第12話 スパイの話

ある宗教を信仰する若者の話である。

 しかしその宗教ときたら、世間では邪教だとか言われている。だが若者には関係無い。むしろ若者にとっては他の宗教こそが邪教であった。そんな皆の目を覚まさせるのが使命となっていたほどだ。

信者から神官やら神父なのか先生とか色々よくわからない呼び名で呼ばれている偉い人から、ある傭兵団のスパイするようにと言い渡された。若者は信者には珍しく、冒険の心得が多少あったのだ。

 若者が所属する宗教は、ドラゴンやすれいぷにる、ユニコーンや凄い幻獣とかなんかを従えていた。神の使いとか、若者の信仰する宗派のとは別の邪教から救ったドラゴンとか、なんか若者には経緯などわからないが、とにかく若者が所属する宗教には凄い見方が居たのだ。

そんな神の使いである幻獣とかは、なんか救いの為に行動を起こすはずであった。しかしそれをどっかの野蛮な傭兵どもが、危機として嬉々として殺してしまったのだそうだ。そんな傭兵団の実態を調べるべく、若者が選ばれたのだ。


きっと邪教からの手先だ、とかそんな感じだ。


 あっさりと入団を認められた若者である。しかし当たりをつけて調査を続行していたが、例の傭兵団はチームとしてそれほど脅威に映るような存在ではなかった。少なくとも、神の使いに仇なせられる程ではないのだ。小型なワイバーンに対処するので精一杯という印象に感じた。少なくとも、底は見えかける状態だ。ギルドの基準でランク付するならば、良くてBランク程度だった。

 団員も、団長ではなく副団長がまとめている。しかも、団員の半数はどうも協力的でない。


 四十名を越えた中規模チームでありながら、実際はそれ以下なのだ。協力的でない団員はろくに戦闘にも参加せず、内職のような事をしていたり、村で物々交換に発展した街で換金、時には大した村でもないのに何でも屋のような事をする。副団長や右腕的存在のある者は「誇りは無いのか」「そんな事をしていては見下される」と注意するが、協力的でない団員はそれを続けるのである。しかしそんな団は、不思議と金払いは安定していた。


 ある時若者達は、副団長とその右腕的存在から提案された。ある街、ある森に行きたいと。そこはエルフの里があるのだと。何故伝えたかというと、そのチームの行動方針は多数決によって全てが決定されるのだ。因みに、副団長の右腕たる女性の射手はエルフである。一緒に活動すれば、嫌でも気が付くのである。


 スパイとして活動中の若者は、その旨を報告する。エルフには、素晴らしい力があるというのは常識である。報告するや否や、その場所を詳しく知りたい、エルフを生け贄にするという話が出た。

 若者は何の疑問も抱くことなく、頷くのだ。すべては正義の為にと。

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助けた少女がヤンデレエルフになって追っかけてくるんだけど 18782代目変体マオウ @18782daimehentaimaou

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