最終話戦いの果てに・・・
バルザックとの最終決戦から1週間後ー。あれから俺達は王都のみんなの安否を確認した。石にされた人達は元に戻り、メグやアイラ、バン爺も無事だった。街が落ち着いたメグ、アイラ、バン爺の説明によりアリックの無実は証明された。そしておとぎ話は実は本当の話で、戦いは終わり、あとは残ったモンスターを討伐しきれば全て終わることも説明すると街の人達は黙りこんだ。一人がアリックと俺を讃えるために祭りを開こうと言うと、静寂から一転みんなが盛り上がった。祭りは1週間も続いた。そして祭り最終日の夜、それは起こった。
「祭りが終わったらおばあ様とワーちゃんを供養しないとね。」
「そうだな。・・・アリック、この剣の事なんだけど。」
「うん?」
「バルザックを刺したときこの剣にウロボロスが宿った気がしたんだ。もしかしたらこの剣が封印の役割をしてくれたのかもしれない。」
「・・・そうだったんだね。」
「元の場所に戻して誰も近付くことが出来ないようにした方がいいと思うんだ。」
「そうだね。その剣は僕が責任を持って守っていくよ。・・・それじゃあ戻しにいこうか。」
「うん。」
剣があった地下に行き元の場所に刺すことにした。
「・・・いくよ。」
「これで本当に終わりだね。」
「まだ村の復興やモンスター討伐が残ってるけどな。」
「そうだったね。」
俺達は笑いあった。そして剣を刺すーその瞬間目の前に扉が現れた。
「こ、これは!?」
「まさか・・・。」
目の前に現れた扉は俺がこの世界に来るきっかけになった扉に似ていた。禍々しいものではなく神々しく光っていた。
「・・・そう・・・か。帰ってしまうんだね?」
「ああ・・・。」
「君には手伝って欲しかったんだけど。残念だ。」
「悪いな。でも俺がいなくてもアリックなら大丈夫だろ?新しい王様になるんだしな。・・・みんなによろしくな。」
「うん。元気で。・・・さよならは言わないよ。」
「それでいいよ。またどこかで・・・。」
「うん・・・。」
俺は扉に手をかけると眩い光に包まれた。
気が付くとそこはいつもの丘のベンチだった。辺りは暗く、あの時から時間は経過しているようだった。自分の服装も制服になっていてどこにやったか分からなくなった竹刀もあった。ふと、館があった方を見ると館は跡形もなく館があった場所には木々が生い茂っていた。
「あ・・・れ?」
俺は少し混乱したがとりあえず家に帰ることにした。向こうに行ってから何日も経っている。行方不明の大騒ぎにでもなってるんじゃないかと思った。
「ただいま・・・。」
「おう、遅かったな。試合はどうだったんだ?」
「え・・・?あ、いや、勝ったよ。」
「そうか。明日決勝戦なんだっけか?疲れねぇように早めに寝ろよ。」
「う、うん・・・。あ、父さん、うちの近くの丘に古びた館って無かったっけ?」
「あん?館?そんなもんあったことねぇだろ。・・・ん?ところでお前、なんか少し顔付きが変わったか?」
「き、気のせいだろ。疲れてるからもう寝るよ。」
「飯はいいのか?」
「うん、いらない。おやすみ。」
俺は部屋に戻るとベッドに寝転んだ。
おかしい。俺が向こうに行ったときまだ夕方くらいだったはず。こっちに戻って来るとき服装は向こうの世界のものだったし竹刀もなかった。それなのに戻ってきたら服装は制服になっているし竹刀もあった。夜になっているということは時間は経過しているはず。それに子供の頃からあったはずの館は無かったことになっている。夢でも見ていたのか?
「明日試合が終わったらもう一度行ってみるか。」
翌日試合会場へ向かった。
「確か準決勝と決勝だったっけ。」
「ユーヤ!」
振り返るとメグ・・・いや、メグミとアイがいた。
「お、おう。」
「なにすっとんきょうな顔してんのよ。シャキッとしなさいよね!」
「が、頑張ってね。」
やっぱりそっくりだなと思った。
「俺が負けるわけ無いだろ。」
「どうだか。じゃあ応援席に行くね!」
「おう。」
そして準決勝が終わり決勝戦。相手はー
「如月ユウヤ!ついに借りを返すときが来た!」
ケンヤだ。ケンドールに似ているからいつもより余計に腹が立った。
「お前には絶対負けない。」
俺はケンヤを睨んだ。ケンヤは一瞬怯んだように見えた。今まで考えたことすら無かったが性格まで似ているんだ。なにか良からぬことを考えているかもしれない。俺はいつもの以上に警戒した。
そして決勝戦が始まった。
「はじめ!」
俺は間合いを取って様子をみることにした。するとケンヤがなにかを仕掛けてきそうな気配が分かった。するとケンヤが一瞬笑ったように見えた。ケンヤが一気に間合いを詰めてきた。いつもより深い。俺は一歩下がった。鍔迫り合いになるとケンヤが話しかけてきた。
「ふん!貴様も今日で終わりだ!」
「お前、足を狙ったな?」
俺の問いかけに驚いたケンヤは間合いを取った。だが、俺はそれを許さなかった。一気に間合いを詰め面を放った。
「めーーーーーん!!!」
「一本!!!」
勝負有りだ。ケンドールと戦っていなかったら、ケンドールと似ていなかったら勝てなかったかもしれない。卑劣なやつだが今回は感謝してやるか。
「ありがとうございました。」
「・・・ありがとう・・・ございました・・・!」
無事優勝を果たし表彰式も終えて帰ろうとするとメグミとアイがやって来た。
「お疲れ!やっぱりユウヤが優勝したね!」
「お、おめでとう!」
「ん・・・。ありがと。」
「なによ?やけに素直ね。気持ち悪い。」
「この・・・」
「如月ユウヤ!」
「ケンヤ・・・。」
「・・・今回はたまたまかわされたがいつか必ずどんな手を使ってでもお前に勝ってやる!」
「それでも俺は勝つけどな。」
ケンヤはふんっと言って去っていった。
「なによあいつ!」
「じゃあ俺は帰るよ。」
「あ、ちょ、ちょっと!」
俺はメグミの言葉を無視して自転車を走らせた。急いで確認したかった。館が本当に無くなったのか。あれは夢だったのか。
丘に着くとやはり館は無く木々しかなかった。
「あれは夢だったのか?」
館があった場所へ歩き、扉があったところを探した。
「確か・・・ここら辺だったような・・・。」
辺りを見回したがやはり跡形もなくなっていた。
「・・・。もう俺は必要ないんだろうな。」
俺はいつのまにか魅了されていたのかもしれない。最初は驚きと不安で一杯だったあの世界も、俺の存在意義を見つけられた気がしたから。嬉しいことも、怒ったことも、悲しいことも、楽しかったことも、全てがつまっていたあの世界へ。
俺はもう一度・・・。
fin.
メビウス 皇 @sume-ragi
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