、せめてこの村だけでも救うぞ!」
「村人だからって舐めるなよ!」
多く人が傷だらけになりながらも懸命に魔族や魔物と戦っていただけどわたしはの目はその先頭の横においてある死体に目が行きましたそれはお父さんとお母さんの死体でした。
激闘の末なのでしょう多くの魔族や魔物の死体も周りに落ちていました。
生き返らないと分かっていてもわたしはお父さんとお母さんにエリクサーを掛けてしまいました。当然変化はありませんでしたがわたしは心からお父さんとお母さんに祈り捧げました。魔王が何に祈るのかわかりませんがとりあえず能力神ミコトに祈っておきました。
「お父さん、お母さん安心してもう村人は殺させないし敵はわたしが取るからだから安らかに眠って」
わたしは
悲しき感情と憎しみの感情が渦巻く中わたしはただ魔族を殺すため動き出した。
「死ね!」
拳銃で魔族の頭部を狙い今度は確実に一発で魔族を殺していく。
村人を襲っていた魔族、自警団の人の首を取ろうとしていた魔族を殺したわたしに人、魔族両方から注目を浴びた。
「ユリアちゃんかい?」
「お前が今の攻撃をしたのか」
「
「ガウッ」
二人の質問を完全に無視してわたしは
二匹の
「グルゥゥゥ」
殺し尽くした二匹の
やはり村人も自警団の人もわたしが魔族をあっさり殺し
いろいろ言っておきたかったがそうも言ってられなくなった。
ある一人の魔族が近づいてきているのだしかも今までの雑魚ではなく強者が近づいてくる。
「ほう、あの時逃げた子供かどういう事か知らんがかなり強くなってるようだな」
あの時わたしの事を捕まえようとしお父さんとお母さんが戦いを挑んだ魔族がわたしの前に再び現れた。
「お前の親は部下に任せたが随分部下が殺されたようだな。一応名乗っておこうか魔王軍四天王が一人西のベルグだ。捕まえ魔王様に献上しようと思ったがやめだお前は危険だここで殺す」
「お前に殺せるかなわたしを?」
「言うじゃないか。
魔族の手から突風が吹きすべてを切り裂き押し通しながらわたしに向かって飛んで来る。
わたしは力を使うことはせず魔王たる圧倒的な膂力によるアッパーにより
「なっ!?」
「たかだかその程度の魔法で今のわたしをどうにかできるとは片腹痛いは!」
魔法を素手で霧散させた事に魔族は流石に驚いたのか固まっていた。
「何かしら魔法を無効化するスキルを持っているようだがそれぐらいで奢るなよたかがこの程度で魔王軍の幹部にはなれんよ見せてやるわたしの幹部たる所以を!スキル
いや魔法を霧散させたのは純粋な腕力だけなんだけど?
そんなことより魔族が腰の剣を引き抜き辺りに散らばる亡骸を切り裂いていった。
「
おいおい自分の能力を言うなんて魔王軍も案外バカなんだ。
だけどたかだか数十人程度の力が上乗せされたところで今のわたしに勝てると思わないでほしいな。奴がせっせと死体から力を奪っている間にわたしは武器を創造していた。
創造した武器は昔お母さんに読んでもらった『勇者伝説』の中に出てくる勇者が魔王を打ちとった聖剣『
全ての魔を滅ぼすとされた聖剣はこの場合適正だろう。たかだか四天王ごときが伝説の聖剣の贄になるのだあの魔族も本望だあろう。
「なんだその剣は……たかだか村娘が持つようなものではないぞ!」
「聖剣『
「ふざけるな! それでは貴様が『始まりの勇者』とでもいうのか!」
「違うねわたしは勇者じゃなくてむしろ敵かなこの剣はわたしが創ったもの」
魔王となってしまったから勇者はわたしの事を殺しに来るだろうそしたら殺せばいい別に敵対しないなら興味が無いが殺されるのは嫌だからね。
「創った……だと、何を言っている?」
「いいよどうせ理解できないんだからじゃあね」
言い終わった瞬間わたしは魔族の四肢を切り裂き心臓へと聖剣を突き刺しそのまま大きく振り回し切り裂いた。
