妖界都市 <東京>

芳賀 匠

最初の妖怪

東京麹町一番町、英国大使館。ここが俺たちの運命の人と出会った。これがすべての始まりだった―――――――





この世界には三つの世界で成り立っている。

一つは我々人間や動物たちが住みつくごく普通の世界、『現界』。

二つは亡霊や妖(あやかし)など人間や動物とは異なる異様なものたちが住みつく普通とは違う世界、『妖界』。

三つは現界と妖界の間に存在する何も住みついていない無の世界、『結界』。

この三つの世界で日本は成り立っている。



ところ変わって、ここは東京―――。

眠らない街―――。

全てのものが宿る街―――。

東京はすべての人の欲望が渦巻く素晴らしき街だ。


だが、結界がこつ然と消滅し、全てが変わった。この東京も―――


異変に気付いたのは新宿歌舞伎町で起きたある事件であった。一時期は殺意が強い犯行と紹介されたのだが、大変奇妙で興味深い事件だ。そんな事件現場とはおかまいなしにネオン輝く新宿に一人歩く男。彼こそが妖怪を取り締まるガードマンだ。




彼の名は花岡周平―――――


警視庁妖怪課に務(つと)む27歳の青年男性。警視庁に入庁してわずか一年経たずで警部補のエリートに昇進。拳銃一丁で立てこもりや暴力団に麻薬密輸団体、違法風俗・営業など、数々の取締補佐をワイルドに行う一方、時には相談役にも優しくのってくれる。

そんな彼が出来立てホヤホヤの妖怪課に配属されたのはつい昨日の出来事だ。

最初はもちろん疑っていた。「妖怪がこの世にいるのですか? 私は信じませんよ。いるのならそこらへんの陰陽師とか悪霊払いに頼めばいいじゃないですか」と庁長に通告したが、庁長は「世の中はね、もはや警察任せみたいなもんだよ。陰陽師は存在するが、人数が少なく頼みきれないほど妖怪がうじゃうじゃいる。妖怪は確かに存在するのだ。そこで拳銃の腕前が評判高い君に任せることになったのさ」と言い返した。

「しかし庁長。どんな妖怪が出ようと、拳銃もほかの武器も通じませんよ」

「それは分かっているとも花岡君。しかし君は恐ろしいほどの好奇心旺盛で幾度ともなく難事件を解決したエキスパートだ。そういう面白いこともやってみたいとは思わないのかね」

「確かに面白そうだから引き受けることにしました。しかし、向こう側でもやるべきことがまだたくさん・・・・・・」

「・・・・・君は何しに警察官になろうと思ったのかね」

「そ、それは・・・・・・」


それは高校生の頃だった。小学生のころから気が弱く、いじめにあっていた。その時に助けてくれたのはいつも父親と母親の存在があったからだった。そんな花岡は一人暮らしをしている際中に悲劇は起きた。母親が何者かによって殺された。その敵(かたき)をとるために警察官になった。むしろそれしか浮かばなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

妖界都市 <東京> 芳賀 匠 @4d3xav

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