#TRPGアベンジャーズ

天戸mak

第1話

カッチコッチコッチカッチポーン,ポーン


2016/01/01/01:05

……

………

…………

……………

………………

「目標は?」ザザッ


「すまん、見失った。」ザザッ


「何やってんのよ新年早々。」ザザッ


「仕方ないだろ。元はと言えばお前がパフェなんか食いたいって言い出すから。」ザザッ


「そっ…!だってしょうがないじゃない!!この一週間、台風で外出れなかったのよ!?」ガガピーッ


「待て、見つけた。」ザザッ


「場所は?」ザザッ


「元嵯峨崎総合病院。何か探してるみたいだ。中に入っていくのが見える。」ザザッ


「3分で行く。」ザザッ


「了解、待機する。」ザザッ

………………

……………

…………

………

……


今宵、月は赤く染まる。


2016/01/01/00:00 嵯峨崎東山寺


除夜の鐘が鳴る。


新年を告げる音。


探索者「(あけましておめでとうございます。)」


俯きながら、心で思う。


探索者「(本当は、皆で年を越せたはずなのにな。)」


探索者「(あれから三ヶ月。この世界には、本当に怪物って存在がいることを知った。)」


探索者「(警察は何も信じてくれなかったけど、俺だけ生き残れたことがせめてもの救いとかなんとか言ってたな。)」テクテク


探索者「(友達の死。代わりに手に入れたのは、恐怖と、薄汚い本と、失語症。)」テクテク


探索者「(俺、なんで生きてんだろう。)」テクテク


~~バカッ!そっちじゃない!こっちだ!こっちに逃げないと………~~


~~う、うわぁぁぁあ!助けt……~~


~きゃぁぁぁあ!嫌!来ないで!来ないでぇ!~~


~~~~~~~~~


テケリ・リ


探索者「」ゾクッ


探索者「(クソッ………)………………?」


探索者「(あ、れ。どこだここ。不味いな。すぐに周りが見えなくなるこの癖直さないと…。)」


探索者「(嵯峨崎総合病院、か。そういえば、ここもあんまりいい噂聞かなかったな。というかこの街が全体的に危ないような気がする。)」


女性「………」


探索者「(...?エントランスに女の人がいる。白いワンピースに...黒い長い髪...。まんま幽霊だなあれ。こっち見てるし。)」


女性「」スゥッ


探索者「(消えた………どうするか……。)」チラッ


探索者「(今は……12時半か...。見ちゃったもんはしょうがない。行ってみよう。このまま呪い殺されるのもアリだな。)」


エントランス入口のガラスは、イタズラされたのだろう。そこかしこが割れている。


お陰で、容易に中に入ることができた。


自然な動きでスマートフォンを取りだし、ライトをオンにする。


2.3m先までしか届かない光だが、無いと有るとは全く違う事を、探索者は知っていた。


注意深く視線を走らせる。壁、床、天井、ガン予防のポスター、待合室のソファー、植木鉢。


特に目ぼしい物は無く、廊下を進む。いつしかその足は、屋上へと向かっていた。


探索者「(しかし、酷く荒らされてるな、取り壊すなら早くしたらいいのに。)」


屋上までの道すがら、探索者は思う。


階段を上り、屋上へと続く扉を開ける。


風の切る音と共に、月に照らされた女性の姿を目にとらえた。


探索者「(いたよ……。)」


ゆっくり近付き、声をかけようとして気付く。


探索者「(俺、喋れないじゃん。)」



まさか幽霊に筆談?可笑しな話だ。ありえない。


女性「あの……」


いや?そもそも幽霊かどうかも怪しい。こんなに血色が良くて、美人……の幽霊がいるだろうか。


女性「ねぇ………」


よく見れば胸も大きいじゃないか。美人だ。サラサラの黒髪。胸も大きい。


