第4話 TUTORIAL_4

 「知らない、なんだっけ・・・・?」 

 おきたときに何かいつも使われる定例文があるきがしたけど、よくわからなった。


 救護室で目を覚ます。

 隣にはレルト先生が椅子に座り、教科書を読んでいた。


 時計を見るとまだ試験が終わってからあまり時間はたっていないようだ。

 起きたことに気づかれると先生に傷の痛みや、倦怠感の確認、それからテストはあれから中止になったことを教えてもらうと今度は逆に質問攻めを受けてるはめるとなった。

 正直、軍部から派遣されてきた先生であるため同じ女性としても少し怖い。

 昨日までの私ならきっと口ごもってしまい何も話せかなっただろう。


「では、今回の試験であなたは以前と同じように杖を使い魔法弾を使用しようと試みただけなのですね?...しかしそれではあの事象の説明はできませんが。契約精霊のサポートの兆候はなくあなたは、どうやって水系の魔法を使用したのですか?」


 それでも今日の私であってもまるで尋問のように聞かれ、つい口詰まってしまう。

 私は他の精霊と契約できてない。

 でも事実、確かにあのとき湧き上がってきた力の説明はうまくできなかった。


 結局の所、素直に今日体調がいきなり良くなった事、いままでは悪かった事を伝えた所で先生はなにか考えるように思案し始めた。

「話はわかりました、貴方は気づいてないかもしれないですがこの件は重大な内容があります。詳細をほかの者へ伝えることを禁じます。クラスには私から炒っておきます。」

 何かしら、思い当たる節があったようだが、再度先生は思案顔へもどる。

 レルト先生は1年生では授業を行っておらず、初回のテストと今回のテストでしか顔を合わせてない為、普段の私がどうだったかは知らないだろう。

 実質的な軍部の生徒の成長を図るために1年ではテストを受け持ってるしか過ぎないとか、あまり1年生にはちょっと怖がられている話しか聞かない。


「先生、リンは大丈夫ですか?」

「リン?大丈夫かーい?おきてる?」


 ルーフとクレアがやってきた。

 どうやら、心配できてくれたようだ。

 以前は何とも思ってなかったかもしれない。

 今は少しうれしい。すでに血は止まりってはいるものの包帯でぐるぐる巻きの腕を見ると2人は息を呑んでいた。

 包帯の腕を見せ、もう痛みはないことを伝えると二人は安心した表情をみせてくれた。


「とりあえず、私は少し調べることができたわ。テストのほうも観測用の的が粉々なりましたので試験はしばらく中止、まだ終わってない人たちは他校から同じものが明後日とどくのでそのときに行うわ。クレア、クラスの皆にも伝えてもらってよいかしら?」

「いいよ、おねえちゃん、じゃないね。はい、先生わかりました。」


 おねえちゃん?クレアのお姉さんだったんだ。クレアはおねえちゃんと呼ばれてすこし怒ったようなレルト先生の所から逃げるように皆のところへ戻ったっていく。


「リンの無事な姿がみれて安心したよ、とりあえず寮の前までは俺がおくろう」

 この後ルーフに私は寮の前まで付き添われたあと部屋に戻ると、なんだた疲れもあり早々と床につくことにした。

 ルーム名とのサラ姿はみえなかった。




■■■■■  de fragmentation.....


