第10話
(滝本さん、飯食ったかな)
「!」
なぜ、ここまで気にするか。
(きもちわりぃ)
そーいや、彼女といるときもひたすら彼女の体調と体験談を聞いて不安というか心配になったような気がする。
そうそう。
彼女のお祖母さんの話を聞いてから、余計に…。
(お祖母さん…)
はっと思い出したその時、ぼくは不意に働いていた現場の天井付近を見上げて固まった。
何も見えないが、いる。
そんな気がした。
『お孫さん、心配されてるんですね』
ナナミの言葉は、ぼくの妙な心配は。
多分当たっている。
感応してるんだ。
ぼくと彼女のお祖母さんは。
だから彼女、普通ならしないお祖母さんのことまで細かくぼくにいう気になったんだ。
彼女もその話をしてた時、普段誰にも言わない話を、何故僕にいってしまうか気にしてたのは恐らくそのため。
「言わされていた」のだろう。
かくというぼくも。こんな感情、普通ここまで気に成るほど真剣に他人の心配はしない。
そわそわして落ち着かないんだ。
まるで自分の感情じゃないみたいに。
それがここにきてハッキリ自分の感情ではないと気づいたのは、このあと。
虫の知らせというのに似てるけど、この場合のこれは恐らく。
孫への伝言、だろうか。
音にできない言葉を、感情を、ぼくの体を通して伝えていた。
そうでなければ…
-わかりました。
ぼくに出来る範囲でお手伝いします-
思念をそちらに向けた瞬間、急に体が楽になり、滝本さんに対する心配の感情はなくなった時点で、これはリアルな現実とぼくは認識した。ー
(うそみてえ)
今回はがちだ。
気のせいじゃない。
ぼくは聞こえない、見えない体質。
だけど、この瞬間、ぼくは彼女に伝えねばならぬミッションが受け渡されたのだとわかった。
側から見たら気のせいや気の迷い。
でも違う。
気のせいじゃないんだ。
このときだけは。
翌三日の後の内見のとき。
ぼくは合間に彼女に飯を食うこと、胆試しみたいのに誘われたら二度と行かないよう伝えた。
お祖母さんからの伝言だと言って。
信じてもらえないだろうけど、の前提。
そしたら、あれだけ心霊体験しまくってる彼女が、言ったんだ。
「私、基本的に信じないタイプなんですが、飛鷹さんの言うことは嘘におもえないんですよ。信じますよ」
「マジですか、よかった!」
ぼくと向こう側〜家探しは楽じゃない〜 旋利 @gcrow5
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ぼくと向こう側〜家探しは楽じゃない〜の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
シーラの話をしよう/旋利
★4 エッセイ・ノンフィクション 連載中 12話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます