消ゴム with鉛筆
【さて、われわれは今、人間の机の上にいる。そして、われわれの目の前にあるのが何だかわかるか?】
「えっと~、厚紙に包まれてて~、白い半円がのぞいてて~、所々に黒ずみが見えます!」
『消ゴムですね。この手のひらに納まる小人用の消ゴムと比べると、見上げるくらいの大きさです』
【うむ。これから、この消ゴムを探険しようと思うが、注意すべき事がある】
『なんですか?』
【この同じ空間に、人間がいる】
「え~~!?それ、危ないですよね!?第2回目の探険にして、最大のピンチです!」
【む。大丈夫だ。この消ゴムはほとんどが厚紙でくるまれている為、人間からは見えないと思われる。今なら人間もかがんでいるのか、この机の上からは姿が見えない】
「良かった~」
【では、フェムト隊員、この消ゴムの概要を】
『はい!この消ゴムは柔らかくて人間の間で消しやすいと評判のものです。子どもにも受験生にも大人気!ただし、大人になるにつれ、ボールペンが台頭し、使用頻度が激減していくかわいそうなやつです』
「あ~、わかります。結局最後まで使いきったことのない現実と、程よい柔らかさでムダに消したり、とがったもので刺したりしちゃうんですよね~」
【む。ピコ隊員は見た目は無害そうなのに、そんなことをしていたのか】
「やだな~、隊長、昔の話ですよ」
【一番若い者に昔だと言われても・・・】
『隊長。人間に見つかる前に始めてしまいたいです。登るならばどこから行きますか?厚紙の中に入ってしまうならば、下から登りますか?』
【うむ。そうしよう】
*
【材質的に、厚紙よりも消ゴムの方が掴まりやすいな。では、消ゴムの方を登ろう!ワシが先に行く。続いて来い】
『「はい!」』
【よいしょ】
『よいしょ』
「よいしょ」
*
グサッ
『「うわぁ」』
【ど、どうした!?】
「うわぁん(T□T)フェムト先輩が刺されました!」
【なにぃ!?大丈夫か!?】
『いえ、刺さったのは服なので、問題ありません。ただし、抜けません』
【消ゴムに掴まっていてよく見えないが、何が刺さった!?】
『先が黒くて尖ったものが、厚紙と私の服を貫通し、消ゴムに刺さりました。この黒さは恐らく鉛筆でしょう』
【ほ、無事なら良かった・・・】
「あ~、鉛筆で消ゴムを苛めるやつかぁ。ありましたねぇ。小さい時特有の残酷さ。きっとこの人間はまだ子どもですよ」
【イヤイヤ、鉛筆で消ゴムを刺すとか無いだろ。ワシは昔のピコ隊員が心配になってきた】
『あ、刺さった鉛筆が抜け、解放されました!厚紙に穴が開いてます』
【うむ、のぞいてみよう】
「ぼくもぼくも~」
『人間は大きすぎて、子どもか大人かは、はっきり見えませんね』
「比較対象がいないとわかりにくいですね~。あ、2発目来た」
グサッ
「今度は上でしたね」
【む。これは、もしかして、ここも危なくないか?】
『そうですね。また来るかもしれません。かといって、前進して登りきっても、厚紙がなくなるだけで、状況は変わりません』
【むむむ・・・万事休すか・・】
*
「わわわ!?消ゴムが上に向かって移動を始めました!!」
『人間が厚紙から消ゴムを取り出そうとしているようです。このままでは、われわれは厚紙から出てしまい、人間に見つかってしまいます!』
【厚紙の方に掴まるんだ!】
『「はい!」』
*
【2人とも、無事か!?】
『「は、はい」』
「消ゴム、抜けちゃって厚紙だけになっちゃいましたね」
【先程の穴から、外の様子をのぞいてみよう】
『何やら人間が鉛筆で消ゴムを突っついています』
「やはり、後ろ姿の様子から、子どものようですね。消ゴム虐めるとか、暇だな~」
【ピコ隊員には言われたくないと思う】
『あ、消ゴムを置きましたね。ラッキーなことにこっちを向いています』
*
・ ・
V
「あ、顔だ。鉛筆を刺して顔を書いていたんですね。昔、やったなぁ」
『隊長!右方向に見えるペン立てに、青い持ち手のハサミが入っています』
【む。見覚えがあるな】
「もしかして、前のハサミはあれかな?」
【次の探検もここから見える物かもしれないな】
*
【これにて、消ゴム(と鉛筆)の探検は終了!今回はフェムト隊員の服が犠牲になった】
『まぁ、支給されている隊服なので、新しいのがもらえるなら大丈夫です』
【うむ。上にかけ合っておこう】
『よろしくお願いします』
「今回は楽しいだけではないこともわかりましたが、スリルがあってちょっと楽しかったです」
【む、不謹慎だが、ヤル気があるのは良いことだ。次回も2人とも、よろしく頼む】
『「はい!」』
小さな世界~小人探険隊の大冒険 日捲 空 @himekurisora
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。小さな世界~小人探険隊の大冒険の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます