第10話 クエスト


「ということで、金を稼ぐぞ、クエストだクエスト」


ギルドカードを作成したキョーヤ達は、ギルドの端っこの机に向かい合う形で座っていた


ちなみにルークは馬小屋でお留守番である。


「?、僕は家もあるし、村の親衛隊っていう立派な職についてるんですけど」


「お前は仲間が困っている時に手を差し伸べられないのか薄情者か」


悲しい者を見る目でミールが見てくるがかまわず続ける


「とりあえず、ミールには俺と同じ気持ちになってもらうため、親衛隊を辞めて貰います」


「キョーヤ、バカなの?辞めるわけ無いでしょ!」


もはやそこら辺に落ちているゴミを見る目でミールが告げる


「ちぃっ」


そうか、しかし俺はこの苦境(フリーター)から脱却せねばならん

というか、金が・・・この世界の金がびた一文無いんだ


今晩の寝床どころか飯すらも確保出来ない状況・・・くぅ

ミールにタカるという最終手段もあるにはあるが・・・こんなお子さまにタカるなんて俺のプライドが許さん


「キョーヤ・・・」


凶夜が手で顔を覆い、唸っていると横からミールのなま暖かい声がかかる

完全に同情されている


「だ、大丈夫だよ!キョーヤだったら討伐クエストでもばーんってやってどーんであっという間に大金持ちだって!なんたってあのドラゴンを倒したくらいだもん」


「・・・そうか?」


「そうだよ!ほ、ほら・・・まぁドラゴンの影響で雑魚モンスターは軒並み逃げちゃったから討伐は結構大物しか残ってないけど・・・」


「うぁぁぁぁーーー」


「キョーヤ!」


大物ってあれだろ、さっきちらっと見えたけど即死魔法使ってくるバジリスクとか人を丸飲みにするクローンアリゲーターとか、全部ヤバめのやつばっかじゃねぇか!

もうあんなんはイヤなの!ドラゴンは勢いでなんとかなったけど、もうごめんなの!


「・・・ドラゴンがどうしたんです?」


「うおぁっ」


「ひゃっ!!」


不意に横から声をかけられキョドる2人

声の主は、さっきギルドカードと職業証明書を発行してくれた受付嬢ーーーフォリンだった

にこにこと、凶夜とミールを見下ろしている


「(お、おい・・・大丈夫か?今の聞かれてないよな??)」

「(う・・・たぶん・・・)」


「なんか楽しそうですね、ドラゴンがどうしたんですか?」


「(ドラゴン強調しちゃってるよ!これ絶対バレてるって)」

「(キョーヤ、こう言うときこそ冷静に、だよ!)」


2人は、目配せをして首だけフォリンの方へ向き合い


「いや、最近ここら辺にドラゴンが出るらしいってミールに聞いてさ、倒したらどれくらいの報酬になるのかなーって、ははっまぁ俺ごときじゃ相手にもならないだろうけどさ」

「そ、そそーなんだよ!凶夜の光の魔法で串刺しに出来たりしないし、ブレスだって防げないなって!そ、それから」


「おいぃぃいーーーもういいからお前は黙ってろ!」


がばぁっとミールの頭を机に押さえ込む凶夜


何言ってるのこの子!具体的すぎる且つ意味不明だろぉぉぉぉ!


ちらっとフォリンを見るが、にこにこしながら首を傾げている

視線は笑わず、凶夜を射抜くように見つめている


ほら、これ絶対疑っているよね?


少し、してフォリンはふーっとため息をつき


「まぁ、2人が何を隠していても気にしません、そこのモヤシがドラゴンを倒せるとも思いませんし・・・そもそも私が2人の所まで来たのはこれを渡す為ですしね」


「おい、いまモヤシって言ったよな?それは喧嘩を売ってるんだな?よし買おう、表出ろコラァ!」


「え?何のことですか?ちなみに、凶夜さんにお勧めなのは薬草集めですね。ほら草むしり好きそうですし」


「上等だ、消し炭にしてやろう」


ガタッと席を立ち上がる凶夜


「はい、これですね」


「へっ?」


突如フォリンから分厚い紙が渡される、紙と言うより布に近いかもしれない


「ステータス、体力・・・」


そこには現代社会では見慣れた単語が羅列していた

所謂、自身の能力値を表す記号だ


「あーこれってステータス表だよね、そういえば私も最近更新してなかったなぁ」


ミールがそれを見て思い出したように言った


「凶夜さん、今ミールさんも言っていましたが、それはステータス表と言って個人の能力値を表すマジックアイテムです。人はモンスターを倒したり、何か経験を積むとその表で言うところのレベルが上がっていきます、レベルが上がれば能力も上がっているはずです。クエストを受けるときの指標にしてくだいね。ちなみに表の更新は無料ですのでいつでもカウンターへ来てください。」


