メロンだったら良かったのかもしれない
水池亘
メロンだったら良かったのかもしれない
一年ぶりに会った彼女はスイカになっていた。
「見て見て、ゆーくん。私、美味しそうでしょ?」
緑色に輝く彼女の姿を見て、僕は自分の間違いを思い知らされた。
人は、なろうと思えば何にだってなれるのだ。
*
夏川志織がスイカになりたいと言いだしたのは、彼女が中三に進学して、「カナちゃんと違うクラスになっちゃったよ」なんて少し残念そうな顔で拗ねていたころのことだったと思う。
初めての進路面談で、志織は「高校には行きません」ときっぱり宣言した。
「高校に行かないで、私、スイカになります」
当然、かなり揉めた。毎日教員室に呼び出されて、何時間も戻ってこなかった。
スイカになれるかどうかはともかく、高校には行きなさい。
それが担任の説得だった。正論には違いない。僕だって同じ立場ならそう言う。ついでに、スイカになんてなれっこないとも言うかもしれない。
だが、そんな言葉で納得する志織ではなかった。
「先生がね、高校生活は絶対に君のためになるから、とても楽しいからって、すごく真剣なんだ。先生と私は違うのにね。不思議だよね」
もう日も暮れかかった午後五時半、僕と志織は帰り道を二人で歩いていた。脚が長いのは僕の方なのに、前に出るのは決まって志織が先だった。
「ゆーくんだって、そう思うでしょ?」
「思うわけないだろ」
「えー」
頬をふくらませて、僕をにらむ。
「そっか、ゆーくんは先生の味方なんだ。悪魔の手先だったんだね。知らなかったよ」
「人聞きの悪いこと言うなよ。僕は常識の味方なんだ」
「常識なんてわからないよ、私」
彼女は皮肉で言っているのではない。心の底から、常識というものに馴染みがないのだ。
うらやましいな、と、ときどき思う。
その後、志織と学校の間でどう決着がついたのかは知らない。彼女から折れることはありえないから、きっと学校側があきらめたのだと思う。
どうせ彼女も、何百人の生徒の一人なのだし。
わからないのは、彼女がスイカを選んだ理由だ。
「だって、スイカはしゃくしゃくで甘くて美味しいよ」
きょとんとした顔で志織は答える。
「うん、たしかに、スイカはしゃくしゃくで甘くて美味しい。僕も好きだよ。でも、志織、じゃあマグロのにぎり寿司は?」
「好きー」
「大粒いちごのショートケーキは?」
「大好きー」
「だろ。だったら、スイカを選ぶ必然性はないじゃないか」
「あるんだよ」
「わからないな」
僕は呆れたように首を振った。
「志織、どうしてスイカになんてなりたいんだ?」
その言葉に、志織は「えへへ」と恥ずかしそうに舌を出した。少し顔を赤らめて、背伸びするように僕に笑った。
「ゆーくんにだって、内緒だよっ!」
僕だけでなく、彼女は誰にも理由を言わなかった。親にすら隠していたらしく、ある夜、僕の家に一人の男性が訪ねてきた。
「志織の父ですが」
僕は彼のことが苦手だった。彫りの深いその瞳を見るたび、僕の体はきゅっと小さくなった。きっと、失われた記憶のどこかで、彼に強く叱られたことがあるのだろう。
「すみません、父も母も、今はいないんです」
それで帰ると思っていたけれど、もちろん甘かった。
「君に用があるんだ、石井祐介君」
彼の悩みは、要約すれば、自分の娘が何を考えているのかよくわからないという、どこにでも転がっているようなものだった。
「祐介君は、志織と仲良くしてくれているね」
「ええ、まあ」
してくれている、という言い方に内心イラッとしながら、僕は適当に答える。
「君ならわかると思うが、志織は少し変わったところがあるだろう」
「そうですね」
「不思議なことを口走ったり、見えないものを見ようとしたり」
「よくあります」
「あれで頭は良い方だとは思うのだが」
この台詞は親馬鹿ではない。実際、彼女の成績は学年でも一桁に入る。受験をすれば、地区のトップ校も十分に狙えるはずだ。
「そんな娘が、スイカになると言いだした」
「知ってます」
「高校にも行かないと言ってきかない」
「知ってます」
「こんな話は退屈かな」
「……いえ、別に」
僕はテーブルに視線を落とした。彼は「いや、独り言だ。忘れてくれ」と笑いもせずに言う。
「勘違いしないで欲しいのだが」
話しながら、彼はホットコーヒーにティースプーンを入れ、くるくるとかき回している。この状況が落ち着かないのかもしれない。
「別に、志織に反対したいわけではないんだ。娘の夢なのだから、父として、それは応援したいと思っている」
僕はおもむろに顔を上げた。ひさしぶりに、彼の顔を正面から見た。
「本気ですか」
