お茶も飲み過ぎれば死ぬ

戸松有葉

お茶も飲み過ぎれば死ぬ

「健康的とされるお茶だって、大量に飲めばカフェインの致死量に達して死ぬ!」

 彼は力説していた。

 僕はその知識を持っていたので、何の驚きもない。

 でも彼が続けた言葉には、多少驚きを覚えた。

「だから俺が、お茶を飲み過ぎたら死ぬことを証明してみせる!」

「君のバカさ加減には同情を禁じ得ないけど、それで、そんな話を僕にして、どうしてほしいんだい」

「証人になってもらいたい。なにせ俺は死ぬのだから、自分では証言できない。あと、撮った動画をネットにアップしてもらわないと。俺は達成した時死んでいるんだから自分じゃできない」

「君のバカさ加減には同情を禁じ得ないけど、一応考えてはいるんだね。納得したよ、了承もした」

 そんな動画はたとえアップロードしてもすぐ消される。彼のバカさ加減には同情を禁じ得ないけど、これは言わないでおこう。

 さてそんなわけで、実験。

 カフェインの致死量までとなると、大量のお茶を短期間に飲まねばならない。箱で買った2リットルペットボトルのお茶を傍に置き、彼は挑戦を開始した。

 物凄い勢いだ。確かにこのくらいのペースでなければ致死量に達してくれないだろう。

 やがて彼は、死ぬことに成功した。死ぬ直前の彼の表情は、目標を達成した充実感に溢れていた……ことはなく苦しそうだったが、動画ではカットしておこう。

 とりあえず救急車を呼んで、僕も付き添いで病院まで行く。

 医師から告げられたのは、

「死因は低ナトリウム血症ですね。水中毒なのですが、一度に大量の水でも飲まれたのですか」

 彼のバカさ加減には同情を禁じ得ないけど、なんか尊敬した。


(了)

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