第19話 龍退治
先ずは、四肢から攻めるしか無いな。
俺は大地を蹴飛ばして、オニキスの腹の下に飛び込んだ。
オニキスの腹が柔らかいのをちょっとだけ期待したが、あいにく亀の甲みたいになっていて、下からの突き上げでは割れそうにもなかった。
ちょっと見ただけで腹は諦めて、当初の狙い通り足から攻める。
足の膝裏。右前足の後ろに回り込んで思いっきりブン殴った。足を折り曲げる為にウロコも小さく、皮も柔らかだったし、タイミングが良かったのか、一発で関節を壊せたようだ。
しかし、相手は四つ脚なので、足一本ぐらいでは倒れない。器用に体を折り畳むと噛みついてきた。
「うぉ!っとアブねー!」
咄嗟に側転で身をかわすと、今度は尻尾で打ち払ってくるので、ジャンプする。何とか体勢を立て直すと、オニキスとの距離が空いてしまった。せっかく懐に入ったのにな。
しかも、向こうも俺を強敵と認識したのか、油断が消えて隙が無い。幸い足のダメージはデカそうで、右前足は使わずに動いている。骨を砕いた手ごたえはなかったが、変な方向にブラブラさせているので、関節が外れたのかも。
オニキスは馬のシルバーにも気を取られているらしく、俺に突っ込んで来る事は無かった。しばらく、睨み合いになる。
さっき、腹の下に入って前足を殴ったのは失敗だったな。あのまま後ろに駆け抜けて背中によじ登っちゃえばよかった。
オニキスの背中にはトゲが生えていて、アレを伝えば首筋から後頭部まで行けそうなんだが。
睨み合いの気迫から、アッチが引く気が無いのも伝わって来る。事実、俺が距離を取ろうとしたら、向こうは前に進もうとする。逃す気は無いな。やるかやられるかだ。
体力勝負も向こうが有利だし、何とか隙を突いて接近して一気に勝負をつけるしかない。こうなったら、奥の手だ!
「あ!」
俺が大きく左を向くと、オニキスも釣られて横を向いた。今だ!
右前に転がって、さらに視線を切ると一気に距離を詰め、首筋に取り付いた!くっ付いてしまえば、こちらのモノ。上手く気配を感じながらケツに回り込んで背中に取り付けたぜ!
オニキスも体をよじって抵抗するが、前足の傷が影響しているのか、俺を振りほどすほどでは無かった。
「ん、ぎぃ!」
尻尾で打ち据えられたが、背中は届きにくいのか、耐えられない程では無かった。少しずつ背中のトゲを伝い、何とか首筋まで辿りついたぜ。しっかりと両足で首に跨ると、オニキスの頭を思い切りブン殴り始めた。
勇者ですが、非破壊オブジェクト扱いで召喚されました。 @minakagami
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