結婚式を迎える花嫁、伝統の結婚式、心に残る感情……和の空気に縁取られたそれらが見事に合わさり、過不足なく物語を表現し、結末を導いていると思います。こういう和風作品は大好物です。 感情を詳しく重ねて書いていないのに、主人公が抱いた感情のどろりとした深さがそれとなく伝わって、確かにこの人鬼の花嫁だわ、と思いました。嫁ぎ先がわからないままなのもいい。そんな結末の想像の余地があることも、この作品の魅力じゃないでしょうか。
地元に伝わる昔ながらの風習のために、記念すべき結婚式で「白無垢」ならぬ「赤無垢」を着なければならないことが不満な主人公。だが、彼女が結婚について抱える不満は、それだけではなかった……。非常に端整な筆致で綴られる人間の業を描写したお話です。ラストの余韻に、戦慄しながら魅了されてしまいました。
その地方では、花嫁は厄除けとして、赤無垢を身につける。鬼に襲われないように――。 鬼よりも、恐ろしいのは人。端正な文章で紡がれる、良質なホラー。