魔族は何があったのか理解せずに逝っただろう。これがわたしと魔族の実力差だ。
これでこの村を襲った頭は殺したし
そんなことを思っていると
「主よ魔族や魔物は殺しつくしました」
「ありがとう、じゃあこの村のことは他の人に任せていこっか」
「いいので? 自分の村でしょう」
「そう言うふうに言うなら分かっているんでしょ今のわたしは魔王、村のみんなといると迷惑になるよ。それに王と魔王も殺さないとね」
憎しみは消えないお母さんとお父さんが死んでしまった今さらにその気持は大きくなっていた。
静かに見つめる
わたしが去ろうとすると奥の方からお兄ちゃん達が走ったきたためわたしはその場から早々に去ろうとしたが突如大きな力を感じたため遅れてしまった。
「大丈夫か! マーリエ怪我人の治療をゴールナーは俺と魔族たちの迎撃だ! あのクソ王め自分の保身だけに走りやがって」
「全くねキリヤがいれば第二防衛線でギリギリ持ったはずなのに」
「おい、おかしくねえか怪我人や死体はあるが戦闘している様子がねえぞ」
どうやらこの人達はわたし達の国の異世界から来た勇者で村を見捨てようとした王を無視して救援に駆けつけてくれたようです。本来魔王となってしまったわたしは勇者の敵なのですがこの時は嬉しかったです。
それに勇者が来たのならわたしは安心して去ることができます。
「ん? その魔物は君がテイムしたのかい?」
こちらに気がついた勇者たちはわたしの近くにいる
わたしはもう少しでたどり着いてしまうお兄ちゃんから逃れるため無事な家の屋根へと飛び乗り勇者とお兄ちゃんの方を向き言いました。
「この村の魔族や魔物は全部殺しましたあとは怪我人の解放をお願いします。お兄ちゃんもさっき渡したエリクサー残ってるでしょ? 重傷者にはそれを使ってね」
「全ての魔族を君達で!? それにエリクサーって君は何者なんだ」
別に隠す必要も特にないので知りたいなら教えましょうか。
「わたしは魔王。村を襲った魔王それにわたし達を見捨てた王に復讐する力を手に入れるためにわたしは魔王になった」
「なっ!? 魔王になっただと!」
「ユリアなに冗談を言ってるんだよ!」
お兄ちゃんはわたしが魔王だということを認めたくないのでしょう。わたしだって急にお兄ちゃんが魔王になったと言っても信じられなかったでしょうし仕方ないです。
このまま勇者に敵とされて戦闘になっても負ける気はしないけど勇者はクソ王の命令を無視してまでわたし達を助けに来てくれたのでできれば殺したくないし勇者たちにはわたしが去ったあとに村の人達を安全なとこに運んでもらわなければならないしね。
そういえば村人を運ぶための足が必要だね。いくら怪我を治しても体力までは戻らないので運ぶものが必要だろう。
ちょうどいいとこにニホン……日本から来た勇者もいることだし勇者の故郷の足でも創りますか。
「
「はっ!? 自動車が何でここに?」
やっぱり勇者はこの自動車のことが分かるようなので何台か創りだして村人を運んでもらおう。
「勇者ならその使い方が分かるでしょ燃料は魔力で動くようにしてあるから他の人に乗り方教えてさっさと避難してね」
「いや俺はまだ16だから運転できないんだけど? それにATなのかMTなのかもわからないんだけど!」
……勇者が操作することができないとは思っていなかったので操作方法が書かれた本を数冊創造して勇者に放り投げた。
それを受け取った勇者は罰が悪そうに「すまん……」とっていた。
「それで魔王の君はこれからどうするんだい?」
「さっきも言ったとおりわたしは王と魔王を殺す」
「そっかなら僕らは隣国にでも逃げよう君が魔王を殺すならこの国の民は平気だろうし王には特に守る価値があるわけじゃないし守れるとも思わないからね」
「それってキリヤがあの子に勝てないって言ってるみたいなんだけど」
