第19話【VSドラゴン】
上空1000mで俺とレッドドラゴンはぶつかり合っていた。
コイツの強靭な巨体から繰り出す一撃はそれだけで脅威だ。しかもドラゴンには俺の【アイギス】が効かない。
服を変えた所で実のところ意味なんてなかったりする、魔法付加した装備も俺達自慢の障壁も紙のように裂いていくのがドラゴンってやつだ。
牙や爪にまで
「オオオオオオ!」
「グルアアア!」
レッドドラゴンは強化しただろう左爪でこちらに一閃してきた。それを俺も天駆で避けていく。
ドラゴンの
俺は少し距離をあけ、弾丸を連射する。有効射程の強化は意味がある、なので今回の弾丸に弾速強化を徹底している。だかその銃弾はドラゴンの鱗に多少剥がす程度しか意味をなさなかった。
「硬い…44口径のマグナムでこれか」
『ドラゴンはそもそも全身が私のゴーレム並の強度持ちです。銃弾ではあまり効果ないかもしれません』
「なら、これならどうだ!!」
再度銃を連射する。6発の弾丸が同一箇所にぶつかり鱗を貫いたがそこまで深く貫通しなかったようだ。ダメージが見られない。
急所でもないと意味がないのかもしれない。そも貫通強化や爆発弾や凍結弾が使えないのが痛すぎる。
レッドドラゴンは思わぬ反撃に怒りの眼を向け、思い切り息を吸いだした。その兆候に気づいた俺は咄嗟に【バニシングレイ】を発射した。
真紅の極光が【リベリオン】から伸びていく。レッドドラゴンもそれに合わせ4m台の大炎球をこちらに放ってきた。
中空で【バニシングレイ】と大炎球がぶつかり合う、が俺の【バニシングレイ】はその大炎球を易々突破しレッドドラゴンの頭を貫いた。
「グギャアアアアアアア!!!!!!」
「【バニシングレイ】がまるで効いてない…か」
『これだけの密度の砲撃でも分解吸収しますか、流石は超越種』
「最初から期待はしてなかったけど、やっぱ少し凹むぜ」
これでも俺の本気の砲撃だったんだがな、顔面に当たった瞬間に、収束が解かれて俺の魔力が空に散って一部を吸収する瞬間は本当に驚いた。
まぁ流石に奴の遠距離攻撃までにはエクストラは付与されていないとだけ分かったぶん収穫かと思い、今度は接近戦を挑みに天駆で駆け出した。
完全にキレたのか激しい憎悪の瞳を無視し、接近戦の間合いまで近づき斬撃をたたみ込もうとするが、レッドドラゴンも素直に受けてはくれず更に速度を増して上昇しだした。
「待ちやがれ!」
俺もそれを追っていく、一気に距離を離されたがなんとレッドドラゴンは即反転し一気にこちらに落ちてきた。重力も含んだ腕での薙ぎ払い!受けるわけにはいかない!
全身を再強化し無理やり自分の方向を変更する。今までとは比較にならない速度で駆け抜けていたため脚が壊れそうだ。だがこの攻撃だけは受けられない。
受けたらそれだけで終わってしまう。
「ぐ!!アアアアアアア!」
なんとか腕の攻撃は避けたがそのまま突撃され、体当たりを掠めた…ギリギリでヴェンデッタで受けたが信じられない衝撃が全身を貫いた。
受け止めてもこれか、だが舐めるなあ!!
吹き飛ばされながらリベリオンを連射連射連射!鱗には多少の傷が入るんだから奴がボロボロになるまで撃って撃って撃ちまくる!!!
接近戦は奴の巨体の割りに素早いので自殺行為だとわかった、体当たりは避けきれない。
『マスター新規術式作成完了、雷属性付加魔法【エクレールブラスター】です』
体勢を整え二挺で更に連射しつつ、戦闘中新たに作成して貰っていた弾丸の電磁加速魔法完成を聞き即座に展開した。
そもそも俺の弾丸は砲撃だったり魔力弾だったりしなければ物理攻撃なのだ、今の付加では意味がないというなら新しく作ればいい!
