第16話 たった一つの俺のやり方

うん、殴った。


人狼は、俺が人間だと油断していたのか、受け止めてみせるつもりだったのか、まともに脳天にこぶしを受けた。


「「「え?」」」


なんだ、周りの大型狼たちも人狼だったのか。ボスが一撃でノビてしまったので、ビックリしている。

まあ、変わった形だが、これも一種の関所破りだろう。


「親方〜!」


ボスを介抱している間に通ってしまおうと、シルバーたちを手招きしてると、後ろから声が掛かった。


「コラ!ニンゲン!また俺たちを追い回す気か!」

「ん?いやいや、俺はここを通るだけだぞ?」

「ニンゲンはいつもそんな事を言うんだ!そしてその後で沢山の兵隊を送り込んでくる!」


あー。そういう、テンプレかー。


「じゃあ、付いてきて見張ってるか?」

「ニンゲンは、そうやって騙して連れって、奴隷にするんだ!」


唸り声を上げて威嚇する大きな狼。普通の狼たちも威嚇してきたぞ。シッポが垂れているけどな。んー、面倒くさいな。


俺と狼たちが睨み合っていると後ろから声が掛かった。


「ま、まて……」


人狼のボスが意識を取り戻したらしい。


「親方!」


若い人狼達が、ボスの周りに駆け付ける。

ボスは若手の助けを受けて立ち上げると、人の姿に変身した。


「俺はあんたに負けた。俺の命で他のヤツらは勘弁してやってくれ」


ああ、もう面倒な感じ!これ、何とかしないと、ずっと付きまとわれるフラグだぞ。こうなったら………


「よし、俺はお前に勝った!じゃあ、この群れのボスは俺だ。文句のある奴は、前に出てこい!順番にぶっ飛ばしてやる!」


こう言えば、少なくとも、一斉に攻めて来られることは無いだろうと思ったが、行列が出来るとは思わなかったよ。


「まあ、こいつらもボスの強さを確かめたいんでさ」


うん、君も身替りが早いね?


「あっしのことは、バルカスとお呼び下せえ」


まあ、これも流れだ。俺も空気を読める日本人な所を見せてやろう。


「ようし、それじゃあ、バルカス。お前、あの行列の中から俺の拳に耐えられるヤツだけを通せ」

「!わっかりましたぜ!おい、お前ら、あの一撃は半端じゃあねえからな。ジークは列から外れろ。ケミー、お前もだ。……」


バルカスはなにが嬉しいのか、尻尾をぶんぶん振り回しながら行列の整理を始めた。


バルカスが通した一人目は、さっき声をかけて来たヤツだった。


「俺は、まだ認めて無いからな!ニンゲン!覚悟しろ!」


狼形態のまま、飛び掛かって来たので、そのままブン殴ってやった。


「ギャイーーン!」


悲鳴を上げて飛んで行った。

それからは、次々に挑んで来る狼を殴り飛ばしてった。

ポンポン飛んでった狼達はだが、バルカスや他の狼達が受け止め、大怪我を負ったヤツはいなかった。


「どうだ?まだ文句のあるヤツはいるか?」


あらかた殴り倒して列に並んでいた狼がいなくなると、俺は改めて聞いてやった。


「お前が強いのは、分かった!だが、ボスに相応しいかは判らない!」


いや、誰がお前らのボスになると言ったんだ?

そう言いたがったが、なんか狼達で盛り上がっていて、俺の話を聞いてくれない。何だかなー。




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