「ああ。ひとしきり悩みはしただがね。結局は、彼女のやりたいようにやらせてやるのが一番なんだ。ただし、一年間だけという条件を付けた。卒業したら、一年かけて、スイカになれるよう本気で努力しなさい。そして、駄目だったそのときは、受験をして高校に行きなさい、と。娘は納得してくれたよ」
「……本気なんですね」
「意外かな」
僕は返事をしなかった。
「ただね、祐介君。それでもやはり気にはなるんだ。どうして志織はスイカになりたいと願うようになったのか、その理由が」
コーヒーを回す手が止まった。
「祐介君は、何か知らないかな」
なるほど、と僕は思った。彼はきっと、この質問のために今日ここを訪れたのだ。
「……残念ですが」本心から言った。「僕も、全く知りません。そのことについて、志織は何も教えてはくれません」
「そうか……」
彼は少しだけ落胆の色を見せた。
「祐介君なら、あるいはと思ったのだが」
「家族に教えていないものを、僕に教えるわけがありません」
「そんなことはない。志織からすれば、私などより君の方がよほど大切な存在だよ」
「まさか。彼女にとって、僕はただの幼なじみです」
「そうか? まあ、君がそう言うのなら、そうなのかもしれない」
彼はカップを手に取り、散々かき混ぜてぬるくなったコーヒーをくっと一口飲んだ。
「だが、君は違うだろう?」
その言葉に僕は目をそらした。
「……余計なお世話です」
「はは、すまない」
そして彼は、今日初めての笑顔を見せた。
*
受験勉強の波がやってきて、あたりまえのように僕も飲み込まれた。木枯らしが吹く前に、僕は塾に通い始めた。一度だけ、一緒に行かないかと志織を誘ったけれど、帰ってきたのはにべもない返事だった。
「今ね、スイカの流通ルートを調べてるんだ」
「それはまた、高尚なご趣味で」
「ゆーくんはイヤミを言うよねえ。そんな性格だとモテないよ」
親子そろって、余計なお世話だ。
「でも、どうしてそんなこと調べてるのさ」
「だってスイカになったら、誰かに食べてもらわないといけないでしょ」
その言葉の意味を、僕は時間をかけて租借した。
飲み込めなかった。
「誰かに、食べてもらう?」
「スイカ作りって大変なんだよ。種まきから収穫まで半年以上かかるし、手間も多くて。ようやくできあがったら、出荷して、全国に運ばれて、最後はお客にポンポンって叩かれて。あ、でも今は切ってから売ることの方が多いか」
「いや、そういうことじゃなくてさ」
僕はまくし立てる。
「人が作ったスイカは、人が食べるためにある。それはわかる。農家も、流通業者も、立派な仕事だと思うよ。でも志織は違うだろ。自分のために、自分から望んでスイカになるんだろ。だったらそれで終わりじゃないか。誰かの食べ物になる必要なんて、全くない」
「でもね、ゆーくん。美味しいスイカは、人をニコニコにさせるんだよ」
僕たちの会話は微妙にズレて噛み合わない。でも、それは予想されたことだった。志織と本気で対峙するということは、このすれ違いと正面から向き合うことに等しい。
そのときの僕は、きっと本気だった。
だから、言葉を止めることはできなかった。
「食べられたら、志織は死ぬんだぞ!」
その事実を彼女が知らないわけはない。
それでも志織は笑顔のままだった。
「だって、それはスイカだもの。人生を全うするんだよ。悲しくなんて全然ない」
あっけらかんと志織は言った。
「そんなわけないだろ!」
「どうして」
「どうしてって……だって、そんなの、あたりまえじゃないか」
その言葉に、彼女は露骨にがっかりした。ため息をついて、首を横に振った。
「そんなこと言うんだね、ゆーくん。だったらさ」
くるりと向きなおって、人差し指を僕の唇に立てた。
「ゆーくんには食べさせてあげないからね」
*
宣言通り、志織は受験をしなかった。それでも彼女は毎日学校に通っていた。皆と同じように授業を受け、同じように勉強をした。
まあ実際のところ、スイカになれなければ一年後には受験が待っているのだから、それを見据えて基礎学力をため込んでいるという側面はあっただろう。志織はただ夢を見るだけの少女ではない。自分の未来について、きちんと真剣に考えている。考えていると思う。
周囲はもう誰も反対しないようだった。誰も彼も、応援に回るか、あきらめるか、興味をなくすかしていた。
僕ひとりを除いて。
屋上で冷たい風を頬に受けるのが彼女の好みだった。
「冬はね、これができるから楽しみなんだよ」
「ああ、こんなに寒くなければね」
乾いた空気が首筋をなでる。僕は思わずコートのえりを立てた。
「僕は夏の方が好きだな」
「どうして?」
「女の子の素肌が見られるから」
「その言葉、ゆーくんがもうちょっとカッコよかったら似合うのにね」
「うるさいよ」