 これは、誰の夢なんだろう、知らないのに懐かしいという気持ちがいっぱいだ。


「ほら、なにをやっているの?今日はハンバーグよ」


 わーいと私は、僕は喜び、ハンバーグをほおばる。

 今日の家には母親と僕、ううん私?いや僕?の二人だけだった。今日の父は仕事がとまりのため、帰ってくるのは明後日だ。

 家には小学生の科学っという本を親戚からもらったらしく大量にダンボールに入っていた。

 最近はそれを読むのが毎日の楽しみだ。


「■■■■は本当にハンバーグがすきね」

「うん、お母さんのハンバーグは大好きだよ」


 ケチャップに似た、手作りであろう赤いソースが掛かったハンバーグは本当に好きだった。

 それに、今日はテストが帰ってきて100点であったことでのご褒美としてほしかった図鑑も買ってもらえることになっていてすごくうれしかった。


 ああ、そうだ母に今日は腕を怪我の血で汚したことを伝えないと私は右腕をみて怪我がない当たり前の事にに気づく。

 そして、母の化粧台を見たところで目が覚めた。



■■■■■  de fragmentation.....cancelled




 不思議な、不思議な夢をみた。御伽噺でもきいたことのない魔法のようであり魔法がない世界の話。

 私は夢の中でたべたハンバーグや、読んでいた本の内容を思い出す。

 ハンバーグなんて食べたことはない、でもその味は知ってしまった。

 科学という本の内容を思い出す、なぜ雨はふるかという事をわかりやすく書いてあった。


 いまこの世界での雨は神様や、精霊の采配できまるものだ。精霊の割合が変わると砂漠やうっそうとした森になる。

 教会での学びやでは神様の御心と、いまこの学校では精霊の割合だとによるものだと。


 でもいまではそれ以外に理由があるのではないだろうか?私見た夢はあまりにもリアルであまりにも筋が通っていた。

 目を覚まし、2段ベットにはサラはまだいなかった。昨日からどこへいったんだろう。


 そして、翌朝になったところで一つ思い出す、昨日マイグリットさんから教室に最後きてほしいって事を忘れていた事を思い出しすこし胃が痛くなった。



 今日は祝日、学校はおやすみ。いつもは何をしていただろうか?

 そうだ、だいたいの祝日はいつもはクレアとルーフが私を誘ってくれて勉強や買い物やピクニックに出かけていたと思う。

 今日は昨日のこともあり、二人からはゆっくりやすんでおきなっと最近はじめた退学コース離脱からの特訓はなかったんだ。


 寮で朝食をたべてから買い物でもいこうか?いや入館料をはらって夢でみたような本をさがして図書館で本を読むのもいいとおもった。

 私は自分の財布の中身の重さを思い出した所で、実際に確認して考えてたよりその財布の軽さに途方にくれていた。

 いままではなし崩し的にクレアやルーフにおごってもらったり、学校からのわずからばかりの給料、一応軍事学校で軍部に所属するみとしてもらっていた。

 ただ、基本的に他の生徒と違い親の仕送りがない私は貧乏な学生やお金のつかいこみが多くなってしまった学生たちと同じようにギルドと呼ばれるところで日雇いの簡単なクエスト《依頼》をこなす。

 うちの学校の学生証があれば、簡単な依頼を受けれるようになるはずだ。

 なんたって基本的には兵士になる為の軍事訓練を行っている学校なのだから、低ランクの依頼や栽培の難しい旬なものの植物の採取で小遣いを稼ぐことが出来る。

 この学園の生徒っていうだけである程度の信用はある為、私は外での依頼ではなく店番や手紙などの本当に簡単な宅配をこなしお小遣いを稼いでいた。

 とりあえず、寮の食事を食べてギルドへいこう。

 クレアやルーフたちには悪いけど、私はなんとかしてあの高額な入館料が必要な図書館の中へいきたいのだ。

 とりあえず、精霊の欠片の記述がある本を読みたいので図書館へ足をはこぼう学生割引などがあるかもしれない。


 ・・・なんで学生割引なんてそんな割引みたいなものがあるかもっておもったんだろう。

 思った以上に高い入館料は私に払うことはできず、ギルドでお仕事をさがしにいくことにした。



 ギルド、各国にある日雇いの仕事の斡旋からこの街道を少しでもはずれたらモンスターが跳梁跋扈するこの世界では指定区域のモンスターの討伐やちいさい商店の護衛依頼などが受付により案内される。

 簡単な仕事、っといってもいらする側からすれば雑にあつかっては困るもので信頼をつみかせねた人にしか回せない仕事も当然ある。

 ぎゃくに、誰でもいいので討伐してほしいモンスターの駆除系はだれでも受けれるようにボードにはってある、なかには討伐の実績をかさねた人にしか案内できない討伐クエストもあるというが眉唾であろう、そこまでいくものだったらギルドから国へ軍のお仕事となる。

 私が所属している学園は軍事訓練校ではあるが、主な仕事は街道の警備とそこに侵入するモンスターを組織だって討伐すること。

 モンスターから小さなへ町へ侵略がおきないように巡回や定期駆除をおこなうなど、町の人々の生活に根ざした活動が主となり、人気は高い。

 お国柄、いままで300年は戦争をおこしていないこの国では軍はおもに民の為に使われている。

 契約精霊や杖とよばれる、正式名称魔道式自動運用魔法杖という、特殊な技術はこの国の専売特許だ。いま私たちにつかわれる道具や精霊契約の管理は非常にシビアに行われている。