女性「ちょっとどこ見てるのアンタいい加減にしなさいよ。」


探索者「」ビクッ


女性「コホンッ。初めまして。探索者さん。」


探索者「……」


女性「あぁ、そうだったわ。貴方は今、言葉を失っているのよね?」


探索者「………(なんでそれを。)」


女性「一度しか言わないから、しっかり聞いて。」


逢魔人「私は逢魔人。あなたの世界と似ているけど、少し違う世界から来た、貴方と似た役割の人間。」


探索者「(俺と似た……役割……)」


逢魔人「これから先、貴方の日常は崩れ去る。貴方はこの世界で役割を与えられたから。」


探索者「………ッ!(何なんだ、その役割って!)」


逢魔人「………私の、秘密を暴ける人を、捜して。」


逢魔人「お願いね……」スゥッ


探索者「(!!!消えた………。)」


探索者「何だったんだ……」


探索者「!?声が!」


ガッ!!!シャァァァァァアアンンン…………!!!


探索者「!?な、屋上の扉が………ふっ飛んだ………?」


探索者「次から次へ、何だっていうんだ!」


視界に集中する。見えるものはなんだ。貯水タンク、支柱がずいぶん錆び付いてる。危ないな。ちがうそこじゃない!!、なんだあの丸いの。蓋か?、はしご、濡れたコンクリ、吹き飛ばされた扉、落下防止の柵、吹き飛ばされた扉?


扉を注視する。扉の、内側が大きく凹んでいる。


ーーー閃くーーー


大きなもので、内側から扉を叩いて吹き飛ばした………!のか……?いや、そんな簡単に扉は吹き飛ばないはず………


ジャリッ……


探索者「(今、何か聞こえた………?いや!たしかに聞こえた!)」


探索者「(何かが、透明な何かがあの扉からこっちに出てきた………ッ!!!)」


ジャリッ………


探索者「(じっとしていれば平気なのか。それとも)」


瞬間、5m程前方の地面が抉れる。


探索者「!?」


ドッゴォッ


探索者「ガハァッ!」


強烈な力で大きく吹き飛ばされる探索者。


探索者「な…ゲボッ…今……何………!?!?!????」


先ほどまで自分が立っていた場所を見ると、巨大な熊を思わせる体に、どうみても牛の頭、そして背には八本のムカデの足のような刺。そんな化け物が、獲物を見つけた喜びに打ち震え、よだれを垂らしていた。


探索者「あっ!!あっ!!あぁーーーーッ!!」


探索者「もうだめだお仕舞いだ………ここで死ぬんだもう死ぬんだ今すぐ死ぬ来るぞほら今にも俺の体は空に上っていくんださようなら地球さようなら世界さようなら」


地面に丸くなり、ぶつぶつと呟き始める。


牛頭もとい、モノビーストは、ゆっくりと探索者に近づいていく。


モノビースト「ン"モ"ォ"ォ"ォオ"!!!」ドスッドスッ


探索者「マジで死んだ。」


ギチチッ


突如、動きを止めるモノビースト。


放心状態の探索者。


モノビーストの体には、何本もの鎖が巻き付けられている。


「おいおい……ッ!!おとなしく………しろっての!!」


その鎖を、モノビーストの後方で引っ張る男。


モノビースト「ン"モ"ォ"ォ"ォオ"!!!」ギチギチギチギチ


「おいっ!そこのお前!はやくどけ!おいっ!」


探索者「あ…………あぁ………。」


「ダメかっ!おいまだか!?これ以上は抑えられねぇ!!」


『まだよ!!狙撃地点まで移動できてないの!』ザザッ


モノビースト「ン"モ"ォ"ォ"ォオ"!!!」ギチギチッ


モノビーストの背中の刺が、男を襲う。


男「クソッタレ………ッ!!」


ザクッ!!!ザシュッ!!!!ズダンッ!!!


三本の刺に、腹、肩、そして右足を貫かれ、そのまま中空に掲げられる。


男「グッ……!あぁ…まったく……一気に…三つも……持ってかれたな畜生………!だがよ………」


男「この鎖だけはッ!」


