第3話:辿りついて異世界
ガヤ・・・ガヤ・・・ガヤ・・・ガヤ・・・
あたりからは楽しそうに仕事に励む
人達の賑やかな声が聞こえてくる。
此処は、迷宮街ルーテンタイト
ナイディア大陸北東に位置する街である。
この街は《
謎の遺跡の発見によって賑わい、一種の観光名所
として成り立っている。
もちろん迷宮には魔物の類い等が出るため
あくまでも迷宮から掘り出された財宝を目当てに
商人達が甘味に群がる蟻の如く、
この街に集まって来ているというのもある。
トッ…タタタタタンッ!
「これっ!うちの屋根を道の代わりにするなって
言っとるじゃろうが!?」
屋根伝いに伝わる音に並んでいる住宅の一つの
窓から口髭を蓄えた屈強な益荒男と称しても
いい様な妙齢の男性が顔を出しながら
屋根を走る少女へと若干キレながら怒鳴る。
「ごめーん!私急いでるからお説教は
また今度ねぇ!」
まぁ、そんな男性の事などお構い無しとばかりに
速度を緩めずに走り去る少女はとりあえず
舌をチロリと出しながら男性へと合掌の
ジェスチャーをするとある程度のところで
屋根から人が溢れる路地へと降り人混みへと
紛れていった。
「ッ~!?ったく、あ奴はぁぁぁ!」
男性は少女のお転婆さに頭を抱えながら
ため息をする、だが顔には何処と無く
やれやれといったような笑い顔であった。
《
皆さんがこの言葉を聞いて最初に連想させるのは
おそらくゲーム何かでよくあるあのダンジョン
だろう。
幾つもの階層から成り立ち、階ごとにモンスターが配置されており、階を増す事にその強さも比例して大きくなっていく。
まさにゲームの醍醐味と
言っても過言ではないだろう。
此処で出す《
間違ってはいない。
多少なりと、構造なんかは違えど
その形としては複数の部屋から成り立っており
魔物だって配置されている。
しかし、とある一点を除いてこの迷宮はゲーム
何かとは違う部分がある…
〝死んでも生き返れない〟
何を分かり切った馬鹿げた事をと言う人も
いるだろう、しかし重要なことである
ゲーム何かではセーブポイント等があり死ねば
そこからリスタートできるが現実そんな甘くない
死ねばそこが墓場となり遺体が回収されなければ
腐敗しアンデッドとなる、そんなDEAD OR ALIVE
なところなのだ。
「っえりゃぁぁぁぁっッッ!」
振り下ろされたダガーの刃を受け、
緑色の肌をした生物、ゴブリンが
その活動を停止させ崩れ落ちる。
ゴブリンを倒したのは年端もいかぬ少女であった
ダガーに付いた血を振り落とし一息を吐いた
少女、飴色の髪を結い上げ整った顔立ちは
活発な元気っ子と言ったところだろう。
「結構降りてきたけど、今何回層だろ?
出てくる魔物も増えて来てるしもしかして
ボス部屋だったりして!」
腰だめに装備したポーチから少女は
革水筒を出し水を飲みながら言う、
少女の言った通り迷宮には多数の階層が
存在しており現在ルーテンタイトの迷宮
《リブラ》は12層までが踏破されている、
そして話に出たボス部屋とは各階層の
一定の区切りに存在する強力な魔物が
配置されている部屋のことだ、名前の通り
強力な魔物…つまるところボスモンスターが
配置されている部屋のため自然とその名が
付いたらしい、
ボス部屋は次の階層の鍵となる場合もあれば
その迷宮の最終ラインであることもある。
さらにボス魔物は皆総じてとてもレアな
ドロップ品を落とすことがあり、その素材も
高く買取りがされるため訪れる冒険者達の
所謂、ネギ鴨であるのだ。
「あぁー…でも、もしボス部屋なら
知り合いの冒険者呼んで………」
少女はふと回れ右したままの状態から
回れ右を再度したつまるところ元の状態
である。
「ボス魔物……1人で倒せば丸儲け……
エッへへへ、大丈夫大丈夫危なくなったら
ひけばイイんだし。」
我欲ここに極まり、少女は高笑いしながら
一本道の先に見えている下階層に続くと
見える階段に向って行った。
「ッッ……痛てぇ………」
どこだ此処?
目が覚めると見知らぬ空間にいた
土の地面に石造りの壁、目に入った光景だ
確か連絡を済ました途端になんかフラッシュ
焚かれて不思議な浮遊感と共に意識が
遠のいたんだよな…
「怪我は…擦り傷だな。骨なんかも大丈夫
意識ははっきりしてるな」
とりあえず起きて状況を整理しよう
慌てることが一番の失策だ。
幸いウエストポーチは無事だな、
機械類は無いか、辺りには特に何も無し…と
あの場所は確かアーチの近くだったはずだ
考えられるのは地盤沈下による落下
だとすれば此処はあの場所の地下と言う
ことになる。
「良し、とりあえず調べよう。
じっとしててもなんにもなんねぇしな」
立ち上がると俺は壁沿いに
道を歩き始める、入り組んだ感じ
此処は迷路みたいなところだろう
歩きながら俺はそう感じる。
壁にマーカーで印を描きながら進む
道に迷わないための即席的な措置だ、
最近は機械やらに頼りっぱなしだったから
久しぶりで新鮮な感じだ。
「ん……階段…だよな…」
程なくしてすぐに階段は見つかった、
但し下階層行きだが。
「なるほど、俺が出てきたのは
自然崩落した穴みたいだな、本来は
おそらくこっち側が正規のルートか…」
出てきた穴道を見ながら階段とは
反対に伸びる道を見ながら俺はその道を…
「キャァァァァァ!!!!!」
引き返さなかった、いや引き返せなかった
なんで?こっちが聞きたい、なんで人の声が
すんだよ、いや問題はそこじゃない…
「っち、待ってろ!!」
聞こえたのは悲鳴、それも女性のだ
あの
たのか、しかし奴らの中に女性はいなかった
はずだが?、考えるのは後だ!
階段を駆け下りると再びの一本道
その先には光が見えた、俺は走ってその
光へと駆け込んだ。
そんな俺の目に入った光景は
俺の三倍はある大きさの熊の頭に人の体を
した化物に襲われている1人の少女だった。
転移した俺は異世界で財をなす! ムーンラビット @moonrabitto
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