第9話 職業
さて、そうと決めたら早速やるか
この世界の言葉が分かるようにするだけだからな、ドラゴンの時みたいに攻撃じゃないし、ここで使っても大丈夫だろ
「スロット」
凶夜がそう唱えると、クリスタルの様なスロットマシーンが出現した
「ちょっ」
「キョーヤ!何やってるの!?」
受付嬢と、ミールが慌てた様に言い放つ
どうしたってんだ、受付嬢はまだしも、ミールは何回も見てるんだから驚く事でもないだろうに
「へ?何って、職業証明書がちょっと読めなかったから、魔法で翻訳しようかなと」
「あっ、そうかーなるほどね・・・じゃないよ!町中での魔法の発動は特別な許可を貰ってない限りは御法度なんだよ!」
とミール
「バカなの?こんなの常識よ」
受付嬢が続く
ミールはまぁいいとして、こいつに言われるとムカつくな
そりゃ、たしかに言われてみれば町中で魔法を好き勝手ぶっ放してたら周りの連中はたまったもんじゃないもんな
軽率だったか
「くっ、隠れてやるべきだった・・・」
「あんたねぇ・・・発動したのも攻撃系魔法じゃないみたいだし、今回は内緒にしておいてあげるから、はやくやっちゃいなよ」
「駄受付、案外話がわかるじゃないか」
うんうん、と頷く
「だーれが、駄よ!・・・まぁ、ギルドにいる連中も酔って寝てるか他人に興味ない奴らばっかだからね」
「なるほど、じゃお言葉に甘えて」
コインを3枚投入し、レバーを叩く
コインの残り枚数は34を示す
ドゥルルルル
ドラムが高速で回転し、絵柄がくるくると変わり
ぼん、ぼん、ぼん
凶夜はリズムよくボタンを叩き、絵柄を揃えていく
「言」のマークが3つ揃い、いつものようにマシンが無機質な音声で当たりを告げた
<ビッグボーナス!アクティブスキル、言語適応を獲得しました!!
「ん?今、スキルって言わなかったか?」
マシンはそれだけ告げると粉々に砕ける
毎回思うが普通に消える事は出来ないのだろうか、大丈夫だと分かってはいるんだが、砕け散った破片が目に入りそうで怖いんだよな
凶夜が辺りを見回すと、クエスト募集の張り紙やら、パーティ募集要項やら今まで子供の落書きだと思っていたモノが全て理解出来るようになっていた。
「キョーヤ、どう?」
「何今の?綺麗だったわねぇ」
ミールも受付嬢も呑気そうにしている、ふと思ったがマシンの音声はこいつらには聞こえてないのだろうか?
まぁいいか、それよりも職業だ
この結果によって俺のこの世界での生き方が変わると言っても過言ではない
無職とかだったらどうしよう・・・
はっ、俺は今何を!
無職とか盛大なフラグじゃねぇか・・・危ない危ない、さて頼むぞ・・・神なんて信じてはいないが、今だけは祈ってもいい
ちら
恐る恐る証明書を見てみる、うん
ふつーに読めるわ、あらためて凄いな俺の魔法、感動すら覚えるわ
何々・・・この証明書は現在の職業とこれからの可能性を示す物である
ここら辺は読み飛ばしていいな・・・
説明は読み飛ばし、職業らしき物が書かれている箇所を探していく
お、あったこれか?
えぇと、職業職業・・・フリーター(魔王)
いや、まぁ無職では無いけども・・・えぇ・・・
フリーターってなんだよ、まぁある意味ギルドに加入して日々のクエストで食っていく冒険者なんてのはフリーターみたいなもんだけど・・・
てか、この横の文字がくっそ気になる
どう見ても魔王って書いてあるよなぁ
でもメインがフリーターでオマケで魔王な感じだよな
うーむ
視線を下に移し、転職可能職業を確認する
転職可能職業
なし
・・・なしってお前、俺はフリーター以外に道は無いって事か?
ん?
更に下に※印があるのを発見する、えーとなになに・・・
※貴方は魔王候補でぇぇっす!村を襲ったり、街を襲ったりして人を殺めたり手込めにしたりしていろいろしながらぁ経験値を貯めてぇ、偉大なる次期魔王になりましょう!(笑)
ちなみにぃ、転職しに教会なんて行こうものなら即刻浄化されちゃうからき・お・つ・け・てねぇ
おい
※部分を二度見する
やっぱ見間違いじゃないよな、なにこれぇ
胃が痛い
作為的なモノを感じる、これ絶対俺をこの世界に引きずり込んだ奴いるよな
しかも、こんな職業に細工出来るって事はこの世界の上位的な存在・・・神とか女神とかそんなレベルの
うぉぉぉぉぉーーやっと借金から解放されて気ままな異世界ライフ?満喫しちゃったり出来るのかなぁとか考えてた時期が俺にもありました!
ふぁぁっく!
「キョ、キョーヤどうしたの!?」
「暴れるなら外行ってやってもらえますかー?発情してんならこっから真っ直ぐいくと情館ありますよ」
自分の職業証明書を見ていたかと思うと、いきなり地団駄を踏み出して頭を抱え始めたキョーヤを見て、若干引きながら声を掛ける
「ああ、どうもしないわ、ありがとうミール。駄受付テメーは最低だな、だが貴重な情報ありがとう!」
「どういたしまして」
「キョーヤ!」
「それはそれとして、ちょっと聞きたいんだが、魔王・・・っているのか?」
二人は目を見開き凶夜を見る
この反応は知っている、あれだ頭の可笑しい奴を見る目だ・・・
「「いるよ(ます)!」」
「へ?」
その返答はなんとなく予想はしていたものの、割と衝撃だった
やっぱいるのかよ、ファンタジーだし、あるいはと思っていたけど
そうなるといよいよ俺の職業は明かせないな、こんなん見つかったら殺されてしまう・・・
「魔王をいるの?なんて聞くのは子供くらいだよ」
「そうよねぇ、そんな事も知らないでギルドに来るとか、とんだゴミくずだわ」
「おい、言い過ぎだろ」
受付嬢は「はぁ」とため息を付き
「あのね、ギルドってのは冒険者を増やして街の治安や困り事を解決するのも仕事だけど、あくまで本命は魔王の討伐なのよ、要はクエストを発注して冒険者を鍛えて、魔王を倒せる者を生み出す事を目的としているの」
「ほー、そうなのか、まぁたしかに魔王ってのがいるなら、その方法は合理的だな」
俺が昔やってたゲームにもギルドはあったけど、そんな目的気にしてやってなかったからなぁ、大体仲間を捕まえる場所くらいの認識だったし
てきとーに強い仲間が生成されるまでチームに加入させて解雇を繰り返したもんだ
仲間・・・か、考えてみればミールしかいないんだよなぁ、しかもミールはこの街の警備の人間だ、俺が村を離れる時に着いてきてくれる保証は無い、となるとやっぱり仲間は必要だよな
たしか、デカいクエストとかになると人数条件があったりして、そもそも受けることも出来なかったりするし
「なぁ、駄受付」
「その駄ってのはやめなさいよ、一応私にもフォリン・スリースって名前があるわけなのだが」
「わかったよ、駄フォ」
「駄を付けて略なし!」
「仲間ってギルドで募集出来たりするのか?」
「無視ですか、そーですか、まぁいいけど。そうね、募集する事は可能ね、そこに掲示板があるでしょ、自分の職業とか募集条件とかを書いておけば冒険者が面接にくるわ」
「なるほど」
職業を書かなくていいなら、何とかなるかもな
「そういえば、キョーヤって職業何だったの?」
「あ、それ私も気になるかも」
「村人」
「「え?」」
「村人」
「さすがに、魔法使っておいて村人はないんじゃ・・・」
「村人」
「駄目だよ、多分何を言っても通じないよこれ」
ミールが可哀想なモノを見る目で俺を見ているが
断じて本当の職業を言うわけにはいかない!主に身の保身的な意味で!
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