【お題小説】魔女とニシンのパイ ~恐怖! 息子の顔を便所紙に印刷する冷血鬼嫁~
枕目
魔女とニシンのパイ ~恐怖! 息子の顔を便所紙に印刷する冷血鬼嫁~
※この作品は、ツイッター上でお題を募集して書いたものです。
※お題になった要素を全部盛りこみます
参考URL→https://twitter.com/MAMAAAAU/status/713868952049352705
【今回のお題】
・お菓子 ・パイ投げ ・溶接 ・幼稚園 ・錬金術
・トイレットペーパーにオリジナルのプリントをするサービスを使って、母が息子の顔写真が入ったトイレットペーパーを作る
・ 火刑 ・女の子の石化 ・ヴァンパイア
・「劇場型犯罪」という言葉を使わず劇場型犯罪を表現してください。
・花冷え ・シーメール獣人を犯すショタ
・太陽系 ・ウニからすみ豆腐
・欠損 ・メンダー ・日曜の昼下がりのビール
・対人恐怖症 ・こいのぼり
・ポーカーボクシング
・後ろから自転車で走ってきて突然耳元で絶叫した後走り去っていくヤンキー
・機能美 ・ゲゲル ・作者 ・ラーメンが大好きなパン屋さん
【魔女とニシンのパイ ~恐怖! 息子の顔を便所紙に印刷する冷血鬼嫁~】
ここは太陽系……地球。
この緑と海の星の、とある場所で。
ワンピースを着た魔女と黒猫が、港の倉庫に入っていく……。
「来たか『運び屋』……」
中に入ると、髭を生やした恰幅のいい男が、パイプイスに座って魔女を待ち受けていた。スラックスにシャツといういでたちで、腰についたホルスターには銃が納まっている。
「おいおい、こんなお嬢ちゃんで大丈夫なのか? アニキ?」
倉庫内をうろついていたモヒカンの男が言う。
彼は魔女の回りをグルグルと歩き回った。落ち着きのなさそうな男だ。ジャックラカンをモヒカンにしたような感じだった。ポケットにはナイフが入っているようだ。
「今にも『あたし魔女のキキ! こっちは黒猫のジジ!』って言いだしそうなお嬢ちゃんじゃねえか!」
「黙りな」
ヒゲの男が言う。
「黙るんだ。アレを持ってこい」
モヒカンのジャックラカンは、納得いかないような顔をして、倉庫の奥からバスケットを持ってきた。
「持ってきたぜ。これが『荷物』だ」
「うわ、キモッ」
バスケットの中にはパイが入っていた。
「『ニシンのパイ』だ」
そのパイからは、ニシンの頭としっぽがいくつも突き出ていた。
「『ニシンのパイ』こと『スターゲイジーパイ』だ……画像が見たい人はグーグルで検索しな……だいぶあれだぜ」
「誰に向かってしゃべってるの?」
「こっちの話だ」
ヒゲは印のついた地図をポケットから出した。
「お前が行くのはこの幼稚園だ」
「なるほど」
「いいか? まずお前が『花冷えの候、いかがお過ごしでしょうか』と言う、すると女が出るはずだ。このパイを相手に渡すと、ヤツは『あたしこのパイ嫌いなのよね』という。それが合言葉だ」
「それで?」
「やつの顔にパイをぶつけろ」
「は?」
「思いきりな」
ヒゲは細い葉巻をとりだし火をつけた。
「何人かの園児に金を渡してある。お前がパイをぶつけるのを合図にパイ投げが始まるはずだ」
「は?」
「何か疑問点が?」
「全部」
「いいから聞け、その幼稚園の奥には錬金術の秘宝がある」
ヒゲの吐いた煙が空中に漂う。
「それをこの箱に入れて持ってくるんだ」
溶接された鉄の箱だった。
「重っ……」
「箱に入れるのを忘れるな」
「つまり、錬金術の秘宝を盗んでこいってことか」
ヒゲは首を振る。
「お前は『宅急便』だろ? 運んでくるんだ」
「報酬はいつも通りか」
「いつもの倍出す。往復になるからな」
「三倍出せ。鉛の箱の分が勘定に入ってないぞ」
「三倍は出せない……だが代わりに」
ヒゲはモヒカンに言って、革のボストンバッグを持ってこさせた。開けると、中には紙のロールがいくつも入っていた。
「これをやろう」
「これは……トイレットペーパーじゃないか」
「ああ、このモヒカンのお母さんが、トイレットペーパーにオリジナルのプリントをするサービスを使って、モヒカンの顔写真が入ったトイレットペーパーを作ったんだ」
「やめてくれよ! ボス!」
たしかに、トイレットペーパーにはモヒカンの顔がいくつも印刷されている。
「息子の写真入り……しかも、これ証明写真じゃねえか」
「証明写真ってのがウケるだろ」
「ウケる」
魔女はにやりと笑った。
「いいだろう。普段の倍の報酬と、このトイレットペーパーだ」
「ううっ、自分の顔が印刷された紙でこの嬢ちゃんがケツを拭くのかよ! 屈辱だぜ! だがちょっと興奮する……」
モヒカンは自分の胴を抱くように体をくねらせた。
「お、お嬢ちゃんのウニからすみ豆腐がトイレットペーパーに印刷されたおれの顔にッ! ハアハア……」
