第3話少女は新たな地球の創造者となる
お母さんに質問しても困らすだけだわ。私どうしたらイイんだろう。私に何が出来るんだろう。
「そうだ、スダジイがいるじゃない。そうよこんな時はスダジイがきっと教えてくれるわ」心の声に導かれるように私は町の外れにある森に向かったの。森に着くと不思議なことに森の中は戦争とは無縁の静けさに包まれていたの。この森には小人の精霊たちが住んでいる位だから当然なのね。私何回かみかけことがあるの小人の妖精。軽やかにステップを踏んでかわいかったな。そしてこの森の奥にどっしりと立っている一番大きいのがスダジイ。スダジイはもう何百年も森を見守っている老木。その姿は大きくて威厳があってでもやさしいの。スダジイのそばにいるだけでやさしい気持ちに包まれるのよ。
「スダジイこんにちは。今日は教えて欲しいことがあって来たの。今大変なことが起きていて私どうしていいのかわからないの」私は真剣に話したの。そうしたらスダジイはいつもの様に
「おや、今日は笑顔がないがどうしたんだい。いつものニコとは違うようだが、さあ何でも話してごらん。」とやさしく言ってくれた。だから私は心に感じたままをスダジイにぶつけたの。
「なぜ大人たちは苦しい思いや悲しい思いをしてまで戦争をするの。殺し合いまでして何が欲しいの。戦争でお父さんが死んじゃってお母さんとても悲しいはずなのに私を守るために頑張っているの。でも夜になると私のいないところで泣いているみたい。私お母さんが可哀想で見ていられないの。そうよ、戦争をしているあの人たちがいなくなればいいのよ。戦争が終わればきっとお母さんにも笑顔が戻ると思うの。どうすれば戦争は終わるの」私は真剣にたずねたの。そうしたらスダジイはやさしく答えてくれた。
「ニコもつらい目にあっているんだね。自分も大変なのにお母さんの心配をしてくれてありがとう。でももう大丈夫。どうやらお前には聞く準備が出来ているようだからこの世界の秘密を話そうと思うのだが大事なことが一つあるんだ。それは心を白紙にして私の話を聞くこと。心で判断しないでそのままを素直に受け入れて欲しいんだが出来るかい」
「はい、やってみます」私はスダジイの厳粛な問いに素直に答え話を真剣に待った。
「まず第一にお父さんのことだがニコにとって初めて聞くことだと思うがこの地球上のすべてのものは時が来ると皆この世界を離れ生まれる前にいたところに戻っていく。ニコのお父さんもそこに戻ったのさ。すべてのものはこの地球に夢を持って遊びに来て色々なものと出会い、色々な経験をして心を輝かせて故郷に帰る。死ぬことは本来の自分に戻ることなのさ。だから死ぬことは当たり前のことで悲しいことではないのだよ。もちろん愛したものとの別れはつらいだろう。しかし形あるものはすべて変わって行くものさ。出会ったら別れが来ることは解るだろ。今、ニコの前にあるものもいつかは消えてゆく。今あるものを愛しいつくしむことでいつか来る別れも感謝に変えて欲しいんだ。わしらもいつかは必ずそこに戻る。それがこの世界の仕組みなのさ。
そして戦争のことだが人間は自分のことが大切でしなくてもいいことをしてしまう。そう、何が何でも自分たちの利益を守ろうとするんだね。そうして戦争も始まるのさ。でもそれも仕方のないことなのさ。何故ならニコやお母さんが一生懸命生きているように誰もがその人なりに一生懸命生きているだけだからね。
お父さんを殺した兵士たちだってそうなのさ。自分たちのことが大切で自分でもよくわからずにしなくてもいいことをしてしまう。彼らの人生を生きてみればわかることだが、そのようにせざる得なかった理由は何かしらあるのさ。彼らにしても命令にそむけば殺されるということもあるんだ。実はすべての者たちは地球のシナリオに従ってそれぞれの役を演じているようなものなのさ。だから今は出来なくてもいつかは大人たちを許してあげて欲しいんだ。彼らは目の前のことにとらわれてしまって本当に大切なものに気付いていないだけなのさ。すべての人の心は豊かな心なんだが毎日の暮らしの中でその心を見失ってしまうんだね。そしてとても大事なことだからよく聞いてほしいんだが、憎んでいる相手を許すことは憎しみにとらわれたニコの心を解放して平安へと導いてくれる。戦争を無くしたいのなら戦争に反対するのではなくて、すべての魂の平安を願い、敵味方を考えないで一緒の未来を創っていくことじゃないのかな」
でも私はその話を聞いてもすべてを受け入れることが出来なかったの。だから愛するものを失った気持ちをスダジイにぶつけたの。
「でも兵士たちは逃げ惑う女の人や子供でさえ銃で撃ったのよ。家族や友人を殺されすべてを破壊していくあの人たちをどうしたら許せるの」
私の心の叫びを聞いたスダジイはまるで私を包み込むようにさらにこの世界の秘密を教えてくれた。