 きのう使った杖なんて、結局テストの時ぐらいしかまだ使っていない。


 そういえば、私、あの杖、壊した。


 冷や汗がなぜか2倍でる気がする、なぜか始末書なんて言葉も思い浮かぶ。


 そのことには先生に言われなかったが、あれは簡単に言えば国の重要機密技術で相当高額であるはずだ。

 あとから請求とかこなければいいのだけれど。


 学園は坂道の上にあるので下り坂をおり商店街をぬけた先の中央にギルドはある。

 なお、くたくたでギルドの仕事をおわらせると、この坂道が地獄のロードとかす。


 国の民の為にうごくこの国の軍につならる私達は、商店街の人々にもうけがいい。

 いや小額とはいえ給料をもらう私達はお金を払ってくれる大事な客でもあるのかもしれないけれど。


 朝、寮食で大盛りで食べたはずのおなかがなぜかすくのをおさえながらおいしいにおいのする屋台やおいしそうな高級品でもある果物やの前をとおりすぎて私はギルドの門をあける。

 剣と盾と人々の暮らしをあらわす小麦が刻まれた看板のその建物は午前中のいまは人々でごった返していた。

 町の外へと向かう、討伐系の格好をしたものや街中の依頼をこなすための動き安いかっこうをしたもの、そして私と同じ財布が軽くなってしまった学生や訓練にあきて実際に討伐にいくために制服の上に装甲服とよばれる簡易な防具をつけた学生達がいる。


 私の学生証にはさんだギルド証は銅版、なにげに多くの宅配や街中での掃除や高齢の方の簡単な医療補助、学校で学ぶ医療術があるため包帯の巻き方や基本的な医療のための知識をうまく用い木版の一つうえの銅版である。

 そう、みならいの木版から半人前の銅版になった私は討伐モンスターがいる区域の調査依頼を受けることができる。

 実際に戦う必要は無く、調査であるためある程度の知識や勇気、だいじな逃げ足の速さはひつようであるけれども、学園でのカリキュラムをうけている私たち生徒にとっては落ちこぼれでもできる内容なのだ。

 というより、比較対象はしらないはずなのにいまの学園は優秀な生徒ばっかりのエリート学園だと思う。


「こんにちはー今日もまたよろしくお願いします。」

「あら、明るくなったわね。貴方向けの仕事や丁寧にやってくれる貴方にまた仕事うけてほしいて話結構大量にきてるわよ」


 むぅ、なかなか嬉しいことをいってくれる受付のオネーサンさん。

 たとえ見た目が大阪のおばちゃんだとしても、お姉さんである、生きていくうえでは大事なことだと、大事なことだと2度思う。

 それに昔は美人であったらしく、いまでは3児の母親である。依頼の中で子守があり、子守をしたこともあり見知った中だ。



「えっと今日は、ちょっとほしい物ではないのですが図書館にいきたいのでお金が入用なのです」

「あらーではちょっと大変だけど町の外の森の調査があるわよ、これにしたら?」


 黒衣の森、都市よりすこし1時間ほど走った先にある不思議な小さな森だ、時折モンスターが現れるがなぜか、巣などがあるわけではない。

 それでも、この付近ではいないモンスターや獣が発見されることがある。

 学園でも緊張感をもった行軍授業を行うため、全員参加のカリキュラムで参加が必須となるピクニックの場所である。

 軍人の卵であるが、数と指揮系統、戦術的に戦う学園の敵となるモンスターや獣は発見されておらずあくまでもピクニックである。


 私は依頼内容から、無理の無い範囲であることを確認した上でその依頼を受けることにした。

 こういう調査系統では受ける人は何人にもわたり、受ける人により調査依頼区域は異なる、同じ場所を時期をずらし再度やるため安全性はかなり高い。

 依頼料は銀貨2枚とかなり高額だ、ギルドへの国からの定期的な依頼であるがまれに死者がでるため高くなっているのだろう。

 銀貨1枚は銅貨10枚、銅貨1枚でとても立派なお昼のランチが食べれるとなると日帰りで出来る仕事としたらいい案件だとおもう。

 貨幣には魔法貨幣局で発行されており、レジに使われる鑑定石をつかうようになっている。

 鑑定石は無償で配布されており、税金の一部がやすくなるため、この国での商店では普通に使われている。

 私は、受付のオネーサン、クラウドベリーさんへ依頼を受ける旨を伝えて資料をもらうと、お弁当を買いに商店街へとむかった。


 毎日が縁日、そんな商店街とフリーマーケットのような出店がいっぱいのギルド前の広場を見渡す。

 なぜか昨日からお腹がすぐにすいてしまう。私は腹持ちがよく量がおおい携帯食をさがすのであった。


 ギルドから1時間、私はたっぷりの豆と少量の野菜と肉を炒った携帯食と、ちょっとたよりないが護身用のショートソードと短剣の間のような少し長めの剣を携え黒衣の森へと走って向かっていた。

