第17話 黒龍
いっその事、もう一回ぶん殴って逃げ出そうかと思い始めた所で若い狼が何頭かこちらに向かって走ってきた。
「みんなー!大変だー!村に『オニキス』が現れた!」
狼達はその言葉を聞くと騒然となった。
若い狼達が現れた方向へと走り去る者もいれば、その場でうずくまる者などもいる。
何だかよく分からないが、どうやら俺を相手にしているどころではない事態になったらしい。
そんじゃあ、今のうちに先に進ませてもらうか。と、思ったんだが、バルガスのヤツが俺の前に回り込み、ねっ転ぶと哀願し始めた。
「頼める義理じゃ無いのは分かっている!分かっているが、オレたちじゃ力が足りねぇ!」
まあ、真摯に頼み込んでいるのは分かるんだが、いい年したおっさんが仰向けで手足を縮めるポーズをされてもなぁ。
まだ、狼型の方が誠意が伝わると思うぞ。
「オレを人買いに売っぱらってくれてもいい!村を救ってくれ!」
シルバーを呼んで、鞍を整える。
「お、オレも売ってくれ!」
「オレも何でもする!」
さっきまで、俺を認めないとか騒いでいたやつらも、バルガスに感化されたのか、人型になって転がりだす。周りを取り囲んでいた狼達も腹を見せている。
バルガスが声を絞りだす。
「せめて、ガキ達だけでも救い出しちゃあくれないか?頼むよ!ボス!ドラゴン相手じゃ、助からねえ!」
俺はシルバーに跨ると、バルガスに声を掛けた。
「いつまで、寝っ転がっているんだ。バルガス?とっとと村まで案内しな!」
「「「「ボス!」」」」
この世界でも、ドラゴンは一種の天災だ。そもそもこの星を作る時に使役された神龍の末裔だと言われている。
今でも世界のどこかに龍たちの国があるらしいが、その国から追い出され、力を失い、獣のようになった者たちがドラゴンと呼ばれている。
真っ黒でオニキスと呼ばれる種族は、硬い鱗が特徴だ。知性は失われ、魔法も使えないが、こちらの魔法も効かない。
魔法使いにとっては悪夢。戦士たちにしても、硬い鱗が難問となる存在だ。
俺にしても駆け付けてすぐに倒す自信は無い。倒される心配は無いし、肉体的には疲れ知らずってのが、俺の有利な所だろう。
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