「そうだね、今のニコにはとてもつらいことかもしれないね。だがどうしても聞いてほしいのだが、実はニコの見ている世界はニコだけの専用の夢の世界なのさ。だって考えてごらん、目で見て耳で聞いてそれを頭で判断しているのは誰だい。ニコだろ。ニコが居るからニコの見ている世界は存在することが出来るのさ。そしてほかの人が同じものを見ても同じ世界にはならないのさ。だって見え方も聞こえ方もそして何より人やモノに対するとらえ方が違うからね。だから同じ世界にはなりようがないんだ。
そして一番大事なことなんだが、おまえの世界に現れるすべての人やモノや出来事はおまえが愛に目覚めてすべてを受け入れて愛することが出来るようになるために色々な姿を見せてお前に教えてくれているのだよ。そのためにこの世界はあるのさ。もちろんおまえにすべてを耐えろとは言わないよ。ただその者たちもニコが愛に目覚めるためのシナリオの役を演じるために現れたものだということを知っておいてほしいんだ」スダジイの無心の祈りの言葉が私の心のカギを開けてくれたみたい。私は思わず聞いたの
「じゃあ、もしかして私のこれまで生きてきた場面はすべて私の心が愛に目覚めるために起きていたってこと?わたしのこの世界を観る目が変わればせかいはかわるということ?」
「素直な心で感じてごらん。今のおまえならわかるはずだよ」
私はスダジイの言葉の向こうに感じられるすべてを包み込む暖かいものを感じていた。やがてわけもなく涙があふれてきたの。その涙は私の心の様々な思いを洗い流してくれたみたいだった。私は思い出したの。さまざまな時代、国を転生し私が探し求めていたものが何だったのか。私の願いは心にためた憎しみや悲しみを愛に変えることだって。
スダジイは教えてくれたの。すべては愛から生まれたもんだって。
「泣いているね、悲しいのかい」スダジイがやさしく聞いたの。その時私の心の中で何かが変わったみたいだった。
「ううん、うれしいの。私はあの兵士たちを殺したいほど憎んでしまう私の心が怖かった。だって殺してしまいたいなんて、それじゃああの人たちといっしょじゃない。でも誰かを攻めなければ悲しみで心がつぶされそうだったの。それなのにあの兵士たちでさえ憎しみを超えてすべてを愛してごらんと言うわたしへのメッセージだったなんて!私がこの憎しみや悲しみを超えられたら世界が変わって行くんでしょ。すべての人の心は豊かなことを信じること。そしてすべてに感謝すること。私の想いが大切なのよね。私の心で私の愛で世界を変えてみたい」
私はうれしくていとおしくてスダジイに頬ずりしたの。そしたらスダジイも嬉しそうに私の知りたいことをもっと話してくれたわ。
「この森にも晴れる日もあれば曇りの日もある。焼けるような夏の暑さもあれば凍えるような冬の寒さもある。わしらだって嵐が来て強い風が吹けば倒されてしまうかもしれない。でも嵐がきついからと言って嵐がなくなればいいとは思わない。何故って嵐はわしらを鍛えて強くもしてくれるし、何よりも嵐を必要とする者たちがこの世界にはいるからね。この世界は色々な体験をさせてくれる夢の世界さ。わしらはそれを体験しにこの地球に生まれ、与えられた役を楽しみ、苦しみ、悲しみ、喜び、心を鍛えそして輝かせやがて故郷に帰る。わしらは人間の様に難しいことは考えない。ただこの地球の営みを信じて今自分に出来ることをする。それだけさ。
嵐が静まる様に戦争もいつかは終わる。人の騒いだ心もいつかはしずまるのさ。おまえにとって見ているのはつらいだろうがお母さんが泣くのをそばで見守ってやっておくれ。人は泣くことで超えられるものもあるからね。大丈夫お母さんに笑顔は戻ってくるからニコは自分を信じて思いのままに生きてごらん。おまえの微笑みで照らせば世界は必ず明るくなる。この世界もおまえも大いなるものに守られていることを信じてごらん。必ずおまえを平安へと導いてくれるから。やがてすべての魂は平安に向かうことになるだろう。それが地球の未来のシナリオということらしい。だがそれにはまずニコが愛に目覚めたいと願うことから始まるんだ。愛とはこの世のすべてを信じられる心のことだよ」話を聞きながらわたしはスダジイの豊かな心に包まれていったの。
わたしは今こんな風に考えているは。戦争は嵐のようなもの。大人も不安で怖いから時々吹き荒れる風になるけどほんとうはやさしいそよ風。そして私たちの心を育んでくれる。だから大人たちも愛に目覚めることを信じてみたい。荒れ狂う嵐に立ち向かっても飛ばされるだけ。だから嵐が静まるのを見守っていればいい。
嵐の中でも私に出来ることは必ずあるはず。笑顔で嵐の向こうに広がる青空を信じて歩いていこう。だって空のかなたではいつもおひさまが見守ってくれているのだから。
すべてを愛せたらうれしいな
そうだよねスダジイ
ありがとう
少女の微笑みが世界を変える ゆかじい @yukajii
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