第15話 人外魔鏡へ

魔境まきょうとは言え、今は、ほそぼそとでも人が行き交う蛮地ばんち。比較的安全な場所をつなぎ、細い道が出来ている。あくまでも比較的って話で、安心できるような道じゃないけどな。


いくつかの関所を押し通って行くと、だんだんと道が細くなり、森の中に入って行く。


三頭の馬を乗り継いで行くとは言え、馬も休息が必要だから、無理はさせられない。賢い馬たちでよく言う事を聞いてくれるしな。軍馬として調教された馬なので、狼の群れにもビビらない。お陰で俺が気が付いた時には、狼に囲まれていたんだ。


俺たちを囲んだ狼は、10や20では効かない。見えているだけでも50頭はいるんじゃないかな?狼って、こんなに群れるんだっけ?


「よーし、シルバー。お前たちはそこで固まっていろよ。はぐれたら喰われちゃうぞ」


分かっていると返事するようないななきを聞き、馬たちから離れて狼の群れに向かう。他よりも大き目の狼たちが集まっているその奥に一際大きな狼がいる。たぶん、こいつがボスだと思うんだが……


狼たちを刺激しない程度のゆっくした速度で歩いて行く。狼たちも俺の強さが伝わるのか、遠巻きにしながら、じりじりと後退していく。


と、


「そこで、止まれ」


狼から声が掛かる。


「やっぱり、人狼じんろうだったか」

「ココは俺たちの国だ、通りたければあの馬を置いていけ」

「ふん、国だって言うなら、関所破りの噂も届いているだろう。ココも押し通らせてもらうぞ!」

「関所破りは皇国の姫と一緒のはず、こんな処に一人でいる訳ないだろう?」

「姫とは別れてきたのさ。ちゃんと安全な場所まで送って行ったからな」

「なるほど、それで一人きりなのか。他に誰もいないなら、さらに好都合。その服も、置いていってもらおうかな?」

「おいおい、なんだ?人狼ってのは、鈍いのか?狼のほうが誰を警戒すべきなのか、よく分かっているじゃ無いか」

「ふん!こいつらには手に余っても、オレはこいつらとは違うぜ!」


うーん。お付きの狼たちが困っている。自信過剰は身を滅ぼすぞ?



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