 財布の中身が厳しかったのもあるが、なんとなく馬車ではなく走っていっても問題ない気がした。

 全力とではないが200mも走ればいつもなら、あっというまにばてるような速度でわたしは街から街を囲む城壁をこえ、森へと走って向かうことができた。

 さすがに、こんなことが出来るとなると私でも気づく。

 この体の変化は単にずっと悩まされていた倦怠感や頭痛が解消されただけではこんなことにはならない。

 こんな長時間この速度で走れるものはクラスにも、学園が始まって以来の優秀生、あの3人をのぞいていないだろう。

 私は彼ら3人、いやクレアとルーフと一緒にいてもいいんだって嬉しい気持ちもあり、この変化の原因を知りたいと思った。



 都市国家セントラルとは、一つの都市ありながらこの世界で国として成り立っている異質な国。

 魔法とは神を信仰する聖職者、もしくは忌むべき悪魔と契約した堕ちた人々、神ではなく精霊を信仰する人々、古代の神々の言葉の研究から自らの力を世界へ顕現させる特殊な学問を学んだ人々、そんな一部の人のうち少数のみが使えるものであった。


 300年ほど前ある天才がいた。古代の神の言葉の模倣から出来ていた魔法を道具によりすべての人々がつかえる魔法道具を作り出したものがいた。

 その男は杖とよばれる魔法を軍事力とする兵器用いセントラルという国をを作った。

 杖と呼ばれる軍事力をもとにわずか100名程度の人々を率い、西国アズラエルの他国へ接触する場所へ国を作ったその男は国の基礎を作った後、3人の仲間と共にその国を後にした。

