全てを放棄した人の行き着く先にあった家。不可思議に包まれてしまうお話でした。都会から遠い田舎の山奥にひっそりとたたずむその家にたどり着くことが出来るには条件が揃わないとダメだというのなら、きっとぼくには見つけられないのだろうと思いました。確かに生きている限り、人は欲望を必ず抱いて生きている。それを改めて考えさせられました。無欲ほど幸せを引き寄せるとはよく言ったものですが、人は早々無欲にはなれませんから。少し背筋が引き締まりました。
遠い田舎の情景を思い起こしながら、その溢れた自然を瞼に浮かべながら読み進めたら、きっと不可思議に読者自身が包まれるだろう――そんな少し怖いような気もするけれど、興味をかきたてられる物語です。