僕はぺしりと軽く志織の額を叩いた。へへっと猫のように笑う彼女の姿に、そういえばもう二月に入ったことをふと思いだす。
「ゆーくん、どこ受けるか決めた?」
「西高」
「わっ、かなりレベル上げたんだね。すごいね」
「お世辞言うなよ。西高なんて志織には難しくもないだろ」
「そうやってすぐ卑屈になるの、ゆーくんの悪いクセだよ」
「どうも失礼しましたね」
「ほらまたそうやってー」
卑屈になるのもしかたがない、そう僕は思う。
本当は、志織に見合うだけの学校を受験したかった。
「なあ、志織」
「なあに?」
小首をかしげて、僕に微笑みかける。
なあ、志織。
スイカになるなんて馬鹿なことやめろよ。
僕も、きみも、人間なんだ。
植物とは何から何まで構造が違うんだ。
無理だよ。
なろうと思っても、なれないものはあるんだ。
だからさ、もうあきらめて、僕と一緒に高校に行こう。
一緒に退屈な授業で眠って、一緒にテニス部で黄色い球を打とう。
テニスが嫌なら、卓球でも、将棋でも、何でもいい。
きっと、楽しいから。
だから。
「……いや、何でもない」
結局、僕は自信がなかった。
自分のことにも、志織のことにも。
「なにそれ、変なの」
彼女が少し困ったように笑う。
その笑顔に僕の手が届く日は、たぶん、もう訪れない。
なろうと思っても、なれないものはあるのだ。
*
そうして僕は、ただの高校生になった。
あたりまえだけれど、志織は入学式に来なかった。西高の講堂で、僕は居るはずのない彼女の姿を探した。なんだか足りないものが常に近くにちらついているかのような、そんな気分がしばらく続いた。
高校生活の忙しさは僕の予想を越えていた。元々僕には過分なレベルの学校だったから、僕は毎日数時間の自習をしなければならなかった。もちろん部活も大変だった。テニスのラケットをただ振るうだけの放課後を何日も過ごした。
僕は現在を生きることで精一杯になっていた。未来のことも、過去のことも、考える余裕はなくなっていった。
週末には図書室へ足を運んだ。僕にとって、もっとも集中のできる学習スペースがそこだった。教科書も参考書も全てそろっていたから、荷物が少なくて済むのもありがたかった。
僕と同じような生徒は何人かいて、その内の一人と仲良くなった。大柄で上品な、二年生の女子だった。彼女は数学に秀でていて、ことあるごとに僕に解法を教えてくれた。「三浦先輩の教え方、すごくわかりやすいですね」と正直な感想を述べると、彼女は少しハニカんで、「小学校の先生になるのが夢ですの」と語った。
二学期の終わりごろ、彼女から告白を受けた。
僕はそれを了承した。
楽しいと思うことは多々あった。
充実していると感じられる瞬間もあった。
どうやら僕は、この多忙な毎日に案外満足しているようだった。
やらなければいけないことがたくさんあれば、思いだすことは少なくて済むのだと知った。
そうして僕は、ただの高校生のまま、二年目の夏を迎えた。
*
連絡手段は手紙だった。内容は、短く簡素だった
スイカになりました。
ようやく会えるよ、ゆーくん。
*
「もう一年半も経っちゃったねえ」
その言葉には再会を喜んでいる空気があった。彼女にはもう表情がなくなっていたから、僕は台詞の響きから感情を読み取るしかなかった。
「ゆーくんはどうしてるの、今」
「普通に高校生やってるよ」
「普通?」
彼女が丸い体を少し転がす。たぶん、首をかしげたつもりなのだと思う。
「普通って、どういうこと?」
「一般的な高校生と同じってことだよ。勉強したり、部活したり、あとは彼女とデートしたり」
最後の言葉を僕はあえて口にした。
「わっ、デート!」
体を揺らして彼女は驚いた。
「そっか、ゆーくんにもついに春がねえ。おめでとー」
無邪気に祝福する志織の姿を見て、僕は少しだけ落胆した。ほんの少しでも残念がってくれたらいいのに。そんなことを考えてしまって、自分がひどく卑しい人間であるような気分になった。
「志織はどうだったのさ。卒業してから、これまで」
「そりゃあ孤独だったよ。たったひとりでがんばったんだよ」
どれだけ頑張れば人がスイカになれるのか、僕には見当もつかない。
「呼んでくれれば良かったのに。僕だって、話相手になるくらいはできたよ」
「ゆーくんには高校があるじゃない。新しい生活に飛び込むのは、きっと、私と同じくらい大変だと思ったんだ。だから、邪魔しちゃいけないかなって」
「そんな遠慮、僕にする必要ないだろ」
「ゆーくんだからこそ遠慮しちゃうんだよ」
僕はとっさに言葉が出なかった。
「……志織、少し大人になったかもな」
「あー。いいこと言うねえ、ゆーくん」
ころりと前転して、彼女は照れたようにえへへと笑った。