 あるものは政争にやぶれたと、あるものは満足してさったと、そしてあるものは、_存在が見つかった魔王を退治しに行ったと彼らのその後を語った。

 そんな国家の隣の森はなぜか開発されることを禁じられ、ただうっそうとその姿を維持していた。


 森での調査とはいうが、地図を元での定期的な定点観測である。

 そこでの植生はどうだったか、獣のマーキング後は無いか、水場のいじょうは無いか、非常時に使える植物は生えているかなどと調べ証拠となる植物などを1部持ち帰る。

 仕事は簡単だがその分楽をすること、虚偽の報告をあげられると困るためにギルドからはきちんとした人物のみへと依頼するようになっている。


 仕事は簡単、私のとってもこの仕事は2回目。1回目はルーフたちと一緒に2日かけてやった記憶がある。

 そう、簡単であったはずだったんだ。簡単な、きっと今なら1日で終わる仕事。

 いつもなら気づかない不自然、足跡、折れた草や枝、転んだあと、慌てて移動したと思われる重心移動の足跡。

 そしてそれにかぶるような獣の足跡。

 ゆっくりとその軌跡を追う、慎重に、慎重に。

 私は足跡の持ち主が落としたであろうお弁当に気づいた時、体はかってに走り出していた。


「間に合って」


 つぶやきはだれにも聞こえないだろう。

 でも確かにあの時に聞こえた声。『ごめん、やりすぎたみたい』という言葉。

 あのときの言葉は幻聴ではなく、本当に私の契約精霊からの声ならば今回もこの私の声がきこえてきっと力を貸してくれる。

 軍学校の生徒とはいえ、正規軍の兵士ですらない私ではモンスターとの遭遇では、襲われた時以外は助けを求めにいくのが一番いいのだろう。単純に被害が2倍になるだけだ。

 でもたとへおちこぼれではあってもなくても。助けられるのはきっと今だけであろう。

 体が不調になる前のわたしならきっとこうしていた。絶対、絶対、二度と逃げることで後悔したくない。

 全身に力がみなぎり右目がすこし暖かくなる、私は流れいくまわりの風景をおいて痕跡をいっきに追いかけた。



 はしる、森の中を走る。

 少女は森をの中を走っていた、日に焼けたその肌はところどころ森を全力で走った為植物によってあちこち傷だらけであった。


「どうして、どうして、どうして」

 走る彼女の後ろには、大きな犬のような黒い影がゆっくりとじょじょにまるでいたぶるように距離をつめてくる。


 少女_メルーは森で日課となっていた採取をおこなっていた。

 家は両親と残っている兄と私の4人。もうひとり兄はいたが、すこしのたくわえを稼ぎ武器を買って冒険者になると家を出て行きそれっきりだ。

 森ではまれに死者がでると危険とされていたが、常に出るわけではないことや軍による毎年巡回がおこなわれているので危機感なんて無かった。


 いつもの場所、いつもの安全な場所、そんな自分が信じていた場所に今日はことなる侵入者がいた。


 真っ黒でおおきな犬、最初いきなりあらわれた獣をみて少女はそう思ったのだ。

 次の瞬間その獣の目に映った明確な殺意をみた瞬間メルーは走り出した。

 全力で走っていた体力がつき、足がもつれる。

 いつもの道は途中でいいかける獣に先回りされ外れた、不慣れな道を走らせられメルーはついに転んでしまう。

 転んで後ろを見て、大きな口が目に映る。

 叫ぶ、威嚇するように懇願するように、生きるために。

 ただその叫びは獣につたわるはずもなく、その牙はメルーの肩へと到達し噛み砕く。

 牙が食い込み骨が砕かれる音をメルーが自身の体から聞こえ死を感覚として理解した時に、リンは彼女を発見した。


「きゃああああああ」


 叫び声は誰のものであったのか。

 獣、真っ黒な獣。見た瞬間逃げ出したくなる。

 でもそんな、そんなささいなことより、少女の死を前にした叫びが怖かった。ただそれが怖かった。

 獣の牙が少女の肩を加えたままゆっくりとこちらへとふりむいてくる。


 いま私が使える手札は何だ!

 所持している武具、短刀を投げる、投剣術はわたしは苦手だ。

『急げ。』

 石を投げる、石なんか持ってない近くにも石なんて無い投石術もだめだった。

『急げ、そうじゃない、それじゃない。』

 魔法、ウォーターボール、杖なんて物は私はもっていな、、、ちがうちがうちがうあの時、私は私は私は


 全身が熱くなる、世界に、自分の周囲へ魔力を基とした回路を移し込む。そこに言葉を、魔力のをともなった言葉を流し世界を変化させる。それが魔法。直接世界を変化させる、望みのままに。

