自分の能力「ガリア」を鑑定してもらうために、奥地から都市国家サラティスに出てきた少女カンナ。
強大な可能性を持つと認められ、竜と戦う「バスク」たちの最高峰である「カルマ」の一員となるが、とてもそうは見えず周囲に軽んじられる外見で、本人も自身の能力の使い方を理解していない。
経験も自信も覚悟もないうちに、なし崩し的に竜と戦わざるを得なくなり、それでもカルマとしての戦闘力を要求される。
本人の意志とはかけ離れたところで立場に振り回される、カンナの苦悩。
ガリアとは何か。人と竜はなぜ戦うのか。
カンナの黒剣に秘められた、真の力とは?
既にかなり話数のある物語ですが、まずは第1部だけ、と思って読んでみてください。
きっと最新話まで読みたくなります。
この小説を拝読させて頂き非常に興味深く感じるのは、物語の舞台となる都市国家と、そこに生きる人間たちの生活が作りこまれているところでした。
彼らがどのような場所に寝起きし、いかなるものを食べ、どんな生活習慣のもとに暮らし、そしてどのように死んでいくのか。
その辺りがきっちりと練りこまれているので、世界観に奥行きが生まれ、設定や物語の展開に説得力が感じられます。
フィクションの中のリアリズムとでも言うのでしょうか。
私は「ファンタジー」の面白さ、楽しさはこのような部分にこそ生まれてくるものと思います。
この点においてこの作品は、もっと評価されても良いのではないでしょうか。
また、本来は無敵と言えるほど強大な力を有しているはずの主人公が、戦いにそれを上手く活かすことが出来ず、なおかつ生死を共にするはずの仲間たちとも打ち解けることも出来ずに苦悩する姿は、いわゆるチート的な「俺様無双」物語のセオリーに沿いながらも、それへ一石を投じる形になっており、興味深いところです。
手軽に読めるライトなファンタジーも結構ですが、このように緻密な世界観を構築している「ハイ・ファンタジー」系の作品が、もっと多くの方の目に触れ、評価されてくれることを願います。