第18話 急行

村へと先導するバルガスに声をかける。


「いいか、村に着いたらお前は邪魔になる奴を連れて逃げろよ!」

「いや!オレたちは……」

「お前ら、全員弱っちいから邪魔になるんだよ!」


人狼に向かって弱いと言える者もそうい無いだろう。だが、身をもって俺の強さを味わったバルガスは逆らわない。


「わかりやした!おい!ブロッホ!お前らは水場に先回りして逃げ場を確保しておけ!」


元々のボスからの命令だ。素早く一隊が離れて行く。


そちらを見る事もなくひたすらまっすぐに駆けるバルガス。

俺を乗せたシルバーもまっすぐにバルガスを追いかける。


「あの丘を越えれば、村に着きまさぁ!」


バルガスが叫んだ、その先に黒い影が見えた。


「!もう、あんな所に!」


俺たちが向かっている丘の向こう側に「オニキス」がいた。

いや、さらに向こうだ村がある谷を挟んで反対側にある丘の上にいたのだ。ヤツは自分を見せ付けるようにゆっくりと丘を降りて来る。


自分の強さを知っているのだ。


そこが、付け目だ。


「行くぞ!シルバー!」


シルバーが、さらに加速する。オオカミ達を置き去りにして一騎だけで先行する。正直な所、この時点では、俺は黒龍を倒す方法を思い付いていなかった。ただ、俺自身のタフさでオオカミ達を逃す事だけしか頭になかったのだ。


黒龍は空を飛べないって事だけが俺の頭にあった。だから逃がす事は無いって事だけは確信していた。後は100日でも200日でも殴り合いに付き合ってもらうだけだ!


シルバーは丘を駆け下りるとそのまま村を突っ切って向こう側に飛び出した。


ブヒヒーン!シルバーはオニキスを挑発するようにいななくと棹立ちになった。


「よーし、シルバー。よくやった。後は俺に任せておけ」


シルバーは、このまま突っ掛かって行きそうな勢いだったが、俺が声をかけると大人しく降ろしてくれた。


いかにもシブシブ譲ってやると言いたげで、こんな状況に関わらず、俺はクスリと笑ってしまった。


そんなやり取りをしていても、オニキスは余裕見せ付けるかのごとく泰然たいぜんとしていた。


「さて、待たせたな。トカゲヤロウ!」


ドラゴン退治の始まりだ!

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