1章 日常
「おーい。カーレス?ねえってば!!起きてってばカーレスっ!!カーレスト・ロード!」
「ぅ…うぁ?…ルーネ?」
至福の一時を邪魔した親友、ルーネを俺は軽く睨んだ。
「なんだよ、ルーネ。人が気持ちよく寝てるってのに安眠だ!」
「せっかく人が親切に起こしてあげたのにそれはないんじゃない、カーレス?」
髪と同じくらい黒くて大きな目を吊り上げてルーネは怒った。
ルーネ。ルーネ・ビネガは俺の幼なじみで6歳のころに知り合ってもう5年もたった。性格はと言うと、天然おっとりと言うか…よくふわふわしてることが多い。けど、たまに勘が鋭かったり、すごく行動力があったりする不思議なやつ。
「じゃあもう知らないよ。そのまま寝てて次の野外授業に遅れてももう僕、知らないから!じゃあねー」
のんびりとそう言うとルーネは、教室を走って行ってしまった。
「えっ!?嘘だろ!?ちょっ、おい、ルーネ、待てって!!」
ルーネの言葉に慌てて立ち上がり、急いで準備をしてルーネの後を追いかけた。
やっとの思いでルーネに追いつき、自由に屋外を散策する時間になるとルーネを捕まえて俺を置いて行ったことの恨みを晴らすためプロレス技をかけた
「いただだっ!!カーレスっ!ぼーりょくはんたーい!!」
「俺を置いてこうとした罪は重いぞ、ルーネ!!」
「いたーい!!ギブ!ギブだってばー!!」「…お前ら何やってんだよ。」
「「っ!?」」
もう1人の親友、ジェネウス・ワームリーが呆れた顔をして俺達を見て眉を顰めた。
「な、何だよジェネウスかよ。驚かすなよな。」
「お前らいつになったらちゃんと授業に参加するんだよ…。」
眉をさらにぐっと眉間に寄せ、ジェネウスは俺達をたしなめた。
ジェネウスとはルーネよりも長く10年以上の付き合いになる。昔からしっかり者で俺やルーネの見張り役をしていることが多い。1度ジェネウスの忠告を無視して悪ふざけをし過ぎて足の骨を折る怪我をした時にはわざわざ何度も見舞いに来てその度に1時間以上も説教をして帰ったことがあった。こいつを怒らせるとほんとにヤバイ。
「ね、ねえ?もうすぐ授業終わるし、終わったらいつものとこ行かない?だめかな?」
ジェネウスの説教が長くなりそうな予感がしたルーネは、話を逸らして提案した。
「ああ、あそこか。そういえばココ最近行ってなかったな。」
「それじゃあ!」
「ああ、いいとも。」
鋭く睨んでいた銀色の瞳を緩めジェネウスはルーネに頷いてみせた。くそ、相変わらずカッコイイなこいつ《ジェネウス》の顔…女子が影でファンクラブをつくってるだけのことはある…。
「それじゃあ、隠れ家まで競争なっ!!」
俺はそう2人言うと隠れ家へと走り出した。「ビリのやつはアイス奢れよな!」と走りながら言う俺に文句を言い慌てて走りはじめたルーネとジェネウスの姿をちらりと見て笑った。
ルーネとジェネウスと一緒に遊んで、話して、時々ジェネウスに怒られて…それでも楽しくてしょうがない、それが俺やあいつらの知っている日常だった。
俺達の秘密基地までのかけっこの結果は、1番遅くに走り出したはずのジェネウスが1番で、ビリがまさかの俺だった。
「お前っ…走るの速かったっけ?」
「いや、俺多分こんなかで1番遅いと思うよ」
「じゃあなんでジェネウスが一番だったの?僕よりも早く着くって難しくない?」
「簡単さ、近道通ってきた」
「「はぁっ?」」
まさかの方法で思わず俺とルーネは目を見開いた。
「最初から近道を通ってはいけないなんてルールなかったろ?」
ジェネウスは俺達に意地悪そうな笑みを浮かべてみせた。
確かに言ってなかった…。完全にやられた。
落ち込む俺達をクスクスと笑ながらジェネウスが秘密基地の扉を開けた。
俺達の秘密基地は、今は使われて無い小さな倉庫だ。しかも正面の扉は鍵が締まってるから裏口を知っている俺達以外は絶対に入れなくなっている。
「…あんた、誰だ?」
扉を開けたジェネウスが倉庫の中を睨みつけて言った。
「ジェネウス、どうした?」
ジェネウスの視線の先を追うと俺達と同じぐらいの女の子が立っていた。
「貴方達ね、私の人生を変えてくれる人達は。」
女の子の声を聞いた瞬間激しい頭痛が起きた。一瞬目の前が暗くなり、目の前に見た事も無い動物が居た
「は?あんた、何言ってー」
「初めまして、私、スサナ。」
女の子は俺達に笑って見せた。ぱっと花が咲いたようなスゲー可愛いかった。
ホイール・オブ・フォーチュン 瑠璃羽 @ruriha
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