二挺で【エクレールブラスター】を連射する、弾丸が蒼白い雷を纏って今までとは比較にならない速度で向かっていく。
「あああああああーーーーーー!」
連射連射連射!何十発もの弾丸が飛んでいくが当たらない。飛翔速度が速く距離も開いてしまった今なかなか当たらない。
何発か当たり弾丸は奴を貫くが効いた様子もありはしない。ドラゴンの非常識なタフさに呆れながらそれでも俺も駆けながら連射していく。
今日はシオンさんに教えてもらった魔法を物にしたことを自慢して褒めてもらうことばかりを考えていたはずだった。
【アクアドール】の魔法を教えてもらった日から何度も何度も練習して、やっと制御できた時は今まで魔法を覚えた時の何倍も嬉しかったことを覚えている。
シオンさんには凄い感謝しているんだ。初めて会って助けてもらった日まで僕は実は少し後悔していたんだ。家から飛び出し行商の人について色んな村や街を巡って。
すごい大変だった。貴族生活ではお世話されてばかりだった僕が一人でこんな所までこれたのは奇跡だったろう。ギルドに入って、魔法で魔物を狩る生活は辛かった。
だれも助けてくれないし、お金はドンドンなくなってく。一度馬小屋に泊まった時はもう帰りたくなってこんな生活嫌になった。
でもあの赤い極光が、シオンさんに合って憧れた。こんな強い人がいるんだと思った。シオンさんと仲良くなりたくて無理にパーティーや師弟関係を迫ったことはちょっと後悔してたけど。でもおかげでシオンさんと仲良くなれた。
僕は大森林を必死で駆け抜ける。
やっとのことでシーサーペントを倒してシオンさんに褒められて。なのに急にグリフォンが襲ってきて、それもシオンさんアッサリ倒してやっぱり凄いと思った。
でもドラゴンが来た、世界の最強種。Sランクが複数人いてやっと互角に戦えるかもしれないってぐらいの超越種。
そんなものがヴァレイグ付近までくるなんておかしなこと聞いたこともないのに。ああ、だれか助けてください。シオンさんが死んじゃう。
後のことなんか考えない全力の強化で駆け続ける。どれだけ走ったのかもうわからない。だけど止まるわけにはいかないんだ。
―――ああ、やっと城砦が見えてきた。
最後スパート、ここ数日魔力空して頑張ったんだ、今ならもっと強化できるんだ。早く速く疾く!!!
「緊急事態です!!ランクSの魔物レッドドラゴンがこちらに向かってきています!!現在仲間が交戦中!お願いします増援を!おねがい!」
「なんだって?ドラゴンだと?そんなやつくるはずが…」
「今までの大森林にいた高ランク魔物は奴が来たからです!あの化け物が深部から来て逃げた魔物がここにきて!だから!」
お願い信じて、ドラゴンの飛翔速度からすればここまで30分もかからないよ。もしかしたら城砦から見えるはずだから。確認してもらってもいい。だから速く――。
「確認してみよう、待っていてくれ」
ああ…死なないでシオンさん。
私の名前はセフィリア・ローレイン、辺境を治める現ローレイン家当主の孫娘です。前まではローレイン家本邸で母と暮らしていたのですが母が不幸に合い1人になってしまいました。
今までは本邸で暮らせたのですが、そのこともありこの辺境の城塞都市ヴァレイグに住むことを当主様に命じられ今は此処に住んでいます。
今までとは違い多少の義務こそありますが自由なこともあり前とは違った楽しさがあって日々が満たされています。
中でもシオンさんに会えて友達になれました。今まで友達どころか同年代の人ともなかなか合えず友達のいない生活が本当に一変して、母がいないのは悲しいです。今でも母が夢にでてくるぐらい。多分ずっと忘れることはできないし。するつもりもありません。
でも今はとても楽しいです。それは駄目でしょうか?
今日は、リアくんがシオンさんと狩りに行く日らしいです。リアくんが教えてもらった魔法をできるようになったらしく成果を見せにいくと言っていました。
私はまだ出すことができただけで制御まではイマイチです。体当たりみたいなことはできるんですけど。その代わり3体まで出せるのは実は自慢です。
シオンさんもいないため今日は残念ですが普通に魔法の勉強をしています。これでもローレイン家の義務として強力な個体の魔物がでたら討伐する必要がありますから。
高魔力を持って生まれた義務かもしれません。でもクラレンスもいるのでやれることなんて大きな魔法を後ろから放つだけしかできないですが。
なんでしょう?なにか騒がしいですね?なにかあったのでしょうか?