 となりに、幼い少女がいた、きっとこの声の主だろう。

 私は遅くなった時間の中、選択する。

 ウォーターボール、あの時使ったあれは少女ごと巻き込んでしまう。

 今やるべき魔法はあの時杖で使用するべきだった魔術、属性の礫、バレットとよばれるただ相手をはじきとばすだけの礫の魔法をイメージする。

 狙い済ますため、杖はないため指先をむけ親指を横に倒し精度をあげる。

 となりの少女_ケイという名前が私に伝わってくる。ケイの考えが流れ込んでくる。

 バレットとは弾丸。

 横方向の回転で安定貫通力を上げ軌道を安定させる物だ、今作った私のイメージを一瞬で修正・補正・改造する。


『ウォーターバレット』


 心臓から右腕へ文様のような傷が熱を持つ、いまならわかるこれは魔法をつかうための魔術回路、腕は狙うべき対象を補正し魔力で固定する。

 イメージから作られた水の弾は、指先という筒から発射され黒き獣の頭半分と、背後の木々をえぐり貫通した。



 少女の傷は、おもったより深かった。


「大丈夫っ、じゃない、うごかないで!」

「あ、ありがとう」


 息絶えた獣の口を少女、メルーというらしい、からはずし応急処置を行う。

 簡単な止血、もってきていた止血用の軟膏を傷口へとつける。

 肩の骨は砕け、牙が深くささっていた所からは血がとまりにくい、なにかしらそういう成分が含まれているのだろうか。

 メルーを抱き上げ、私は彼女の村にあるはずであろう教会の神父さまを尋ねることとした。

そういえば、声が聞こえた時の女の子、ケイは見えなくなっていた。



 「メルーメルー、ああいったいどうしてこんなことに。」

 「早くこちらです、そのままつれてきてください。」


 お昼時、少女を抱き上げたまま教会を訪れた私は急ぎ診療室へと通された。

 優しそうな顔をした神父のおじいさんは、彼女の肩をみたあと教会の聖具、棒に布を取り付けた私たちがつかう杖とはことなる道具をもちい魔法を行使する。

 左手に聖具を、右手で肩にふれると神父の右手は薄く輝きメルーのかたの傷から出血はとまり傷はゆっくりとふさがろうとしているが、本当にゆっくりだ。

 このままでは間に合わない。そんな直観があった。


 治癒術、教会の者たちが収めている癒しの魔法。たしかにそれは魔法であったかもしれない。

 人目にみると確かに神の奇跡にに見える、でもちがった。

 右目には神父の左手に持つ聖具の効果つまり、道具にうつしこまれた魔術の動きをみることができた。

 不完全であるが使用者の魔力をもちい、右手でふれた対象者をいやす魔法を顕現させており、どうじに同じくらいの魔力を使用し右手を発光させる。

 もとは治療時に傷をみるためだったかもしれないが、どうみても神々しさをだすために使われていた。

 神父には道具の本当の性能はわからないのだろう、教会の話では偉大な治療者である聖女の治療ではめもくらむような神々しい光で治療を行えたとあるのでもしかしたらこの仕組み自体を知らないかもしれない。

 必死に、汗をながしながら治療を行う神父は教会毎に教主より授けられた聖具を信じて疑わないのだろう、でもだめだこのままでは間に合わないかもしれない、たとえ間に合ったとしても彼女の肩は歪にくっつき、二度と動かないだろう。


 いつの間にか隣にはケイがいた。透明な水でできたような、どこかでみたような女の子。

 きっと私がしたい事がわかっているんだろう、そしてそれによって問題が、教会を敵に回す可能性があることを。

 ここにいるのは神父と、メルー、そして必死に神に神父へ願いを娘が治る事を祈る彼女の父親と目元を覆ったシスターが彼女の汗をふき取り幹部を水で洗浄していた。


 命は消えかけている、このまま何もしなければただ少女が死ぬだけだろう。

 もしこの村を今後、私は訪れるたびにきっとこの少女を思い出し後悔するのだろう。

 この村に来たときに少女の墓を訪れる未来を否定するならばいまであろう。

 いまなら、私なら命を、そしてまた肩が以前とおなじよう動かせる様にに治療できるなら。


「神父様、手伝います。」

「いったい何を!?」


 有無を言わせず、私は右手を神父の手に重ねる、あくまでも神父の手伝いっという立場にいると公言し、ほかの人には見えない存在であるケイへ目線で合図をおくる。

 ケイはだまって、私が右手を神父の手に重ねた上にさらに手を重ね先ほどみた聖具の魔法を私とケイで再現しはじめる。


『癒しの光/ライト』


 ただし、発光の効果はオフ。彼女の肩の傷はふさがり始め、出血は完全に止まる。

 でもこのままでは骨が、歪につながる。


 重ねられたケイの手を右手でさらに重ね強く握る、きっと今はあのときのような力が要る。

 ケイはうなずくと何やらつぶやき私の手を通し、私の中へと溶け込んでいった。


 ずきりとした痛みと熱さが腕と右目を覆う。


 痛い。


 そして全能感とも言えるような高揚が私をみたしはじめた。


 メルーをみる、

 肩の傷に魔法的な痕跡がある、牙が刺さっていた所を中心にある種の呪がが継続していた。

 肩の骨はあの獣の牙により複雑におれている、術式をとき魔法の除去がひつようだ。

 除去をしたら肩の傷の治療だ、あるべき姿へ、癒しではなく変化、治療であり部分てきな成長の促進、細胞の増殖、そんな人体への魔法。

 今まであった魔法ではなく、求める結果のためにその過程を創り出す。


『術式破壊/身体能力底上げ/生命分析/部分破壊/再構成/治癒』


 生まれたての魔法、まだこの世界にない魔法がいま出来上がる。


 私の右腕は服の上からでもわかるように青く鈍く発光していた、きっと右目も同じようになっているかもしれない。

 でも、見て_診てこの行為を行ったことを絶対に後悔しない、見捨てたらきっと死んでいた、私は、わたしはもう繰り返さない。



「神父さま、さすがです。」


 瞬時に元に戻った傷に唖然としている神父達に私はそう告げると、少しふらつく体を叱咤し急いで村をでた。

 背後で待ってくれやらように、聖女様などどききたくないせりふが聞こえたが私はいっきに村をでて走り去った。

 あとはギルド迄にげて、今日の報告を行うだけなんだけであの獣だけを発見したと報告し逃げてきたといえばなんとかなるだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る