第5話 TUTORIAL_5

「報告は以上です。対応の指示をお願いします。」


たった二人、しかしたったふたりであってもここまで緊迫した空間になるものだろうか。

夕刻、私、レルト=アルフレイムは今日のテストの結果をいまの上司、団長とは別の本来の上司へと報告にあがった。

この任務では最大3年間の期間であったが、終わりはもしかしたら早くなるかもしれない。

最悪の後味の結果がついて回るが、沈黙する上司を前私はこの任についたころを思い出す。


「レルト=アルフレイム、貴殿に1年間の学校での魔術での授業担当を任命する」


半年前、私は魔道兵団長から命令を受けた。

表向き先生のための簡単な教えを校長から受け、私は先生へと就任した。

裏としては、リンと呼ばれる生徒の監視をし暗部へと報告をおこなうという理由をしってはいけない任務だ。

表向きの任務では魔術の講義と実践化、そしてその強化と契約精霊をもちいたとりこみの基本と簡単な応用を教えるのが目的だ。

また、生徒の中には都市の離れた私の妹、クレアもいる事は分かっていたので、きっとあの寡黙な父が心配で計らったんだろう。あの子煩悩め。

今年で19となる私は軍務もだがそろそろ結婚相手も探さないとまずい年頃である、最悪母になきついてお見合い相手を探そうと思っていたが軍務での評判、二つ名が邪魔をしてうまくすすまない。だから私は悪くない。

この学校生活、先生としてだがこの変化で恋人を探すしかないだろう。

裏としての任務は2つ、ただ、リンという少女の動向に気をつける事。状況によっては非常な判断を行う事。任務には変化がなく、変化なしでおわるいわゆるただの警戒任務とおもっていた。

大方、リンという少女は外国から来たという。念の為の密偵対策であろう、そう思っていた。

ある日、そんな中変化がおきた、杖の実践行使の授業である。

校庭で的あてとよばれる軍部での射撃訓練を授業でテストという形で行う事にした。

部下につくらせたわら人形、愛称_ガードナー君は魔法耐性のあるレジスト薬を粉にし魔法薬で溶かした水をしめらせたペンキを塗ってある。

もともと軍部でも使用する魔法杖の精度と確認用の的であったが、対魔法戦の物理的なシールドの作成の運用テストも盛り込んである為、このガードーナー君の防御力は折り紙つきだ。

そこに私は本気で魔法防護をありったけ重ね着でかける、重ね魔法はわたしのオリジナルって言う程でもないが使えるものは今のところ私と先代当主、父だけだ、まぁそんなことでわたしの威厳を保つ役目をもったこのガードナー君に生徒たちに魔法をあてさせびくともしないぜ!っという腹積もりであった。


 作戦は半分成功、半分大失敗であった。

生徒たちの魔術は私のガードナー君を傷つける事すらできず、ただ的をゆらすだけ。

なんとか妹クレアが端の方を焦げさせたぐらいだ。

そして監視対象の何のため監視するかわからなかったおちこぼれ、リンに対しては契約精霊が精霊ですらない精霊の欠片である為この試験ではとくに注意を払っていない時に事件は起きた。

膨大な魔力の圧力をを感じた時、彼女の腕に裂傷が生じ、杖の極秘事項である内部とにたような魔力紋が傷としてあらわれていた。

彼女の腕はずたずたに裂かれ魔法を発動すべき杖は魔力過多による停止では収まらず、魔力の供給のみで粉々に吹き飛んだ。


だけど、異常事態はそれだはない。


おちこぼれの生徒、いやもうすでに要警戒対象のリンと呼ばれる少女は杖なしで魔法を顕現させた。


それも杖にあらかじめプリセットされたバレットと呼ばれる魔法ではなく、水玉_ウォーターボールといわれる水滴により緊急時の道具の洗浄程度でしか杖で使用されていないその魔法は、ガードナー君を粉々に、私の複層にわたる魔法防護をつらぬきほかの2体までまとめて破砕した。リンの精霊、水の精霊の欠片は他の水系の精霊の4分の1程度の力しか持たないと計測されていた、あるだけましって程度のはずだ。

そしてリン自体の魔力素養は並みの上、平均より少し高い程度だ。どこからあの力は出たのだろうか?