なるほど、危険なクエストは推奨レベルってのが書いてあった気がする

この表で自分が受けられるクエストを判断出来るって訳か、便利だなぁ

なんかちょくちょく現代よりも便利な気がする、こういう自分のパラメータが数値化されてれば、もうちょっと頑張れるんだが


「後でいくね!」


「ミールさん、お待ちしてます、凶夜さんはとりあえず薬草でも抜いてきたらどうですか」


「うるせぇ駄フォ」


「なっ・・・」


フォリンのこめかみにピキピキと血管が浮いているのがわかる

心なしが頬もひきつっているが


「と、ともかく・・・しっかりと渡しましたからね!」


フォリンが踵を返しカウンターへと戻っていく

途中、荒くれ者っぽいギルドのメンツにナンパ紛いに絡まれたりしていたようだが

軽くあしらっていた、慣れたものである


「ったく、なんなんだアイツは・・・」


「まぁ凶夜も悪いでしょ・・・」


「そういや、ふと思ったんだが、これって落としたらどうなるんだ?」


「うーん、内容は職業証明書と同じように血で本人かを判別してるから漏洩する事は無いだろうけど、落としたら再発行なんじゃない?無くしたことが無いからわかんないや」


説明が足りないな、やっぱ駄受付だわ

遠くではっくし、とクシャミをする声が聞こえた気がするがスルーする


「ねぇねぇ、それより、早く見てみなよ!」


普通に言っているがミールの目は明らかに期待に満ちていた

大方、ドラゴンを倒したキョーヤなんだから魔力がすっっごい事になってる、とか

レベルがすっごい高い、とか思ってるんだろう


だがな、さっきちらっと見えたが、魔力は1桁だったわ

この世界のパラメータがいくつが高いかはわからんが、流石に1桁は弱い部類だろうきっと・・・


とりあえず、レベルから行くか、一番上に書いてあるみたいだし・・・


ちらっ


レベル:2


ドラゴンを倒して2か・・・これはいよいよ、中身見たくないな・・・


もし、万が一だがパラメータがくっそ低かったとしよう

もはやスライムレベルとかそんなんだったりしたとするよ?

そうだったら、俺はミールが言うところの30人がかりでも倒せるかわからんレベルのドラゴンを1人で倒しても対して強くはなれないってことになる・・・ははは、まさかな


そもそも、この世界に来てからというもの禄な事が無いんだよなぁ・・・知り合いは少女Aに謎牛、駄受付だけだし、あとあれか団長がいたな・・・でもあれはモブの部類だしな

なんかもっとこう、異世界って夢に溢れてた気がするんだよ


突然の出会い!(謎牛に跳ねられて死にそうに)


強敵との戦い!(ドラゴンに襲われ死にそうに)


そして素敵な出会い!(クソビッチぽい受付)


うん、一通りこなしてるわ


鬱だ・・・


いや、でもまぁ闇金からは逃げ切ったし、全部が全部悪い分けでもないよな、うん

気を取り直して、ステータス表を広げていく


響 凶夜(ひびき きょうや)

レベル:2

体力:100

攻撃力:5

防御力:5

素早さ:100

知能:30

魔力:5

運:1


スキル:言語適応



「・・・うん」


俺はそっとステータス表をくるくると丸めポケットへ押し込んだ


「キョーヤ!どうだった?」


「体力が100で」


「え、100!!凄いよ!団長だって体力は30くらいしかないのに!」


「マジか!」


このミールの反応・・・俺を気遣って言っているんじゃない、本心から凄いと思っているように見える、ということは、もしかして俺の考え過ぎだったのか?さっき見たときは、つい「うわぁ俺のステータス低すぎっ」って思って無意識にステータス表を仕舞ってしまったが


「ねぇねぇ、他はどうだったの?スキルとか付いてた?」


「あ、ああ、スキルは無かったけどパラメータはこんな感じだったわ」


あえて言語適応の事は伏せる、だってこれ普通持ってなさそうだもんな

というかスロットで手に入れたスキルはなるべく明かさないほうがいい気がする、俺の現代知識上!


俺は自身のパラメータをミールへ教える


「・・・うん、凄いよ!凄い・・・す、素早さが100もあるし・・・うん」


「あ、はい」


これ駄目な奴だわ、めっちゃ目逸らしてるもん

ちなみにこの後、平均値を聞いたが大体15前後らしい

と言うことは俺は体力と素早さに極フリした格ゲーで言うところのスピードキャラってところか・・・うん、大体最終的に淘汰される系だわ、超微妙


これはマジで薬草拾いをするしかないかもしれん・・・

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スロットなんて運ゲーじゃねぇか! @SAIKAI

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