ふさわしい動物名

戸松有葉

ふさわしい動物名

 ある時ナマケモノのもとに、一羽の鳥がやってきて尋ねた。

「浮かない顔をして、どうしたんだい」

「実は俺、人間に不名誉な名前を付けられて」


 ナマケモノ。


「酷い! それならこっちも、人間に名前を付けてやろうじゃないか」

 案は色々と出た。

 うじ虫、寄生虫、ゴキブリ、猿、ゴリラ、ハイエナ……。

 しかしどれも、すでにいる動物たちに失礼だ。

 鳥は困り、

「馬鹿でどうだ」

「馬さんと鹿さんに失礼だよ」

「なら阿呆でいこう!」

 ようやく決まった。人間にふさわしい名前が。

 鳥は飛び立つと、人間に向かって力の限り叫んだ。


「アホウ! アホウ!」


 聞き届けた人間は、その鳥の名前を決めた。


(了)

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