1通目 母さんへ
僕はただそこに座っていた。
何もせずに、彼女の話だけを聴いていた。
溢れたのは慟哭だった。
母としての後悔、懺悔。
そして残された者の、言いようのない孤独。
なんとかしたいと思った。
彼女の心を少しでも軽く出来たなら。
罪の意識を取り払えたなら。
だけど。
「サリーさん、
僕には、誰かのことを救ったり、動かしたりすることはできません。
誰かの想いを届けることしかできないんです。
無能で申し訳ないです。すみません。
本当に、ごめんなさい。
でも、
その手紙を読んでいただけませんか。
僕が今できるあなたのためのことは、
僕が届けたジャックさんからの手紙を、
あなたに読んで頂くことなんです。
それしか、僕には出来ないんです」
しばらくの間、涙目の彼女はかたまったままだった。
やがて、彼女は少しだけ微笑んだ。
「あなたはやっぱり、ちょっとおかしな子なのね。」
言われた言葉の軽さにこちらが拍子抜けしてしまった。
「なんですか、こっちは真剣に考えてるんですよ?」
少しだけ頬を膨らませながら言うと彼女は声をたてて笑った。
「本当に面白い子ね、ごめんなさい。
あなたみたいに優しい子は初めてで、ついおかしくなってしまったの」
慈愛のこもった、その優しい眼差しで。
恋ではない。
でも、そのとき、僕は彼女のそのすべてに、心臓を鷲掴みにされたのだ。
君へ 白海千冬 @shiraumibook1313
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