「セフィリア様!」
「どうしたのクラレンス?」
子供のころからの護衛兼執事をしてくれるクラレンスが血相を変え部屋に入ってきた。今までどれだけ急いでてもノックを忘れずに入ってくるクラレンスが珍しい。
「―――ドラゴンが現れました」
ドラゴン?あの最強種であり超越種の?でも街が襲われているような音なんてまったくないのに…
「ドラゴン?本当に?」
「はい、現在すでに25km先にだれかと交戦しているのが確認されています」
交戦?そんな…いったいどうすればいいの?
「既に騎士団にも通達が入りました、ギルドも高ランカーが緊急依頼として集められています。多少の時間は稼げるでしょう」
「なら私も!」
「駄目です。セフィリア様は既に馬車を手配しております。ローレイン家までお逃げください。そしてSランカーの手配をお願いします」
「なんで!?だって私の義務は戦うことでしょ?この魔力を!この眼を!生かしてくれたローレインの義務があって…」
そうだ、私には義務がある。こんな眼を持って生まれて高魔力があって、逃げるだなんておかし過ぎる。
「セフィリア様、そのお役目は私が引き受けます。そのための護衛でありそのための私です」
「そんな!?お母様までいなくなって…それなのに今度はクラレンスなの?ドラゴンなんて、天災みたいなものじゃない!?Sランクじゃないと一矢すらどうにもならないよ」
「そうかもしれません、ですがここで一緒に行くこともできないんです。大変申し訳ありませんセフィリア様」
そんなこと言っていつもクラレンスは私のために行っちゃうんだ。今回だって義務を放棄して逃げるなんて許されない私は向かう必要がある。クラレンスは専属護衛として既にAAランクの実力者だ。
逃げる私のための当主への口実として残るつもりなんだ。実力者を置いてきましたっていう口実が。
いつだって、私は守られてばかりで。なにも知らされずここに置かれた義務すら果たせないなんて。
「イヤ、私も戦う。この眼があればドラゴンにだって追いやれるかもしれない」
「無理ですセフィリア様、ドラゴンの
「そんなことない、ドラゴンの無効化は魔法だもの。私の眼ならドラゴンの
そう私のこの魔眼だったら
クラレンスやギルドと騎士団と力を合わせれば上手くいけば倒せるかもしれない。できなくても重症を与えて撃退すればいい。
「私は城砦に向かいます。止めてもいきます、蚊帳の外なんて嬉しくないよ!!!!!」
魔眼を発動し制御の利かない魔力が全身を満たす。そして魔力で強化しクラレンスを押しのけ屋敷を駆け出し城砦へ向かった。
魔杖や増幅系の魔具はディメンションバングル内に入っている。それを走りながら着けていく。
クラレンスも慌ててこちらを追ってくるけど私の魔眼を解放して最大強化した速度には絶対に追いつけない。
強化した身体で駆け抜け、西門へ向かっていった。
あれからどれだけ時間がたったんだろうか?
紙一重の攻防で周りを確認する暇すらない。レッドドラゴンは未だ健在だ。【エクレールブラスター】の銃弾も一体どれほど連射したか分からないほどだ。
息が切れて呼吸がしにくい。脚ももうヘトヘトだ。それでも奴の左腕は壊してやった。隙を見てぶった切ってやったがそのあたりで本格的にキレたようで炎球を連射してくるようになった。
それ自体に脅威はないが牽制にはなる。何度か爪の一撃が身体を掠めたし一度は尻尾の叩きつけ食らってしまった。当たる瞬間に最大強化で肉体強度を高めたけど少し意識が飛んでしまうほどだった。
「はぁ・・・・はぁ・・・うざってぇ」
『意識はしっかりしてますか?』
「ああ・・・」
アーシャが常に命属性回復魔法【リジェネレーション】をかけてくれなかったらもう戦えなかったかもしれない。
街に向かわせるわけには行かないから空中戦を選んだけど正直失敗したかもしれない。
あのクソトカゲがせめて空を飛んでなければ土属性で大質量魔法でも使って押しつぶせるのに。魔法無効化でも練成や操作で元々の質量をぶつけるような魔法は効くんだ。
ずっとなんとか叩き落そうとしても失敗する。あの竜翼さえなくなれば勝てるわけだ。
「・・・・上等だ。ただの赤トカゲにしてやる」
『イエス、マスター。マスターはこんな所で負ける方ではありえません。新規術式作成完了、無属性幻影魔法【ナンバーミラージュ】です』
「よし!【ナンバーミラージュ】」
俺の姿が周りに大量に出現する。残念ながら質量のないただの幻影魔法だが囮には最適だ。一気に散開し今度こそ距離を詰めていく。
レッドドラゴンは大量の俺に驚いたのか更に炎球を連射してくるが俺はそこにはいない。実は幻影魔法と一緒に透明魔法である【ハイド】を掛けてある。
これまでの交戦状況から奴は炎球を連射している状況では滞空しかできない。【ハイド】状態ではそこまで激しく動けなくても問題はない!
「後ろを!」『取りました!!』
「『【エクレールブラスター・ガトリングファイヤ】!!!!!」』
竜翼を徹底的に狙っていく。ドラゴンってのは翼で飛んでいるわけではなく魔力で飛んでいるが翼が必要だ。だから此処さえなんとかして落としちまえば!
『「大地に落ちろオオオオオオオオオオ!!!!」』
電磁加速弾が秒間15発もの速度で連射され竜翼をズタズタにしていく。後ろに出現した俺にレッドドラゴンは驚いているがそこは無視。
ここで落とさなきゃ切り札を切る必要がある。身体に負担もかかるしあれはできるだけ出したくはない。だから―――!
「大地が似合ってんだよ、クソトカゲ」
トドメの魔法のために1つ術式を空に展開。そして俺は自由落下で落ちていく。やっと一息つけた、周りを伺うと大分上空にいたのがよく分かる。
ヴァレイグもかなり近い、10kmもないかもしれない。なら本当にこれで終わらせないと不味い。
着地前に重力魔法で勢いを殺し着地する。レッドドラゴンは翼をズタズタにされ大地に落ちた衝撃でまだ動けていないようだ。
俺は即座に土属性空間属性混成儀式魔法の準備に取り掛かる。まわりの木々を【衝破】で薙ぎ払い、地面に20mを超える魔法陣を展開する。
アーシャのサポートもあり1分ほどで儀式魔法の準備を終え発動した。
「『【ファルミーティア】』」
この魔法は地面を切り取り、空間転移で上空の術式まで送り落下させ大質量をぶつける魔法だ。
準備に1分も掛かるため使いどころは難しいが嵌れば強力な一撃だ。
空から全長20メートルほどの大きさの岩が勢い良く落ちてくる。先ほど空中に置いてある魔法陣には転移のマーキングだけじゃなくて加速系の術式も置いてあった。
レッドドラゴンの2倍の直径の岩だ。流石にまともに食らったら死ぬだろう。
「俺達の勝ちだ。じゃあな超越種、お前は今までで最高に強かったよ」
そしてレッドドラゴンは流星に潰された。
だが。
「グギャアアアアアアアアアア!!!!!」
俺達の放った【ファルミーティア】の巨石が一瞬で粉々になった。
―――ただの魔力放出であの質量を粉砕しただと?一体なにがあった?
赤かったはずの全身が黒に染まっている。全身の傷と苦労してつけた左手の傷も竜翼も癒えている。
口から吐く吐息には黒い炎が混じり瞳は狂気にイカレテいるドラゴンが其処にはいた。
「なんだそりゃ…魔力まで回復してないか?しかも前より増えてら、4000万前後か?強くなってもう一度とかふざけんなよ」
『多分ですが、
「ここで終わるよりかいいって話だな」
クソがこっちはもう魔力が2000万ほどしかありゃしないんだぞ?
これは切り札きるしかない…か。
リ・バース!再誕したけど目標ないよ! 閃 @shiika
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