けんかのあとはなかなおり?


結局のところ、その日は缶蹴りで遊んだことで満足して、全員がログアウトしました。公園の占拠とははたして……。

そんでもって翌日にログインをして、いつもの様にみづきとぎゅぎゅーして魚に餌をやってから外へ出ると。


「まってましたわ!」


ばばーん、とありすたち御一行が現れた。

こっちとしては特に用もないのでうえぇ、って感じなのだが。今はるなもいないし。

さてどうやって逃げようかと考えて1歩後ずさると、取り巻きの1人であるピンクツインテールが近づいてきた。


「おねがいします!ありすちゃんのはなしをきいてあげてくださいぃ!」


その場に膝間付いて懇願するピンクツインテール。ジャパニーズ土下座であった。……一連の流れに隙がなく、中の人は営業職なのかと考えてしまった自分が恨めしい。


「ちょっと!なにやってますの!」


流石のありすもこれには予想外だったらしい。あわあわと大慌てだ。

もちろんこっちだって大慌てなのだけど。周りの視線が痛すぎてヤバい。


「……はやくかおあげて」

「あ、はい」


みづきがそう言うと、ピンクツインテールはあっさりと立ち上がった。本当になんなんだ。


「あなた!いったいどういうつもりですの!」

「どういうつもりもなにも、こうでもしないとひなちゃんとみづきちゃんにげちゃいますよ?」


そうされても逃げるつもりなのだけれど。

というか気になっていることが一つ。


「ぴんくさん、はなしかたきのうとちがうよね?」

「ぴんくさんて……わたしはろぜったといいます。あと、あのあかいかみがれおで、もうひとりがちゅりっしゅです」


漸く取り巻き3人の名前がわかった。けれど、覚えていられるかなぁ。


「ふーん……で、はなしかたは?」

「あのばではあーいうしゃべりかたのほうがいいかと」


ピンクさんもとい、ロゼッタさんは飛んだ演技派だったようだ。

そんな演技派なロゼッタさんや他の二人がどうしてこんなお転婆アリスについていってたのかというと、3人ともVRに限らずMMO自体を、興味はあったけれど今までやったことがなく、ひょんなことから『ようじょ・はーと・おんらいん』のβテスターに当たり、右も左も分からないまま一人で遊んでいたところをアリスに話しかけてもらい、一緒に遊ぶようになったらしい。

アリス、めっちゃええ子やん……。


「ありすちゃんはいいこなんですよ。あのえぷろんどれすも、せっせと『|おてつだい(クエスト)』をこなしてようやくかえたばっかりのもので……」

「きゃああああ!よけいなことはいわなくていいのですわ!」


若干キャラ崩壊を起こしつつあるアリス。

きっとツンデレお嬢様とか悪役令嬢みたいなキャラを演じたかったんだろうけれど、そんな彼女がお皿拭きやお使いに行っている姿を想像すると、それだけでもうキャラ崩壊だ。

アリスを見てみれば、恥ずかしさのあまり顔が真っ赤になっている。


「……あーちゃ、かわいいね」

「うん、かわいいね」

「きゃあああぁぁぁ!」


かわいいを連呼して口撃してみる。必殺のかわいい口撃だ。

アリスは悶え始めた。


「やめてあげてください!そりゃあありすさんは、いつもいっしょうけんめいで、『|おてつだい(クエスト)』ももんくひとついわずにやって、わたしたちのめんどうもみてくれるいいひとなんですけど!あんまりかわいいかわいいっていうのは」

「いやいや、ろぜったがいちばんいってるよ」


アリスは悶絶して死にそうだ。アリスのライフはもう0よ!

残りの取り巻きはあちゃーという顔をしている。


「……あーちゃはかわいいね」

「みづき、もうやめたげて」


これ以上は本当にアリスがダメになってしまいそうだ。


「とりあえず、きょうはもうこれでしつれいしますね。またきかいがあればあそんでくださいな」

「うん、またあそぼうね」


そう言って、アリス御一行はどこかへといなくなっていった。


「……さわがしかった」

「そうだね」


騒がしかった後には、シンとした寂しさが残っている。

まるで、門限が近づいてもう遊ぶのが終わりだと言われて、でもまだ遊びたい気持ちが残っているような、そんな寂しさだ。

そんな寂しさを感じさせてもらえるのも、幼女体験ならではなのかもしれない。

まぁ、その後すぐるなと合流して普通に遊んだんですけどね!

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