13.二人目《サクリファイス》

 お前は私に逆らわず。

 お前は全てを差し出せ。

 その身は一つに移される。


”サクリファイス”


- - - - -


「桐野五十鈴17歳。3月28日、母親が部屋に入ると居なくなっており、それ以降行方不明…なぁ。どうせ家出だろ。俺らが出張る必要ないだろうに。…フ――。」

「ちょ!澤田さん!現場でタバコはダメですって!!」

「うっせ、増江。おっさんのひそかな楽しみ奪うな。」


 俺は、澤田 浩三。

 正義感が有るわけでもねぇし、特に夢だったって訳でもねぇけど、何か警察とかしてる。

 警察っつっても、この辺は特に事件何てねぇし有ってもその辺の爺さん婆さんが徘徊してるって位なもんよ。

 まあ、楽ってほどでもねぇけどそんなに苦労せず給金がもらえて、辞める気は無いけどな。


「もー、澤田さん。一応こんな大事そうそう無いんですし、シャキッとしてくださいよ…。」

「どうせ家出とかそんなんだろ。」

「特にそう言うそぶりを見せたり、家族と仲が悪かったりってことは無いそうですよ。」

「女子高生だろ、そんなの親が気持ちを分かってやれるはずは無いだろ。」


 そもそも、その現場には特に荒らされた形跡や、争った形跡が見つからないってことで、誘拐の可能性は薄いってことだろ。

 そんなもん、家出以外に何が有るってんだよ。


「あ、この部屋ですね。」

「ほいほい、おー女子高生の部屋って感じだな。」

「澤田さん、それ犯罪者っぽいっすよ。」

「うっせ。んなこと言ったら、鑑識の連中やら増江やらおっさんが集団で女子高生の部屋に入って、完全にアウトだろ。」

「それもそっすね。」


 にしても、なんかファンシーなアイテムが多いなー。

 女子高生ってこんなもんなのか。

 ん?

 食べかけのお菓子、名前は知らん。

 やりかけのゲーム。

 うーん確かに家出っぽくもねぇなぁ。


「このゲームもそん時のまんまか?」

「もちろんですよ。それにしても凄くやりこんでますね。」

「なんだ、増江。これ知ってんのか?」

「やったことは無いっすけど、ミリオンスペルって数年前に出されたゲームだったはずですよ。」


 ふーん、確かに画面の端にレベル999とか書いてあるな。

 数年前って、ずっとやってんのか?

 いや、流石にねぇか。

 ん?


「これって、名前選べない奴なのか?」

「あー、確か自由に設定できるはずですよ。」

「ふーん。アグリアねぇ。友達とかは?」

「嫌われてるって訳では無いみたいですけど、特に付き合いの深い友人は居ないみたいですね。」

「やっぱ家出だろ。」

「澤田さん!」


 分かってるって。

 ほんと口うるせぇな、増江のやつ。

 この、偉そうなジジイかババアか分からんキャラのセリフで止まってんのも気になるな。


「『全ての魔法を覚えんとする者よ、その先に何を見る?』だってよ。お前だったらどうよ。」

「はぁ。そっすねぇ。やっぱ裏ボス討伐っすかね?居るかどうかも分からないっすけど。って真面目にやってくださいよ!」

「わあってるって。真面目にやりすぎると疲れるからな、おっさんは体力あんまりねぇのよ。」

「はぁ。まあ、澤田さんのそれは今に始まったことじゃないっすね。」


 そう言うこった。

 こいつとも付き合い長いしな。


「そう言うこった。はあ、帰って家族サービスしてぇなぁー。」

「家族って、結婚して無いじゃないですか。」

「ははは、帰ったらアサヒさんとエビスさんが俺を待ってんの。」


 枯れてるとか思ったやつ。

 その通りだな。


「てか、お前の方もかみさんが待ってんじゃねぇの?」

「そっすね。娘も大分大きくなりましたしね。」

「早く帰りたくなんねぇの?」

「そりゃ帰りたいっすけど、仕事は仕事っすよ。」

「はぁつまんねぇなぁ。」


 増江はほんと真面目だよ。

 そのうち俺がこいつに頭下げる日が来るのかもな。

 まあ、それもまた一興か。


「澤田さんは結婚しないんすか?」

「あん?真面目にやるんじゃ無かったのか?」

「良いじゃないっすか。真面目すぎると疲れるんすよ。」


 まったく、言うように成ったなこいつも。


「しねぇよ。めんどくせぇ。」


 結婚したら何かと金使うし、タバコはやめろとか、酒は控えろとか言われるんだろ。

 耐えれねぇって。


「はは、だったら澤田さんは魔法を覚えて結婚ですかね。」

「なんだよそれ。」

「あのゲームの質問ですよ。」

「ああ、だから結婚する気はねぇっ…て…。」

「あれ、澤田さん?」


 なんだ?

 意識が遠のいてる?

 過労か?

 適当に仕事こなしてたはずなんだけどな…。


「ちょ!澤田さん!澤田さん!!」


- - - - -


「はっ!」


 増江は…居ねぇか。

 てかここ何処よ。

 あれか、天国か何か?

 でっかい城が見えるし、後ろには何かヘンテコな塔みたいなのが有るし、どうなってんだ?


「よっと。」


 あれ?

 背低くないか?

 ってか、声も高くなってねぇか?

 胸に違和感が…。


「あれ、服が…女物?」


 え?

 …え?

 ………え?


「おれ、女かよ。」

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ゲーム魔法が使えるよ? @samiyusann

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