スイカの賞味期限は、収穫から二週間程度だという。
それを過ぎると、品質がどんどん劣化していく。
「だからね、早く売ってもらわないといけないの」
「売る? 何を」
僕はタオルケットにくるまりながら、彼女に尋ねる。
特別に冷却されたこの部屋は、常に十度前後に保たれている。薄着の身には少し肌寒いくらいの温度だった。
「私に決まってるじゃない。正規の流通に乗ってないスイカって、大手のスーパーは嫌がるんだよね。特別扱いするわけにもいかないし」
「しゃべって動けるスイカなんて一億出しても買うって人もいそうだけど」
「そういうのは私が嫌なのー」
拗ねたように、その場でくるんと一回転する。緑と黒のシマシマが一瞬だけ溶けあった。
「私は美味しいスイカなの。しゃくしゃくで甘いスイカなの。だから、他のスイカと同じように、誰かに美味しく食べてもらいたいんだよ。驚いてもらいたいわけじゃない」
「なるほどね」
僕は頷いてみせたけれど、本音を言えば、やっぱりよくわからなかった。ただ、志織らしいなという感覚だけが漠然とあった。
「だからね、そういう気持ちをわかってくれるような、個人経営の八百屋さんがいいと思うんだ。でもそういうお店って、もうあんまりなくなっちゃってて」
「まあ、そうだろうなあ」
「ゆーくん、心当たりある?」
「ないよ」
僕は短く答えた。
たとえ心当たりがあったとしても、同じ答えを返すような気がした。
「そっかー。じゃあ、もう少し遠くの方も探してみるよ。私がしわしわになっちゃう前に」
「しわしわになるの? スイカが」
「そうだよー。色も落ちちゃうし。そういうのって、女の子には許せないよね。やっぱり若くてつやつやなうちに食べてもらわないと。人間だってそうでしょ?」
その言葉に初老の志織を想像しそうになって、僕は慌てて頭を振った。
*
僕は毎日、志織の部屋にった。残された時間はもう多くなかった。自習を放棄し、部活を放棄した。恋人からのデートの誘いも、用事があると断った。そんなことは初めてだった。不審に思った先輩から電話がかかってきたのは、夜の十一時過ぎだった。
「ようやく出てくれたわね、祐介さん」
「すみません、いろいろ忙しくて」
「女?」
「……そういうことじゃ、ないです」
一瞬だけ反応が遅れたのを彼女は聞き逃さなかった。
「やっぱり浮気してるんですのね」
「違いますって!」
「ならどういう用事だったのか言ってごらんなさい」
僕は電話口に入らないようにため息をついた。少し思案して、正直に全て話すことにした。「……適当な嘘言ってません? 祐介さん」
「本当に嘘なら、こんな突拍子もない話になんてしませんよ」
「それはそうですけれど……」
彼女はまだ納得していないようで、ぶつぶつと何事か呟いている。
なあなあで終わらせるのは、どうやら無理らしい。
「わかりました、先輩。じゃあ、彼女と会ってください」
「え?」
「きちんと紹介します、志織のこと」
丸い志織の姿を見て、先輩はやっぱり息を飲んだ。だがそれは一瞬のことだった。気を取りなおした彼女は、丸々としたスイカを仁王立ちでにらみつけた。
「あなたが志織さん?」
「はい。ゆーくんの幼なじみです」
その言葉に、先輩の眉がぴくりと動く。
「へえ、『ゆーくん』ですか」
「はい。ゆーくんとはずっと仲良くしてるんです」
「それは、それは」
最悪の居心地だった。
仲の良い女性同士の舌戦なんて、見たいわけがない。
けれどもちろん、「後はどうぞお二人で」なんて言えるはずもなかった。
「祐介さんって、本当に優柔不断でして。デートでもイライラしっぱなしですわ」
「だよねー。三歳のころからそうだよ」
「まあ! 三つ子の魂なんとやら、ですわね」
二人は声をそろえて笑いあう。
ううむ。
僕は心の中で唸った。
まさか、こんなにあっさり意気投合するなんて。
女子という生き物は、やっぱりよくわからない。
「祐介さんの子供時代のこと、聞かせてくれません?」
「いいよー。面白いエピソード、いっぱいだからね」
帰路に就いたのは、日が変わる直前だった。
街灯が頼りなく灯るこの路地は、夜に歩くと非常に怖い。それを知っていてなお、先輩は志織とのおしゃべりを選んだのだった。
「志織さん、本当に良い子でしたわね」
「そうですか?」
「嬉しそうな顔してますわよ、祐介さん」
指摘され、僕は慌てて顔を手でおおった。そんな行為でごまかせるわけもなかった。
「良いじゃありませんの。大切な幼なじみなのでしょう」
「……はい」僕は降参した。「そうです。僕にとって、志織は誰より大切な幼なじみでした」
「過去形?」
「そうですよ。今一番大切な人は、あなたです」
「本当かしら」
「本当ですよ」
「あのね、祐介さん」
先輩はぐっと顔を近づけた。見たことのない真剣な表情をしていた。
「自分の気持ちに嘘をつくのは最大の罪ですわよ」
「だから、嘘じゃありませんって」
「よくよく考えてみるべきです。考えて考えて考え抜いて、その結果、あなたの気持ちが志織さんの方に向いていたのだとしたら、それをきちんと彼女に伝えなさい。私のことはかまいませんから」
「ですが、先輩」
僕は戸惑ったまま言う。
「志織はもうスイカなんですよ」
「そんなことは関係ないでしょうが!」
彼女の激しい叱咤に、僕は何も返せなかった。
「きっとね、祐介さん。志織さんは、あなたのその言葉をずっと待ってる。三歳のころから今この瞬間まで、ずっとずっと待ち続けているんですのよ」
「そんな……」僕は強く首を振った。「そんなこと、あるわけがない」
「祐介さんがそう思うのも無理はありません。おそらく、彼女自身も気づいてないことでしょう。ですが、祐介さん。私にははっきりとわかるんですのよ」
そこで先輩はふっと微笑んだ。なんだか寂しそうな微笑みに見えた。
「私は、祐介さんの彼女ですから」
それから三日後、志織を売ってくれる八百屋が見つかったと連絡があった。
「二駅くらい向こうにあってね、いい野菜だけ売ってるって評判のお店なんだよ」
彼女の言葉は弾んでいた。未来への希望にあふれているように見えた。
数日もすれば、志織は売りに出される。そして誰かに食べられる。
僕の知らない彼女の味を、僕の知らない誰かが知る。
僕は決断しなければならなかった。
*
水曜日の放課後、僕は大きなリュックサックを抱えて志織の部屋を訪れた。彼女の両親からは宿泊の了承を得ていた。実家とはいえ、思春期の男女が一晩を共にするなんて普通は許されないだろう。本当にありがたいことだった。だから、これからの行為を考えると少し胸が痛んだ。
「泊まるにしたって、そんなに荷物いらないと思うな」
志織の言葉に答えず、僕はリュックを開けた。中から銀色に光る鞄を取り出した。大きめで、立方体の箱型をしていた。
「なにそれ?」
「保冷バッグ」
ファスナーを引っ張って、バッグのふたを開いた。中にはすでに緩衝材を敷いてあった。彼女に合わせ、大きく球形にくぼませていた。周りには保冷剤を並べて、内部を十度前後に保たせるようにしていた。
「どこに行きたい? 志織」
彼女の理解はすばやかった。
「海!」
海に行くには自転車が必要だった。
志織の両親に、忘れ物をしたと伝えて家を出た。そんな大きなリュックサックは置いて行ったらどうだと言われたので、これがないと持ち運べないくらい大きなものなんですと答えた。中を見られたらと思うと、脚が少し震えた。
自宅までは徒歩で一五分の道のりだった。足早に帰宅して、用意していた色々なものをリュックに詰め込んだ。
ペットボトルのミネラルウォーター。
やわらかなハンドタオル。
保冷剤の予備。
低反発クッション。
替えの下着。
その他、考えられるかぎりの物をしまい、ふくれたリュックを肩に背負った。ずしりとした重みに体が少し軋んだ。銀の保冷バッグをつかんで外に出ると、紅色の日光があたりを鋭く照らしていた。僕は自転車の前カゴに、保冷バッグを慎重に入れた。方々探して見つけた、通常の倍はあるような大きなカゴだった。バッグはゴムフックで固定した。何度か引っ張って、カゴから飛び出さないことを確認した。そして、ふたを開け、志織の丸い素肌を外気にさらした。
「志織、僕が見えるか?」
「見えるよー」
「痛くないか?」
「うん。ちょっとくすぐったいけど」
「ごめん、我慢して。暑かったりはしないね?」
「少しだけ。でも、大丈夫だよ」
「途中でコンビニに寄って、氷を買おう」
「あ、それ気持ちいいかも。ついでにアイスが食べたいな。スイカバーってあるでしょ。チョコのつぶつぶがおいしいやつ」
「あれは僕も好きだよ。一緒に海で食べようか」
「わーい」
そんなことは不可能だと、僕も志織もわかっていた。
「ゆーくーん」
風を切る音に負けないよう、志織が大声を出す。
「あとどれくらいー?」
「二時間くらいだね、たぶん」
僕は一心にペダルをこぎながら答える。
「夜になっちゃうねえ。海、ちゃんと見えるかな」
「一応、懐中電灯は持ってきたよ」
「うわー、ゆーくん気が利くねー」
目指しているのは近くの砂浜だった。あまりに小さくて面白味のかけらもないから、地元の人すら滅多に訪れない。今の僕たちには絶好のポイントだ。
交差点を左に曲がる。すぐそばを車がひゅんと通って、僕は少しバランスを崩した。とっさに志織を片手で押さえる。「ひゃっ」と彼女が小さく声を上げた。
「怖かった?」
「違うよ、ゆーくん」
彼女は拗ねたように言う。