「無理だよこの魔王と戦ったら僕たちは確実に殺されるだろうね。圧倒的な力の差を感じるしさっきの力を見る限り僕の国の兵器を使われたら一溜まりもないだろうね」
この勇者は案外鋭いようですね勇者の国の兵器を使えば勇者はともかく殆どの人は消えていきわたしと一対一で戦えば闇の力で屠ることができる。でも勇者が敵対しないのであれば殺す必要は特にないわたしは大量虐殺がしたいのではなく復讐がしたいだけなんだもの。
さてわたしはこれ以上この場所にいても仕方ないので去りますか。その前にお兄ちゃんと勇者に折角だからおみやげでも置いてくとしましょうか。
わたしは
「これは……」
「お兄ちゃんが憧れていた英雄の剣だよ」
「ユリア……魔王になったて本当なのか……」
「本当だよわたしは魔王になることで力を得たんだから、ごめんね……お兄ちゃん。いくよみんな」
「待てユリアっ」
わたしはお兄ちゃんの制止の声を無視して勢い良く屋根から降りてお兄ちゃんがたちから離れていくもう遭うことはないであろうけどせめてお兄ちゃんだけは幸せに生きてと願いながら走っていくそれがたとえ無理な願いでも……
◆◇◆
「ユリアどうして……」
アランは父と母をなくしそして守るべき妹が魔王になり何処かへ行ってしまいまともに感情が制御出来にずに泣き出してしまった。
「大丈夫か少年、僕もどういう状況かは分からないが少なくともここから早く避難した方がいい」
「キリヤこの魔導具?ってキリヤの国のものなんでしょすごい技術ねでもこの本のおかげでなんとか動かせるようになったからさっさと隣の国へ逃げちゃいましょ」
「ああ、わかった」
ユリアが去ったあとの村ではアラン達が持っていたエリクサーやマーリエの回復魔法などで怪我人の治療が行われていたが早く避難しなければいつ魔王軍の援軍が来てもおかしくなかった。ついでに無理やり出てきた勇者はお尋ね者となっており人間の軍に見つかっても面倒な状況になるだろう。
「ねえ勇者様……ユリアは本当に魔王になってしまったんですか?」
「魔王かわからないけど僕よりも強いのは間違いないだろうから魔王の可能性は大きいよ」
あまりに驚いてしまい鑑定のスキルを使うこと事を忘れていた勇者だが相手の力量を把握することはできその時のユリアの力量がものすごかったことからこの結論に至ったようだ。
泣いていたアランは泣き止み勇者の事を向き覚悟の篭った声で言った。
「勇者様僕を仲間に入れて下さい。僕は強くなりたいそしてユリアに会わないと」
覚悟の篭った瞳を見て勇者もまたこの少年を連れていく覚悟を決めた。
「キリヤだ」
「えっ?」
「一緒に来るなら僕のことはキリヤと呼ぶんだ。君のことは僕が強くするだからついて来い!」
「はい! キリヤさん」
こうして勇者に妹と再会すべく覚悟を決めた少年が加入した。
◆◇◆
わたしの立つ崖からは荒野にを進行していく魔王軍が一望できた。
わたしが創造した
「さてこれからあの魔王軍を皆殺しにするよ、っとその前にみんなに名前を付けよっか。
「主よ承った今宵から我が名はアースト。この命主のために」
「「「くぅぅぅん」」」
「よし!いくよ」
その言葉とともにわたしは崖から飛び降りた。
これから始まる復讐の物語を思うとわたしは少し楽しくなった。そしてもう一つの目的をわたしは決めた。
この復讐の物語が終わったら……王と魔王を殺したら会いに行こう。
わたしにこの力をくれた能力神ミコトに神界にいくにはより強くならなければならないだろうけで魔王になって寿命が伸びたので時間はたっぷりあるゆっくり力をつけよう。
そして能力神ミコトに会って言おう「ありがとう」と……
少女の復讐の物語が今始まった。
新たなる魔王 みょんみゅん @myonmyun
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます