Planning 8 質問
こうしてブライダル・クラブ最初の活動は、成功のうちに幕を下した。
「という展開で終わりだったら良かったんだけどなー!」
数日後。放課後の部室で攻輔は叫んだ。
「うるさいな、オージ。叫んでる暇があったら早く報告書を作れよ」
藤家が文句を言う。彼の向かいには数人の女子生徒がいた。皆、攻輔を見てキョトンとしている。「あれは気にしないで下さい」と藤家が手を振った。
初の「結婚式」の様子は口コミで広がっていき、部室に説明を聞きに来る生徒が再び増えている。その対応に追われながら、同時に攻輔は校長との約束を果たすため、報告書の作成に取り組んでいた。テーブルの上には各部から提出された領収書という名の請求書が散乱しており、これまでのスケジュールを記したファイルや、片付けの後で行った反省会のときに指摘された問題点などをまとめた書類なども積んである。
「あっ! 俺、今頃気づいたっ。写真とか全然撮ってないぞ! 式のとかは遠藤くんや大同さんの撮った奴があるけど、俺ら自身の活動記録って一枚も撮ってない! しまった!」
頭を抱えて悶え苦しんだ。必須というわけではないが、報告書を作るときの参考にできる上、添付しておけば説明しやすい。映像記録のことをすっかり忘れていた自分を攻輔は呪った。
「んっふふふふふ」
そこに小鳥遊の不気味な笑い声が聞こえてくる。とうとう頭のネジが一本飛んだか、と攻輔が彼女を見やると、デジタルカメラを手に小鳥遊が不敵な笑みを浮かべていた。
「若王子くん。先生は役立たずじゃないんですよー。こんなこともあろうかと、ちゃーんとみんなのことを写真に収めていたんですよー。これをご覧なさいっ」
そこには、朝早くからポスターを張る攻輔に始まり大勢の女子生徒相手に説明をする三人、戸隠・関谷ペアと打ち合わせる藤家やお茶を汲む竹井などが写されていた。攻輔はそれらを見て、ガタガタと震え出す。
「へへーっ! 小鳥遊大明神様!!」
床に平伏した。小鳥遊が鼻高々にココアのカップを掲げる。
「うむ。苦しゅうないですよー」
「……ちょっと静かにして下さい、二人とも」
藤家に叱られた。小鳥遊がシューンと小さくなる。ココアをちびりと飲んだが、まだ熱かったらしく舌を出して唸った。
「オージ先輩、会計は私がやりますよ」
テーブルに散乱している領収書を選り分けながら竹井が囁く。攻輔は「イエス!」と親指を立てた。全てはこの領収書を清算するためともいえる。小鳥遊から借りた一○万円も含め、全ての支払いをするには校長から何としてでも金を出してもらわなければならないのだ。さもなければ、攻輔が全ての支払いをさせられる。料理愛好会の食材費などを筆頭に、おそらく絢悧につつかれたのだろう、嘉鳴たち園芸部まで申し訳なさそうに領収書を持ってきた。写真部の現像代や演劇部のクリーニング代なども請求され、その額は二○万円近い。そんな金、攻輔は持ち合わせていなかった。
「早く報告書を書いて校長先生から金を毟り取らないとっ。俺が危ない!」
こういうことが得意なはずの藤家は、資料を渡してくれただけで後は自分でやれと言う。彼も忙しいのはわかるが、攻輔は泣きそうになりながら報告書と格闘した。
「読ませてもらったよ」
さらに数日後、攻輔は校長室にいた。昨日、小鳥遊に渡した報告書の件で校長に呼ばれたのである。しかも今回は小鳥遊抜きの二人きりだった。
「俺なりに一生懸命書きました。って、こういうことは言っても仕方ないですか?」
ソファチェアに居心地悪く座り、審判を待つ。校長は向かいでどっしり構えていた。二人の間にある低いテーブルの上には、攻輔が書いた活動報告書と竹井がまとめた会計報告書がある。
「……質問させてもらってもいいかな?」
校長は報告書を見下ろしながら言った。
「はい。何なりと」
背筋を伸ばす。校長は「うん」と頷き、攻輔の目を見た。
「どうして他の部の生徒に協力を頼んだのかね」
「と、いいますと?」
攻輔は頭をかく。来た、と思った。
「例えば、料理だ。今は便利な時代でね、ケータリングというサービスがある。冷凍食品もバカにできない味だ。出前でもいい。パーティーなどでは重宝される。ようするに、お金を出せばわざわざ自分たちで作らなくても料理を揃えることはできたはずだね。それをしないでどうして料理愛好会の生徒たちに協力を依頼したのか。彼女たちは、報告書にも書いてあるけれど、ほとんど料理らしい料理をしてこなかったそうじゃないか。そんな子たちに何故、君は協力を頼んだのかな?