不可解な事象を飲み込み私は急ぎ彼女に駆けつける、またルーフ君とリンもこちらへ駆けつけてきている。


「応急処置は私ですぐすむから、ルーフとクレアは生徒たちに教室に戻るように誘導しておいて」

「姉さん、リンは大丈夫なの?」

「無事よ、出血自体はすでにとまっていて、息もしている。気絶しているだけどとみるわ」


応急処置を施した彼女をそのまま医務室へ連れて行く。裂傷自体は腕の表面だけだったので、傷跡はの残らずにすぐに直ってしまうだろう。派手に血を巻き散らかしたが私が確認したときにはすでに血はとまり擦り傷程度のものだった。

包帯は、傷がすぐに治ってしまっていたことを隠すためだ、誰に見られているかわからない。


 追憶を追え正面の、先代の魔道兵団長を見る。

人のよさそうなおじいちゃん、そんななりをした彼はいつからかわからないがずっとこの兵団のむかしの元団長であったとはみな知っている。そんな彼が私がこの任務をうけたときに珍しく依頼してきたのだ。


「リンに変化があれば報告してくれ、害があると判断したならば処刑を執行することを私が許可する。」


短く、だが明確な命令であった。そんな彼はいままでの好々爺な気配ではなく、まるで御伽噺の龍の前にいるような威圧感を放っていた、ただ、もと兵団長、なぜか名前はだれもしならない。調べてもいけない。現団長も認めている異常。異常であるはずあなのに誰も異常におもわない、この怪奇さをただようこの爺様が判断すればリンをすぐにでも殺せと命令するのだろう。そしてなぜか命令にはさからえない、そんな気がしていた。


「そうかわかった、おぬしからみてリンはどうだ?敵にみえるか?」

「いえ、堕ちこぼれであっただけだった生徒が急に人が変わったように良くなったとは見えますが敵よりはいい味方ができたとしか思えてないです。力量からしても軍の敵ではないです。」


これは、私の正直な気持ちだ。たしかにあのこの急激な変化や杖なしで魔法を使用した貴重性と危険性を加味しても出来がよすぎる生徒でしかない。軍の敵となるほどの力はみれない。


「そうか、そうかよかった、できればリンによくしてやってくれ。なにぶん不憫な子なのだ。下がってよいぞ」


一人となったあと、元団長、いや国が始まって以来の魔法使いはつぶやく


「あれの中身がおきたのだな。まだねぼけているのか別物なのか、さてさて教会にはもうばれている頃だろう、準備がむだにならなければいいが」


◇◇◇◇◇◇


ギルドの報酬は結構な額になった。


「ええ?!そんな魔物がいたの?それで逃げて来たって、うわーごめんねそんな危ないクエストだして。とりあえず成功報酬と別発見報酬をだしておくから私はすぐに上に報告に出すわ」


うん、ごめん本当は倒してしまっているけど私が倒したなんていえない。

それに、神父さんの件もあるし回避できるなら面倒ごとは回避したい。

もちろん、また目の前で誰かを助けれるならば助けるとは思うけれども、それにいまはあのとき私の横にいた女の子、ケイというたぶん私の精霊の欠片であり契約精霊、その子のことが問題だ。

いまは姿がうっすらとみえ、たまに口を動かしているようにみえるんだけど、まったく声は聞こえない。

あの時聞こえた声は幻聴ではないとおもうけど、なぜ姿が見えるようになったのに聞こえないのだろうか?

もともと調べにいく為に図書館に早く行かなければならない。


「閉館時間か~」

図書館はすでにしまっていた、時間的に学園が休みのときでないといけそうに無い。

・・・今思えば学園の図書館にも本はあるのではないだろうか?

休日であったため、学園のことを完全に忘れていた。


「ため息なんてついてどうしたの?」

夕焼け背にをこちらに真っ赤な髪をなびかせながら、クレアちゃんが歩いてやってきた。


「ああ、クレアちゃんやっぱり私一人だとだめだね、そういえば何で今日に限って一人で悩んでたんだっけ、あのさ聞いてくれるかな?」


ああ、私はそうだ、何故いつもは一人では何も出来ないのに出来ると思って今日はがんばっていたんだっけ、結局色々やらかして結局目的には達成できなかった。

今日は何故か頭はすっきりして、今までうまくいかなかった事がうまくいくようになってた気がしていただけだったと思う。

私はクレアちゃんに昨日の朝から、今まであった事を話した。そう全て話してしまったんだ。

一杯話した、いままでの頭痛の事、あの杖が壊れたときの事、そして森での魔物の事、最後に声と隣にいるケイの事。

なんではなしちゃったんだろうな、少し考えたらさ、先生のあの態度とかこの国では魔法は杖を使う事が普通な筈なのに使えた事に疑問を持たなかった、ヒントは一杯あったのに。