漢「死んでも離さねぇぞ!!!!」


探索者「ハッ!!!?」


男「ちくしょう!ぐぁぁぁぁあ!!!」


『男!男!しっかりして!もう少し!もう少しだから!!!!!お願い!!』ガガッ


探索者「(無線が………落ちてる……)」


モノビースト「ンゴァァァァァア!!!」


探索者「(奴の……足下………!!)」


ーー視界に集中するーー


男……鎖……怪物……無線……声……狙撃……


ーーーー閃くーーーー


探索者「(これしかない………!)オイでかぶつっ!こっちだ!!」


モノビーストの足下を潜り抜け、無線を取る。


モノビースト「!!!ンゴァァァァァア!!ン"モ"ォ"ォ"ォオ"!!!」ドスンッドスンッ!!!


男「バッ!バカ!挑発してどうすんだ!逃げろ!アグゥッ!」


探索者「~~ッ!!いいから今の指示通りに!!!」ガガッ


走りながら吐き捨てるように無線に叫ぶと、探索者はモノビーストの方を向き直った。


探索者『…………ッ!!』バッ


男『う………うぉぉぉお!!』ギチギチ


モノビースト「ン"モ"ォ"ォ"ォオ"!!!」ギチギチッ


探索者「お兄さん!鎖を離してそいつから離れるんだ!!」


男「何の冗談だオイッ!!離した瞬間、お前!あの世行きだぞ!!」ギチギチッ


探索者「大丈夫!信じてくれ!!」


男「………ッ!!わかっ………たよ………!!!どうせ俺も限界だぁクソォ!!」バチンッ


ジャラララララ


モノビースト「ン"モ"ォ"ォ"ォオ"!!!」ブンッ!


男「うおぉ!?」


刺が体から離れ、落下防止の柵に叩きつけられる男。


そしてモノビーストは、風を切り裂き、地面を抉り、探索者へと突進していく。


探索者「………(怖い………!!)」ガクガク


ドシンドシンドシンッ!


探索者「震えるな…………ッ!!」ガシッ


ドシンドシンドシンッ!!


モノビースト「ンゴァァァァァア!!!」


探索者「今だ!!!」


叫ぶと同時に、探索者は後ろへ跳んだ。


そして


鳴り響く


一発の銃声。


探索者「僕がなんでここで待ち構えたかわかるか?」


探索者「僕が待った、待ち構えたこの場所は、貯水タンクの真下!!」


ガインッ!!


銃弾が錆び付いた支柱を砕き、バランスを崩した貯水タンクが、モノビーストに向かって落ちていく。


男「…………だが……無理だ……!!空の貯水タンクの重みくらいじゃ奴は………?」ビチャッ


男「ッ!!」


探索者「そうだ!!!昨日までの一週間は記録的豪雨だった!あの降水量なら、貯水タンクに水は溜まっている!そして!」


モノビースト「ンモォ!!!ンモォォォオ!!!」


探索者「勢いあまりすぎたお前は!!軌道修正も、止まることもできない!!!」


探索者「潰れろッ!」


ズズゥゥゥウウウウン!!!!


モノビースト「」




探索者「…………」


男「…………」




探索者「…………」


男「おい」


探索者「…………」ジョロジョロジョロ




男「…………」


探索者「………」


男「着替え、貸してやるよ。」



探索者「………アリガトウゴザイマス……」








モノビースト「ンゴァァァァァア!!!ァァァァア!!!」ガシャァァァン


男&探索者「!?」


ズギュゥゥウウウン!!


モノビースト「ンゴ……アァ………」ズズゥン………





ガガッピー………


『詰めが甘過ぎ。』ガガッ


男「………」


探索者「…………」


男「すまん。」


探索者「へっ!?」


男「着替えは、渡せなさそうだ。」


探索者「…………」


……To Be Continued

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