ヒゲはイヤそうにモヒカンを見た。
「その幼稚園のパーティーには、ヴァンパイアの園児が紛れ込ませてある」
「ほう」
「そこから先はヤツが案内してくれるはずだ」
「わかった」
魔女は、倉庫から出るとホウキにまたがり、飛び立った。
彼女は、この名前のわからない魔女は、ホウキの先端にiPodをくくりつけ、イヤホンでユーミンっぽい曲をキキながら幼稚園に向かった。
途中で、ヤンキーが後ろから自転車で走ってきて突然キキの耳もとで「ラーメンが大好きなパン屋さん!」「まくるめは火あぶりの刑!」などと意味不明なことを叫んだ。
ヤンキーはは走り去ろうとしたが、その時キキは空中にいたので墜落死した。
「何だったんだ……あれは……」
幼稚園が見えてきた。なぜか異様に早いこいのぼりが飾られている。
幼稚園に着くと、中ではパーティー的な行為が行われているようだった。
校舎の中では、園児たちがビールを飲み、ピザを食い、ポーカーボクシングやゲゲルに興じていた。マリファナの臭いもした。
一部の男子らしい園児たちは、シーメールの獣人を囲んでよろしくやっているのが見える。首の部分が欠損したマリア像が逆さ吊りに飾られていた。
「やべえなこいつら、サバトかよ……」
「この国の行く末が心配だねぇ」
魔女と黒猫はそう会話した。
「クロネコとしては、ヤマトの将来がとても心配だよ」
魔女が入り口で合い言葉を言うと、いかにも孫娘っぽい女が入り口に出てきた。
「あたしこのパイ嫌いなのよね」
「おらあぁ!」
合い言葉を確認した直後、魔女は娘の顔にパイをぶつけた。
彼女の顔はクリームとグチャグチャになったニシンの身にまみれた。
「パイ投げターーーーイムーーーーーーー!」
「うぇーーーーーい!」
中にいた園児たちの数人が、いかにもウェイ勢といった感じで会場の注目を集め、パイ投げを開始した。
すぐに場内はパイの投げ合いになり、グチャグチャの乱交パーティーに発展した。ニシンまみれの娘も、近くにいた幼稚園児と体を重ね、全身にニシンのパイをすり込みはじめた。
「うわー……」
「今です。こちらです」
気がつくと魔女の足もとに、小さな女の子が立っていた。
「ご案内します」
「あんたが案内人か……」
「ええ」
魔女は彼女について、建物を出た。
もう外は暗い。
「あなた。ヴァンパイアだね」
「わかりますか」
「いちおう魔女だからね……」
「この幼稚園は、とても居心地のいいところです」
「だろうね」
その小さなヴァンパイアは、幼稚園の裏手にある小さな館に魔女を案内した。
「ここに秘宝があります」
「なるほど」
「秘宝のある館、すなわち秘宝館です」
二人は中に入った。
「これが錬金術の秘宝か……」
館の中心の祭壇には、結界に守られたレクサスの模型が置かれていた。
「この機能美……」
「間違いなくレクサスです」
その模型は、緑色の光を全体から放っていた。
「いま結界を解きます……」
「わかった……はふぁ……」
魔女はくしゃみをした。
部屋がホコリっぽかったのだ。そのはずみで、うっかりホウキの先をぶつけて、結界を形成していた祭壇の上の頭蓋骨を落としてしまった。
「い、いけない! 結界が不安定に!」
ヴァンパイアの娘は慌てて頭蓋骨に手を伸ばす。
「いかん! 触るな!」
魔女は言うが、もう遅かった。
ヴァンパイアの娘が頭蓋骨を拾いあげると、頭蓋骨のひたいに書かれていたレクサスのマークが青く光り始めた!
ビキビキと音を立てて、ヴァンパイアの手が石に変わっていく!
「いかん! 石化の呪いトラップだ」
「私のことはいい! 早く秘宝……を……」
ヴァンパイアの娘がさけぶ。石化は彼女の手から胸へと急速に広がり、のどが石になったとき、彼女の言葉は途切れた。
「魔女ーーーーー! ファーーーイッ!」
魔女はホウキの先で器用にレクサスの模型を跳ね上げ、鉄製の箱でキャッチした。
「よし、秘宝を回収した」
箱の中のレクサスの模型はまだうっすら光っていた。
ガイガーカウンターを近づけてみると、ガリガリ鳴ってカウンターの針が一気に振り切れた。
「やべえ! 早くフタを!」
……こうして犠牲を出しながらも、キキは無事任務をやり終え、報酬として大量の金とトイレットペーパーを受け取った。
モヒカンから、ぜひ写真をと頼まれたので、キキはトイレットペーパーを使ったものの写真をモヒカンにLINEで送った。
錬金術の秘宝がその後どうなったかわからないが、ひと月後に会ったとき、ヒゲのマフィアの男は全身が緑に光っていた。彼にガイガーカウンターを近づけるとガリガリ鳴った。
【お題小説】魔女とニシンのパイ ~恐怖! 息子の顔を便所紙に印刷する冷血鬼嫁~ 枕目 @macrame
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