多くの方は「奥さん」に寄り添うコメントをされると思います。ですが、僕はこの「旦那さん」を讃えたい! まさに夫の鑑です。物語の冒頭では「駄目な夫」と思われるかもしれませんが、それは誤解です。ぜひ最後まで読んでみてください。きっと貴方も、旦那さんの「愛」に感銘を受けると思います。
何故か情緒不安定な主人公と、ぎこちない態度の旦那さん。終盤でその理由が明らかになって、なるほどと理解させられます。単純に言葉では言い表せない女性の複雑な心情を、魚と絡めて表現しているのが巧みです。純文学はこういうのでないとな、と思わせられる作品です。
魚と人間の姿を産卵という状態で重ねるのは斬新だなと思いました。これは短編だからこそできる物語ですね。ただ序盤の何気ない日常からの、後半で何が起こるかを概要でほとんど説明してしまっているのを少し勿体ないと感じたり......あと個人的に、ですが「スパゲッティがうどんに」という表現好きです。
自分ではどうしようもなかったと頭では分かっていても、自分を責めてしまう気持ちが痛いほど伝わってきました。丁寧な文章で、読みやすかったです。八つ当たりしたい気持ちをも包み込んでくれる愛情が、幸せな気持ちにしてくれました。
魚が自分の子を食べるなんてよくあることですけど……それを流産した女性の叫びにつなげたのは面白いアイデアだなと思いました。場面場面の情景描写、モノローグの心情描写ともに丁寧で読みやすくて、文章を書く人のお手本におすすめしたいくらいです。切ないお話ですけど、この2人ならすぐに幸せな日々がやってくる。そんな気が強くします。