第9話

内見したら一発でわかるのに、なんて考えながら時計を見たぼくは、目を瞬いた。


「滝本さん、もしかして、飯食ってないんじゃ」


15時近くという時間に今更気付いた、というか、妙にこのときそれが気になったのは何故か。


「ああ、私夜しか食べないんですよ」


「えええ、1日1食!?」


「はい、そうなんです」


にこっと笑ってパソコンをたたく彼女。平然としてるが、そのときぼくは妙に気になった。


飯を食ってないという事実が。


あ、そんだけだ。

だが他人の事情。

なのに気になった。

これが赤の他人で。

知らなすぎる相手だという理由ぬきなら。


どうでもいいおせっかいが発動してもおかしくないんだけど。


滝本嬢は今日あったばかりの人だ。


「飯、食ったほうがよくないですか?」


なぜかぼくは真剣に彼女を心配してた。


「ケッコー平気なんです。それに、食べてる最中もお客様から電話来たりしたら、出て察されるの気まずいですし」


「…でもそれじゃ」


「わたし、コーラ1本あれば平気なんです」


彼女は、頑固だ。

そう、知ってる、ついでに人の話を聞かない性格だ。

話を聞いて、何度も廃墟に肝試しに行って向こう側のひとに「殺す」って警告もらったり、バイクで事故に遭って奇跡的に助かったり、とにかく破天荒な人生を歩んでる人だとわかった。いや、わかる。


だけど。


なんでこんなにわかるんだろう。

彼女のこと。


このときのぼくはなんの違和感もなくそれらに頷いてたが。


「では、三日後の内見で」


彼女との話を済ませて、帰途につき。

翌日の仕事中、ぼくは気づく。

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