傀儡の従者
早水早織
第1話 入国
この世には二種類の人間が存在している
魔術によって人間に力を与え操る者。
魔術を与えられ、力を解放し、戦い操られる者
傀儡文明が隆盛を誇りながら、世界の光と影が見え隠れする20世紀半ばに、傀儡師の頂点
――〈覇王〉を決める戦いである〈傀儡大戦〉
が行われようとしていた。
劉建帝国にある傀儡都市で開催される傀儡大戦
に参加するため、傀儡師見習いの少女、結城ヒナタは帝立学院〈アカデミー〉へと入学した。
傀儡大戦を勝ち抜き、覇王となった暁には
富、名声、地位といったあらゆるものを自らのものに出来ると言われている。
ヒナタの願いは立派な傀儡師になる事と故郷〈迦楼羅〉の再建。それと…
故郷、迦楼羅から汽車に乗って丸5日、ようやくたどり着いた劉建帝国。
迦楼羅とは比べものにならない程の規模と人の数、華やかさも一味違う。
「はぁ…私、立派な傀儡師になれるのかな…?」
緊張と不安で胸が張り裂けそうな気分になる。
元々、結城一族は傀儡の名門としてその名が
広く知られている。
母はアカデミーを首席で卒業し、父は傀儡師の頂点〈覇王〉の直下の精鋭部隊〈四豪将〉の一人、という名門の長女として産まれたヒナタだったが、その実力は乏しかった。
明日の正午からアカデミーの入学式があり、
今日のヒナタの予定は必要書類の事前提出と宿舎への挨拶。
書類の提出を難なく済まし、宿舎への挨拶も済んだ。同じ宿舎には同性しか居ないので一安心だった。
持参した荷物の整理をし、1日の疲れをお風呂でゆっくりと取る。ヒナタにとって至福のひと時だった。
上がってからは、明日のタイムスケジュールを確認し、寝床に入り、入国初日が終わりを迎えた。
—「結城、起きろ、いつまで寝ている」
何処からともなく怒鳴り声が聞こえ目を覚ますヒナタ。
「入学初日から遅刻か貴様は?随分と生意気じゃないか?さっさと準備をしろ」
「す、すみません…」
ヒナタの初日は寝坊という最悪の形で幕を開けたのだった。
傀儡の従者 早水早織 @ayahina
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