「許可なく女性の肌に触れるのはマナー違反なんだよ」
「あ、そうか」
「そうか、じゃないよー。もっと女の子扱いしてよね、いくら幼なじみでもさ」
「ごめん」
もう日は地平線に隠れる直前で、反対側には一番星が見えた。雲ひとつない快晴だった。
しばらく行くと、だんだん人通りが少なくなっていった。すれ違う車も減り、信号はたまにしか見かけなくなった。
夜の暗闇が、僕たちを包んでいた。
「ねえ、ゆーくん」
「ん?」一時間以上も漕ぎ続けて、僕はかなり疲労がたまっていた。「何か言った?」
「いいの。聞こえなかったら聞こえないでいいから、聞いて」
「……ああ」
僕は少し速度を落とした。浮いた力を、耳に集めようとした。
「ゆーくんは覚えてる? 七歳のとき、私たち二人でゆーくんのおばあちゃんちに行ったよね」
「そうだっけ」
記憶はあいまいだった。ぼんやりと思い出せるような気もしたけれど、その体力がなかった。
「八月の、すごく暑い日だった。私、お庭で白い蝶々を見たの」
「蝶?」
「うん。夏にいるはずのない、きれいな蝶々。ひらひらと舞って、外に出ていったから、私、うしろをついていったの。悪いことだなんて全然思わなかった。気がついたら蝶々はもう消えてて、私、自分が今どこにいるのか、わからなくなってた」
遠くの方から、カナカナとセミの声が聞こえていた。ぬるい風が、ときおり僕と志織の皮膚をなでた。
「そこはどこかのあぜ道で、見回しても人のひとりもいなかった。いつのまにか日が暮れかけていて、あたりはだんだん暗くなっていった。私、なんだかすごく怖くなって、うずくまって震えてた」
自転車の小刻みな振動が志織の体を揺らしていた。僕がペダルをこぐたびに、軋んだチェーンがカラカラ音を立てた。
「たぶん私、泣いてた。きっともう助からないんだ。誰とも会えないまま、お化けか怪物に襲われて死んじゃうんだって、しくしく泣きながら地面を見てた」
高い信号が黄色の点滅をくり返していた。道ばたの建物がまばらになって、ときおり窓から漏れる人工の光が僕たちの影をアスファルトに映した。
「そのとき、いきなり肩を叩かれて、私、びくっと震えた。振り返るとゆーくんがいた。ほら、帰るよって、そう言って私の左手を握った」
砂浜の場所を示す立て看板が見えた。もうあと五分もすれば、僕たちは一緒に海を見られるはずだった。
「その日の夜、私、初めてスイカを食べたの」
パンと不吉な音がして、自転車が大きく跳ねた。
修理用具は持ってきていなかった。
「ゆーくんは肝心なところで爪が甘いよね」
「うるさいな」
しかたなく僕は手押しで行くことにした。この状態では、到着まであと二十分くらいはかかってしまいそうだった。
「どうするかな、帰りは」
「あれ、ゆーくん、帰るつもりだったんだ」
駆け落ちかと思ってたや。
笑う志織の言葉に、僕は少し顔が赤くなった。
「いいから、少し休んでろ」
予備の保冷剤をいくつか乱暴に投げ入れ、ふたを閉めた。しばらくの間、中でばたばたと暴れる音がしていたけれど、やがて収まり、静かになった。
*
海の匂いを感じたのはいつ以来だろう。
ざん、ざざんと波の音を背景に、志織は砂浜で転げまわっている。どうやら、はしゃいでいるらしい。
「あんまり海に近づくなよ。流されるぞ」
「わかってるよー」
僕は彼女の周りを懐中電灯で照らしていた。光の中で回転する彼女はバレリーナのようにも見えた。この世でただ一人の、スイカのバレリーナだ。
「きゃっ!」
彼女が叫んで動きを止めた。僕が駆け寄ると、えへへと恥ずかしそうに笑った。
「貝殻ふんじゃったみたい」
「怪我したのか? 見せろよ」
「大丈夫だよ」
「いいから」
光を当ててよく見ると、うっすらと引っ掻いたような傷があった。僕はミネラルウォーターをふりかけ、ハンドタオルでキュッと数回みがいた。
「ほんとに大丈夫だから、ゆーくん。少しの傷なんて、スイカにはあたりまえだもの」
「強がり言うなよ。いいから、じっとしてて」
「……ありがと」
彼女の小さな呟きに、僕は聞こえないふりをする。
僕たちは波から少し離れ、二人並んで座った。彼女の下にクッションを敷こうとすると、どれだけ過保護なのと笑われた。しかたなく僕は体育座りをして、海の向こうへクッションを放り投げた。
「ゆーくんも遊んできたら? せっかくの海だよ」
「僕はいいよ。ちょっと疲れたし、ここにいるだけで十分」
「そう? じゃあ私もここにいる」
彼女はころりと僕に肌を寄せた。
「ねえ、ひざの上に乗っけてよ」
それは予想外の要求だった。僕は小さく声を上げ、慌てて両手を振った。
「そんな、それは、ちょっと、その」
「なーに、その態度!」
彼女は怒ったように叫んで、ごつんと僕に体当りをした。
「女の子に恥をかかせるなんて、それでも男の子なの?」
「ご、ごめん」
僕は慌てて彼女を両手で持ち上げた。ひざの上に乗せると、自然と抱きかかえるような形になった。彼女の肌はひんやりと冷たく、そして硬かった。
「ふふ、ちょっとくすぐったいね」
彼女が照れたような声を上げる。
「志織だって恥ずかしいんじゃないか」
「そりゃあそうだよ。あたりまえだよ」
彼女が少し体をゆすった。つるりとした表面が皮膚をなでる感触に、僕はなんだか奇妙なドキドキを感じた。
ふと思い立って、僕は彼女の体に耳を当てた。息を細くして、神経を聴力に集中させた。それでも、聞こえるものは何もなかった。
もう二度と、彼女はドキドキすることができない。
スイカの中には、種はあっても心臓はないのだから。
「……志織」
「なに?」
「食べてもいいかな」
彼女の肌が冷たさを増した。波の音が一瞬だけ遠のいた。
「……駄目だよ、ゆーくん」
「どうして!」
「だって、ゆーくん、私食べたら泣いちゃうでしょ」
僕は返事に詰まった。
彼女の言うとおりだった。
僕はきっと、涙を流すために彼女を食べようとしている。
「私はね、私を食べてくれた人に笑顔になってほしいんだ。しゃくしゃくだね、甘いね、美味しいねって、笑ってほしいんだよ。だから、ゆーくんに食べさせてあげることはできないよ」
体の中で、彼女はくるりと僕に向き直った。
「ごめんね、ゆーくん」
本当は、ここで僕は何も言うべきではなかったのだと思う。ただ寂しそうに笑って、彼女をきゅっと抱きしめれば良かったのだと思う。
でも、そんなことができるわけなかった。
「そんなのってないだろ! 志織が誰かに食べられて、残された僕はどうなるんだよ! 志織のいない世界を、これから僕は何十年も生き続けなきゃいけない。そんなの嫌だよ! スイカになれたなら人間にだって戻れるだろ! そしたら一緒に高校に行こうよ。退屈な授業は一緒に眠ろう。放課後になったらテニスをしよう。テニスが嫌なら、卓球でも、将棋でも、何だっていいんだ。きっと、楽しいから。僕が楽しくしてみせるから。だから!」
ざぱんと一際大きな波が弾けた。それを最後に、潮の音が止んだ。
「……遅すぎるよ、ゆーくん」
その言葉は、笑っているようにも泣いているようにも聞こえた。彼女はもうスイカだから、その表情を読み取ることは不可能だった。
「もしも、あの日、あの屋上で、それを言ってくれたのなら……」
それでも僕には確信があった。
きっと、今、志織は笑っている。
あの日、あの屋上で僕に見せたように、少し困った顔で微笑んでいる。
「違った世界もあったのかもね、ゆーくん」
彼女が先に眠った。
僕は冷たい感触を感じながら、いつまでもまどろみ続けた。
*
僕たちは朝方の五時に警察に発見された。パトカーに乗るのはもちろん初めてだった。志織の両親には「ありがとう」と短く言われた。いっそ殴ってくれた方が嬉しかった。
玄関先で、志織に声をかけられた。
「またね、ゆーくん」
「ああ、また」
それはもはや起こり得ることのない未来の話だった。
志織が、手を振るように、緑色の体を左右に揺らす。
僕の見た最後の彼女の姿だった。
*
一週間後、手紙が届いた。
訃報。
それ自体は予想していたことだった。だか、添えられていた無骨な文字が僕を戸惑わせた。
祐介君に話したいことがある。
僕を目の前にしても、彼はなかなか本題に入ろうとしなかった。ただ深刻な顔をして、黙ってコーヒーをかき混ぜていた。
彼が決意を固めるのを、僕は静かに待ち続けた。尋常でないことは空気でわかった。何を言われるのか気が気でなかったけれど、急かすことは僕にはできなかった。
しばらくして、彼はぽつりぽつりと語り始めた。
志織は望みを完全には叶えられなかった。
彼女は子沢山の家庭に買われ、そのまま近くの海水浴場へと連れていかれた。彼らは志織を使ってスイカ割りを楽しもうとしていた。そのこと自体に問題はなかった。
問題は、木刀を持ったのが怪力自慢の柔道少年だったことだ。
志織の体はぐちゃぐちゃに飛び散り、砂と混じって食べ物にならなくなった。
家族はあきらめて彼女をゴミ袋に捨てた。そして新たなスイカを買ってきて、今度は包丁で切り分けて美味しく食べた。
「娘の無念を思うと、もう……」
彼は声を詰まらせると、それ以上何も言わなかった。
*
僕は生まれて初めて黒いネクタイをして、からっぽの棺桶に花を手向けた。遺影はスイカの姿だった。彼女自身の希望だったと後で聞いた。
黙祷と言われて僕は目をつむった。頭の中で、決意を固めた。それは僕が絶対にやらなければならないことだと思った。
彼女のため?
いや、きっと、自分のために。
その中学校は駅を降りて五分のところにあった。僕は正門から少し離れた電柱に寄りかかり、待ち合わせでもしているかのように腕を組んだ。最終下校の時刻が近かった。帰宅する生徒がちらちらと僕の方を見てきたけれど、気にしないようにした。
柔道部が毎日ぎりぎりまで練習しているということは調査済みだった。あとしばらくもしないうちに、彼は正門から吐き出されてくるはずだった。
六時を告げるチャイムから数分、彼が姿を現した。
運の良いことに、周りには誰もいなかった。彼が通り過ぎる瞬間、僕はぱっと通りに飛び出した。体で進路をふさぎ、驚く彼を正面から見据えた。
「及川勇気君だな」
僕が確認すると、彼は少し怯えたように「あなた、誰ですか?」と僕から体を遠ざけた。
「君は、二週間前の日曜日、稲毛海水浴場でスイカ割りをした」
「……それが何か」
「力一杯木刀を振るった君は、見事にスイカを粉砕した。散らばったスイカは食べずに捨てて、新しく買ったスイカを食べた。そうだな?」
「何なんですか、一体」
逃げようとする彼の腕を僕は掴んだ。
「君が捨てたスイカは、食べようと思えば食べられたんじゃないか?」
「離してください!」
「混じった砂は、必死に洗えば落ちたんじゃないか? どうして君はそうしなかったんだ? 簡単にあきらめてゴミに捨てたのは何故だ?」
「大人を呼びますよ!」
「答えろ及川ァ!」
僕は彼の両肩を激しく揺らした。あまりの剣幕に、彼は目を丸くして僕を見つめた。
「……あなた、何を言っているんですか」
彼はわけがわからないというように顔を歪めた。
「僕が何をしたっていうんですか。八百屋でスイカを買って、スイカ割りをして、食べられなくなったから捨てた。これのどこが悪いことなんですか。そんな、人を殺したかのような態度で迫られても困ります。あれは、ただのスイカじゃないですか」
彼の言葉に、僕は瞬間固まった。なんだか奇妙な震えが来て、気づいたら僕は笑っていた。のけぞって、壊れたように爆笑していた。
「ああ、そうだよ! きみの言うとおり、あれはただのスイカだ! しゃくしゃくで甘くて世界一美味しい、たったひとつの、ただのスイカだよ!」
そして力の限りに彼の頬を殴りつけた。
後から聞いた話では、駆けつけた警察に助け起こされたとき、僕は、ボロボロの顔のまま、大声を上げて泣き叫んていたらしい。
*
部屋にこもって志織のことを考えた。
あれから何日経ったのか、よくわからなかった。昼か夜かすら知らなかった。ただ眠っては目覚め、目覚めては眠り夢を見た。夢の中でも彼女はスイカだった。いかにも実が詰まっていそうに丸々と鮮やかで、緑と黒のコントラストが綺麗で、とても美味しそうだった。
本当に、美味しそうだった。
遠くで電話が鳴っていた。誰からの着信なのか、見なくてもわかった。志織のいない世界で僕のことを心配してくれるのは、たった一人しか思いつかなかった。
目が覚めたら、僕は電話に出るのだろう。
大柄で上品な女の子に助けられ、未来への一歩を踏み出すのだろう。
きっとそれは、幸せなことに違いない。
わかってる。
わかってるよ。
だから、あともう少しだけ、志織と一緒に眠らせてくれないか。
そして僕は部屋の灯を消した。
メロンだったら良かったのかもしれない 水池亘 @mizuikewataru
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