港 メリストス街って?

 やっと手に入れた村の情報に青年は思いっきり浮かれていた。あと少しで愛しの彼女マイスイートハニーに会えるのだ!と。

 だが、浮かれすぎて油断していた。

 クゥゥンと鳴き声が荷物袋からして青年ビックリして立ち止まる。もうオオカミはこりごりだと、慌てて荷物袋を置き捨て木の陰に隠れた。


もぞもぞ荷物袋から出てきたのは


「さっきの犬っころ!?」


 白い子犬だった。いつの間にか荷物袋に入り込んでいたらしい。出てくると青年の足元をチョロチョロうろつき始めた。

「おまえの住処はここだろ? はやく帰んな」

 と言いつけるが、子犬は言葉がわかるのか首を横に振って帰ろうとしない。むしろ青年の後を必死について行こうとするのだ。必死な子犬の様子をみて心を打たれた青年は

「まあ、そんなについて行きたいなら、来いよ!」

「ワンッ!」


 そしてしばらく森の中を歩いていると、遠くの木と木の間から小さな光が漏れているのに気づいた。もしやと思い、光を目指して駆けていった。

そこには


「!!!!」


 かつてあった村の面影はない。

 そこにあるのは海と大型船と電光ライトの数多の光、発展して栄えた港街だった。8年の間に何があったのか。

 青年は呆然になっていると背後から声がした。

「ここはメリストス街だ。7年ほど前に港を開いて急速に発展した街。今はもうフュスト村ではない。」

「お、おまえ」振り向くと先ほどの仮面野郎がいた。

「しかし懐かしい名だ。様々な土地から人が訪れる此処では、知っている者も今は少ないだろうな」

男は夜の港街を遠い目で見つめる。

「へー。ん? もしや、アンタもフュスト村出身か?」

「さあな」

「ほんとアンタ意地悪だな」

「お前に教える義理はない。だが」

「だが?」

「俺は仮にもこの街の警備隊だ。見回りついでに特別、新参者のお前に街案内でもしてやる」

 ふん、と男は腰に手を当てて澄まし顔で言う。

「は!? 余計なお世話だ、遠慮しとく」

「はやくこい」男は青年の耳を引っ張って街へ歩き出す。

「意味わかんねえし! 痛っ、痛てえ、離せッ」



「異国のとある秘境の場所でしか採れない宝石が入荷! ここでしか手に入らないし代物だ!」

「安い! 旨い! 腹いっぱい! 酒場、ドラゴン・エッグへおいでませ~!」

「おにいさーん達、寄ってかな~い? サービスしちゃうよ♡」


「夜なのに、ここは賑わってるな……」

 赤くなった耳を撫でながら夜の街を歩く。様々な人種が行きかっている。

「今では国有数の大港の一つだ、当然だろ。お前は森を無理やり抜けてここに来たが、実はあそこから少し行ったところに整備されてる公道があr」

「はやく教えてくれよ!!」

「キャンプしているのを邪魔してはいけないと思っての俺なりの配慮をだったんだが」

「んな訳あるか!」

8年前の村の面影は微塵も残ってなく、まるで別の街に来たようだった。そうだったら良かったのに、と青年は心底思う。海と自然に囲まれた静かで穏やかなあの村に帰りたい。それであわよくば……。


「それにしてもおまえ、臭うぞ」

「は!? 嗅ぐな」そんな臭うか、とぶつくさ言いながら自分の匂いを嗅いでみる。さっきのオオカミの返り血が少しついていたが、それほど臭ってないと思う。

もしや、と思い振り向くと、肩にかけていた荷物袋から白い子犬が顔を出している。

「ワンッ!」

「おい、犬っころ」

「連れてきたのか……」

「勝手についてきただけだ! それにコイツ、結構お利巧だぞ」

 男は犬っころを見つめる。ほう、と呟き前を向いた。

「ただの、"犬"なら問題はない。ちゃんと見張れよ」

興味なさそうに歩き出す。


「そんなみすぼらしい格好では浮浪者と間違えられるだろう。まず最初に風呂に行け」

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結婚を誓った幼馴染が久々に会ったら性別が変わっていた件について ( ˙-˙ ) @amako_ama

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