お金の心配なら、しなくても良かったはずだ。まあ、手持ちがなかったという問題はあったかもしれない。だけど、それは小鳥遊先生が当座の資金としてお金を出してくれたように、何とかする手立てはあったよね?
料理だけではないよ。装花に関しても同じだ。ドレスや会場だって借りることはできる。そちらの方が設備が整っているから、ずっと良い演出ができたかもしれない。そして意外と安上がりだ。全て自分たちでやると、逆にお金がかかることもある」
校長は流れるように疑問点を語る。
「どうして生徒たちに頼んだのかね? 無駄な労力であり、無駄な出費になるとは考えなかったのかな?」
静かに、だが、いい加減な返答を許さない凄みをもって校長は問いかけてきた。攻輔は息を整える。考えてきたことを頭の中で整理した。相手の目を見る。
「それじゃ、面白くないからです」
そして切り出した。
「面白くない?」
校長の目つきが険しくなる。それだけの理由か? と目で尋ねてきた。
「そう、面白くないですよ。全然、面白くないっ。それが一番の理由です。でも、とりあえず、二番目の理由もあります」
攻輔はそう言って、いつも持ち歩いている契約書をポケットから取り出す。テーブルの上に広げて置いた。
「俺、校長先生に『一件につき、上限一○○万円まで』って言われたとき、正直、違和感があったんです。そのときは、何となく少ないなってくらいの感覚だったんですけど、後でモリー、藤家くんに聞いて違和感の正体に気づきました。最近だと、一回の結婚式と披露宴で四○○万円近くかかるそうじゃないですか。校長先生は上限一○○万円と仰いました。これって四分の一ですよね。確かに、俺たちには色々と必要ないものもあるからそのくらいで充分と判断されたのかもしれませんけど、俺はちょっと違う気がしたんです」
「ほう」
校長が相槌を打つ。
「だって、先程校長先生が仰った通りのやり方をして良いんなら、上限は一○○万円じゃなくて四○○万円と仰ったはずですよ。それなら、どこかの結婚式場に頼んで式と披露宴をやるのと同じレベルで動けます。もちろん、一○○万円ではできないってことじゃないですけど、明らかに少なかったんです。で、俺、少し調べてみたんです。生徒会で」
攻輔が「生徒会」と言った瞬間、校長の目が鋭く光った気がした。
「校長先生、仰ってましたよね。五年くらい前からうちの理事会に入ったって。これは俺の主観ですけど、うちの文化系の部活、五年くらい前までは活発だったんですよ。それがここ二、三年で一気にガタ落ちしてる。何があったんでしょうね? 三年前っていったら今の三年生も入学してないから、知りようがないですけど」
「それで?」
校長が続きを促す。攻輔は首を振った。
「俺は、ことの真相なんて知りませんし、興味もないです。それより、むしろこれが一○○万円の理由なんじゃないかって思ったんです。確かにプロのサービス頼んだ方が質が良くて安上がりなこともありますよ。だけど、それじゃ何にも変わらない。俺自身の成長も大してないし、周りへの影響もない。
これは俺の勝手な憶測ですけど、校長先生は俺を利用してうちの文化系の部活動をまた活気づかせようと考えたんじゃないんですか? 上限をわざと低くすることで、なるべくお金を使わない方法で活動しなければいけないと、俺が思うよう仕向けた。お金をなるべく使わないとなると、どうするか? プロには頼めない。自分たちでやるしかない。周りにはそれらしい活動をしている部がある」
攻輔は校長の顔をじっと見た。
「俺が協力を頼んで、その生徒たちがやる気を出してくれれば部の活性化に繋がる。そうならなくても現状を維持するだけで害はない。ようするに、校長先生にとって俺は、自分から飛び込んできた手駒だったわけですよ」
「ふむ」
校長が一つ唸る。
「どうしてそんなことを考えたんだね? 上限が一○○万円というのは、単に高校生の活動ならそのくらいで充分だと判断しただけだという解釈も成り立たないかな? 私が、支払う上限を低く設定したからという理由だけでそこまで考えるのは、飛躍が過ぎると思うのだが」
「そうですね。それだけなら俺も深くは考えなかったかもしれません。でも、これは今年赴任したばかりの校長先生にとっては不運だったんでしょうけど、俺と生徒会長って一年のときクラスが一緒で、仲は、あんまり良いとはいえないんですけど、頻繁に喋る仲なんですよ」
「……それがどうしたのかな?」
さすがに校長は顔色一つ変えなかった。攻輔は続ける。
「これは校長先生のせいじゃなくて、生徒会長のミスです。あいつ、俺が校長先生からこの契約書をもらって校長室から出てきたとき、職員室から出てきたんです。それは別にいいんですけど、そのとき俺にこう言ったんですよ。『ま、せいぜいヘマをやらかさないことね』って」
校長の表情には、まだ一切変化がない。
「俺もそのときは気にしてなかったんですけど、これって変なんですよ。確かに生徒会長にはブライダル・クラブの創部申請をしに行ったことがあります。それであいつが、校長室の前で喜ぶ俺を見て何か悟ったって考えることもできます。でも、ヘマをやらかさないってどういう意味ですか? 何であいつが俺の活動に対して曲がりなりにも心配しないといけないんですか? むしろ、あいつは俺の失敗を喜びますよ。それなのに、あのときはヘマをしないよう言った。何ででしょう?」
校長が小首を傾げる。攻輔は少し身を引いた。
「こういうのはどうですか? あの日、俺たちが校長室に入る前、あそこには校長先生の他にもう一人いた。そいつは校長先生から俺たちの活動の話を聞かされ、それから校長先生の意図も教えられます。そして、なるべく協力するよう頼まれたんです。で、俺が小鳥遊先生と一緒に校長室に来る。ドアをノックする。そこでもう一人の人物は職員室に移動するんです。校長室と職員室を直接繋いでいるドアを通ってね。そして、俺たちには見えない角度のところに身を潜めて俺と校長先生のやり取りを聞いた」
「…………」
「そいつは話を聞き終えて職員室から何食わぬ顔で廊下に出る。そして俺と顔を合わせた。何も知らずにはしゃいでいる俺を見て、そいつはちょっと意地悪言いたくなったんでしょうね。こう言うんです。『せいぜいヘマをやらかさないようにね』。その後に続く台詞はこんなところでしょう。『あんたは私たちの手駒なんだから』」
校長の表情はまったく変わらない。ただ、完全に動きを止めていた。じっと攻輔のことを見つめ続けている。
「どうですか? こんな憶測」
攻輔は校長に尋ねた。どんな反応を見せるのか、楽しみだ。
「……君は、そのことをどのくらいの段階で考えついたのだね。聞いていると、かなり早い時点で気づいていたようだけど」
「生徒会に調べものに行ったときには、そういう予想はありました。ただ、ほぼ確信したのは報告書を書いていたときです。報告書ってすごいですね。書きながらやってきたことを思い返して文章にしていくと、思わぬ発見があるんです。例えば、生徒会長が俺に軽音楽部の部室の鍵を渡してくれたことの理由もわかってしまいました。あいつが何だかんだ言いながらも俺たちを手伝ってくれた理由もそうです」
「それなら、どうして君は『手駒』であることをよしとしたのかね。いってみれば君は騙されて、利用されたんだよ。腹が立たなかったのかね?」
