第6話あとがきにかえて

 この本を手にとっていただき、また最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

 『ファイナルラップ!』は、ジャパンカップの復活開催など、今こっそりと大人の間で流行になりかけている、ミニ四駆を扱った創作オリジナル作品です。

 子どもが主役だった過去2回のブームと異なり、現在は大人がレースシーンの主役なのを考え「登場人物がとことん大人メイン」となっています。発行年次からすれば、同人ミニ四駆ストーリー作品では初の試みとなります。(1周目の発行は2012年の夏コミ)

 大人が主役を担うことは、長らくタブーとされてきたことであり、2014年から公式レースに新設されたファミリークラスにも見られるように、おそらく今でもタミヤ側が貫こうとしている理想はそのはずです。

 しかし、「子どもが主役という理想」と「大人が主役という現実」とのせめぎ合いに、現代のミニ四駆を取り巻く諸問題の一端があるならば、完全に大人を主役にした、今までにないミニ四駆作品を書いて、現実を理想に昇華させてみよう――その思いから『ファイナルラップ!』の執筆を開始したのは、2010年のこと。まさかジャパンカップが復活開催される未来など、私も含めた当時のレーサーは、想像さえしていなかった時代でした。

 様々な人々の努力もあり、また時勢も手伝い、第3次ブームと呼ばれる活況を呈したのは喜ばしいことです。しかし、光ある所には影あり。公式レースの様子はジャパンカップ2012以降、たったの1年でガラリと一変し、笑顔の消えた殺伐とした雰囲気の場へと、いつの間にか変質してしまったようにも思います。

 会場はお祭りのように明るく輝き、レースでは百花繚乱の個性が華やかに火花を散らし、見ている人をもワクワク魅了する――

 そんな、作者が公式レースに参戦し始めた時代に感じた「公式レースってホントに面白い!」と憧れるような魅力に溢れる、百花繚乱の大人レーサー達がかつて育て上げた、公式レースの空気感。今は失われつつある、ミニ四駆と公式レースの魅力の描かれた世界を、微力ながらこの作品を通じて、ほんの少しでも再現できればと思い、いままでにはないミニ四駆作品を目指し、地道に執筆して参りました。構想および執筆期間の長い作品でありながら、未熟な作品ではありますが、曲がりなりにも完結まで書き切ることができました。読んでいただいて大変嬉しく思います。

 ミニ四駆への取り組み方は、人によって様々な考え方があります。作品中で舞浜まいはま朱音あかねの母親、樫海かしうみが語った公式レース観(カクヨム版註:樫海かしうみは3周目に登場)は、あくまでその一例に過ぎません。真剣勝負一筋で公式レースに来られる方々が大多数を占めるようになった昨今、異論も多くあることと思いますが、公式レースで全国各地を転戦している選手の多くが、真剣に勝負へ取り組むと同時に、レースも含めて、いかに趣味仲間と楽しい時間を過ごすかを心がけているのも、また確かだと思っています。

 最近はじめられた1人でも多くのレーサーの方々には、心から楽しくミニ四駆で遊んでもらいたいですし、また次の世代を担うべきジュニアレーサーには、楽しい公式レースとミニ四駆の世界をのこしてあげたいと、ひとりの大人レーサーとして思う次第です。この作品が微力ながらその一筋の光となることを、切に願うばかりです。


 最後になりましたが、今回イラストを担当していただいた、がっかりうどんぬ氏には深くお礼申し上げます。またチーム遠征大好きのベテランレーサーの方々には、過去の様々な公式レースのエピソードを披露いただき、本作品を書くに当たって大変参考とさせていただきました。とりわけ日高かひろ氏(犬神研究所)には、大変な応援とご協力をいただきました。この場にて改めてお礼申し上げます。


                        2014年8月 悠川 白水


※この物語はフィクションです。実在の人物や出来事等とは関係がありません。

※ミニ四駆は株式会社タミヤの登録商標です。

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ファイナルラップ!(1周目/2周目) 悠川 白水 @haruhaku

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