「うわぁ、ほんとリンいったいどうしたん?あからさまにおかしい様ね。それにしても私には見えないけどケイっていうんだっけ?たぶん、この本でいいと思う。過程は飛び越えてるけど、精霊を顕現させて簡単な命令をするための方法が書いてあるよ。それからこの事他の人に話差ないほうがいいと思う。」

「ありがとう、他に話せるような人はいないよ大丈夫。2冊あるけど1冊は絵本なの?」

「そう、絵本。一冊は昔の精霊契約者の記述と、絵本は~えっとみたらわかるとおもうよ。まぁ今夜にでも読んでみてねたぶん、助けになると思う。あと今度からはちゃんづけじゃなくてクレアってよんでいいからね。」


クレアちゃん、じゃなくてクレアの部屋の中で本を貸してもらった。寮の中で彼女の部屋は3階の隅にある、そういえばこっちにくるのは久々な気がする。

私は部屋に戻り寮での夕食を終え、本を読む事にした、サラはまだ部屋にいなかった。


2冊とも古い本、でも何度も何度もよまれた後がある。

タイトルは、『精霊との調和術』と絵本の方が『勇者達と魔王達』、絵本のほうだけど『勇者と魔王』というのは良く込んだ事がある、悪い魔王を勇者が仲間をあつめて倒すというものだった、でもこの絵本は勇者達と魔王達何人いるんだろう?まぁとりあえず、この子となんかしらコミュニケーションがとりたい。


分厚い、まるで辞書のような『精霊との調和術』を開く。ライトの魔法具は私は持っていない、暗くなるまでに読めるだけ読もう。

まだ序盤だけしか読んでないけど要約すると、この世界のマナとよばれる魔法の元となるものがあるらしい、それをもとに人工的に精霊を作り出し契約という形で人に刻み込み安定させる。

それが魔術と呼ばれる人体改造、おびただしい数の実験による被害者をだしながらも魔王に対抗するために作られた技術、軌跡を用いない魔法を技術として使用するための魔術それが成功したと書いてあった。


動悸がする、この本はしってはいけない気がする、でも私は読む、契約した精霊は4つの基本属性に分かれる、火・風・水・土と属性をえた擬似生命それを人工精霊、今後精霊とよぶという事

他には、物にマナを多量に含んだ鉱石を砕き粉にしたものをまるで回路のように組み込み、人工精霊をもちいつかう魔法の仕組み、そして一番知りたかった事に近いものとして精霊への命令という形で接触する方法、精霊契約時に自身に刻まれた魔術回路へ自身の血を媒介に魔力を意思とともに流すという事。


私は、引き出しからナイフをとると指先を指し血を右手の傷跡、いまでは魔術回路にしかみえないそれに押し当てて魔力を流す。

『貴方と話したい、貴方を知りたい。』


ケイをみる、彼女は右手を私の左手に重ねて右手に同じように触れる。

ズキン、よくわからないところが痛んだ。きっとこの痛みはずっと先延ばしにされていた痛みなんだろう。


「はじめまして、僕はケイです。よろしくねリン」


◇◇◇◇◇◇


「ご苦労様です、本はリンの手に渡ったようですね。クレア」

「やるべきことはやったわ、約束は守ってね。」


真っ暗なクレアの部屋で二人の少女が佇み話している。

クレアの顔には悔恨と安堵が浮かんでいた。


「本当に、本当に戦争は回避できないの?」

「無理でしょう、既に両国とも戦端はいつ開かれてもおかしくない状況です。」

「ルーフと姉さん、そしてリン3人とも助けてくれるのよね?」

「ええ、もちろんです。むしろいつでも私達は貴方達を歓迎しますよ、さすがに表に立っての活動は無理かもしれませんが、教会はいつでも迷える者をうけいれます。」


「わかったわ、やることはやったんだから約束は守ってね。わたしはいくわ」


1人、になった部屋でルームメイトであったサラは呟く。


「あとは、勇者ですね。」

◇◇◇◇◇◇

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精霊生活のすゝめ (仮) 狐んこ @kitunenko

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