「別に、立ちませんよ」
攻輔はさらりと言ってのける。
「むしろチャンスだと思いました。理由はどうあれ、ブライダル・クラブの活動をやらせてもらえるし、生徒会の協力も非公式ながら得られる。最高ですよ! 駒の何がいけないんですか? こんなありがたいポジションはないですよ」
それは掛け値なしの本音だった。校長や絢悧が何を考えていようと自分の知ったことではない。ただ、与えられたものを最大限活用して自分のやりたいことをやる。それを与えてくれた存在に感謝こそすれ、腹を立てる道理はない。
「ふっ」
不意に、校長が吹き出した。
「フフフ、フハハハハハハハ! ハーッハッハッハッハッハ!!」
大笑いする。膝を叩いて笑い続けた。
「……校長?」
さすがに気味が悪くなって声をかける。校長は「ああ、すまない」と懸命に笑いを収め、それでもクックッと洩らし、必死に腹を押さえて息を整え、ようやく話ができるまでに戻った。それでも肩は小刻みに揺れ、顔は少々ニヤけたままだったが。
「あの? 大丈夫ですか?」
攻輔が尋ねると、校長はとても嬉しそうな顔になってこちらを見た。両手を差し出し、攻輔の前でゆっくり拍手をしてみせる。
「素晴らしいよ、若王子くん。予想以上だ。この報告書を読んだときも、君に投資して正解だったと思ったけれど、今は敬意をもって感謝の意を述べたい。本当によくやってくれた。ありがとう」
校長が頭を下げた。攻輔は戸惑い、何となく自分も頭を下げてみる。
「君の読み通りだよ。私は君の提出した申請書を読んで、君が見抜いた通りのことを考えついた。そして獅王葉くんに君の手助けをするよう頼んだんだ。ただね、君の読みと違う点が二つある」
校長は指を二本立ててみせた。
「まず一つ目は、獅王葉くんの反応だ。彼女は素直に私の言うことを聞いてくれはしなかったよ。協力するかどうかは自分で決めると言った。だから、これは信じてもらうしかないんだが、彼女は私に言われたから君の手助けをしたのではなくて、彼女がそうしたいと思ったから手伝ったのだよ。少なくとも彼女は君のことをただの『手駒』だなどとは考えていないよ」
「どうですかね?」
攻輔は校長の意見にあまり賛同できなかったが、校長に言われたことでも素直に従いはしないというのは、彼女らしいと思えた。
「二つ目は、私自身の君に対する評価だ。私も君のことをただの『手駒』だなんて思ってはいなかったよ。本当に、面白い生徒がいると思ったんだ。ワクワクしたんだよ。年甲斐もなくね。こういうバカな生徒がいてくれたことにね」
「バカって……。まあ、否定はできないですけど」
「失礼。この場合のバカというのは愚かという意味じゃない。君は愚かじゃないバカだ。そして、愚かじゃないバカこそが、革新をなしうるんだ。私見だけどね、ベンチャー企業を立ち上げ、運良く成功させてもらえた私の長年の経験がそう言わせている。君は、とても面白い。だから、投資してみたくなったんだ」
そこまで言うと、校長は立ち上がって彼の事務机へと歩いていった。引き出しから何かを取り出し、攻輔のところへ戻ってくる。封筒を二つ手にしていた。薄い方を手渡しながら言う。
「会計報告書に計上されている通りの額を支払おう。確認したまえ」
「本当ですかっ? やった!」
攻輔は急いで封筒を開く。中で福沢諭吉さんが踊っていた。自分も小躍りしたいくらいだ。
「それから……」
攻輔が金額を確認し終えると、校長は厚みのある封筒をテーブルに置いた。攻輔はそれを見下ろす。それから校長の顔を見やる。
「ここに一○○万円ある」
「うおっ」
思わず叫んでしまった。校長がニヤリとする。
「貸すだけだよ。必ず返してもらう。ただ、今回のことで痛感しただろう。資本金は必要だ。経費を後払いにしておくと、君の動きを不要に阻害してしまう結果を招きかねない。だから、これは先に貸し付けておく。無利子だから安心したまえ。返済は、君がブライダル・クラブを辞めるときだ。そのときに返してくれれば良い。活動に対する支払いは別だから、実質、このお金は減らないはずだ。意味はわかるね?」
「……はい。でも、どうして急にそんなこと言い出したのかがわかりません」
攻輔は正直に言った。校長がまた立ち上がる。再び机の方へ、いや、窓際に立ち、そこから外を眺めた。
「私は君のことが気に入ったんだよ。だから、教育者としては不適切かもしれないがね、君に個人的に投資してみることにした。なに、老人の戯れと思ってくれ」
「…………」
攻輔は黙って校長を見続ける。校長は窓の外を見ている。攻輔は席を立った。封筒を二つとも手にする。
「俺がブライダル・クラブを始めようと思った理由なんですけど」
「うん?」
校長が振り向いた。
「本当は、別の理由があるんです。その目的を果たすまで辞めるわけにはいかないんで、これは受け取らせてもらいます」
「……うん。それを聞いて安心したよ。実はね、私にも君に言っていない理由がある」
校長はまた窓の外を眺めながら言う。
「君は以前、この世界に愛が足りていないのではないかと言ったね。もっと愛の溢れる世界にしたいと。私も同感だよ。そうすれば、ひょっとすると――」
そこで不意に校長は口を閉ざした。目を閉じて僅かに俯く。それは、祈りを捧げる姿にも見えた。
「いきなさい。君の目的を果たすために」
「……はい。失礼します」
攻輔は一礼し、校長室を出ていった。
「おっ、出てきたな。長かったじゃないか。どうだったんだ?」
廊下には藤家、竹井、小鳥遊が待ち構えていた。藤家が一番に声をかける。
「何か不備がありましたかっ? 経費、落ちなかったら大変ですよっ」
竹井がそわそわしていた。いや、その隣でもっとそわそわしている人がいる。小鳥遊だ。
「そんなっ。それは困りますよーっ。先生、今月ピンチなんですよー。若王子くんに貸した一○万円が返ってこないと、次のお給料が入るまで、どうやって生きていけばっ」
「センセー、人間は水だけでも一ヶ月もつらしいですよ」
「はうっ」
小鳥遊がガクッと崩れ落ちる。竹井が「先生っ」と駆け寄った。藤家が攻輔の肩を掴む。
「つまらんこと言ってないで、さっさと出すものを出せ!」
「そんな、借金取りみたいなこと言うなよ、モリー。お茶目なジョークだよ」
攻輔は封筒を三人に見せた。それも二つ。資本金のことを説明した。
「本当かっ? それは助かるな。かなり動きやすくなるぞ」
「先生も助かりましたよー。これで生きていけますー」
「もーっ。オージ先輩、意地悪ですっ」
藤家が喜び、小鳥遊が立ち直り、竹井が怒る。よしよしと可愛い後輩の頭を撫でてやると、ポンと顔を赤くして大人しくなった。
「んじゃ、部室に戻りますか!」
歩き出した攻輔の背中に、藤家が話しかけた。
「そうだな。説明聞きたいって人をたくさん待たせてあるんだ。早く戻らないと」
「ふふーん。いいじゃないですか」
攻輔は三人を振り返る。
「愛に溢れる世界にするため、ささやかながらお手伝い」
スイッと腕を広げた。芝居がかった仕種で言う。
「ようこそ! ブライダル・クラブへ!!」
あなたのお越しを、心よりお待ちしております。
(終)
ブライダル・クラブにようこそ! 櫂末高彰 @maikka2016
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